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ダイバーシティとは?|ダイバーシティの評価方法は?|研究まとめノート

参考文献:
株式会社NTTデータ経営研究所、『諸外国におけるダイバーシティの視点からの行政評価の取組に関する調査研究報告書』、2018

ダイバーシティとは、どのように定義されるのだろうか?

また、ダイバーシティとはどのように評価されるのか?

先に挙げた研究報告書(以下、本報告書)をもとに整理した。本報告書では、スウェーデン、オランダ、イギリスを対象とした調査研究がまとめられていた。

この3つの国が対象に選ばれたのは、それぞれ次の理由からだ。

スウェーデンは、ダイバーシティの先進国であり、性別、年齢、人種・民族、障害の有無など外見から判断できる「表層」の属性から、所属組織、仕事歴、教育歴、支店、考え方、価値観、スキルなど、「深層」の属性まで考慮にいれた取組を実施している。
オランダは、米ギャラップ社が2014年に行った「ゲイ・レズビアンにとって過ごしやすい国調査」で第1位になる等、特にLGBTに関して寛容であることが知られている。また、オランダ社会研究所のような研究機関を活用することで、ダイバーシティを始めとする様々な政策の調査分析によって、社会において隠された問題を明らかにする取組が進められている。
イギリスは、ダイバーシティに関しては欧州の中では後塵を拝しているとも言われるが、政策等の立案から執行までのプロセスの中において平等影響評価(Equality Impact Assessment:FIA)を実施するなど、ダイバーシティに関する評価の枠組みが参考となる。

それでは、報告書の中から、次の問いについて整理していきたい。

■ダイバーシティの定義

ダイバーシティは、どのように定義付けられているのだろうか?

スウェーデンでは、政府が定義付けたものはなかった。

オランダにおいても同様であった。ただし、オランダでは、企業・組織における文化的多様性との文脈で次のように用いられている。

多様性とは、通常、人々の互いに異なる全ての側面を意味する。性別・民族・年齢等の目に見える特徴に加え、性格・特性・仕事の仕方など目に見えない特徴も含まれる。文化的多様性は、文化的背景と人々の多様性に関係する。

本報告書では、イギリスにおけるダイバーシティの定義については触れられていなかった。

参照の中ではOECD諸国に見られるダイバーシティの定義について触れられ、次の3つの主要なグループに分類されていた

◯機会均等としてのダイバーシティ
 人事労務管理プロセス等の中立性を確保する観点から、性別、人種、宗教または信念、性的指向、政治的見解、障害、身体的外見等による差別を防止すること

◯リソースとしてのダイバーシティ
 政府の能力及び公共サービス雇用者の満足度を向上させるために、人種、文化的背景、性的指向、障害又は年齢に限らず、人生経験、能力、社会的・経済的・文化的背景の多様性が公共サービスのパフォーマンスにもたらす利益を理解し、評価し、実現することを目指すこと

◯包括性としてのダイバーシティ
 あらゆる人々が持つ能力を活用できる構造・制度への変化を確実にするために、戦略的、長期的かつ協同的な方法で取り組むこと

OECDではこのように定義されているそうだが、はっきりいって、パッと見ではよくわからなかった。

噛み砕いて自分なりに解釈すると、

◯機会均等としてのダイバーシティとは、「性別や人種、障害の有無などいろんな人がいるけど、仕事なんかをする上では差別をしないようにしましょう」ということ

◯リソースとしてのダイバーシティとは、「人種、障害の有無などいろんな人がいた方が公共サービスもより良くなるはずだから、それを理解して、実現することを目指しましょう」ということ

◯包括性としてのダイバーシティとは、「いろんな人の持っている力を活用できる世の中にするため、社会の構造や制度を確実に変えていく。そのために計画的にみんなで協力していきましょう」ということ

ともとれる。

自分なりに咀嚼したが、リソースとしてのダイバーシティの解釈は少々無理があるようにも感じる。

本報告書の結論では、次のようにまとめられていた。

伝統的には、ダイバーシティとは、「ジェンダー、人種・民族、年齢における違いのことを指す」と定義されてきたが、近年、特に欧州諸国においては、ダイバーシティの対象の範囲の拡大とともに、ダイバーシティのレベルの深化(差別を排除する義務だけでなく、それぞれの一般的な義務を考慮すること)が進んでいる。

ここでいう、「ダイバーシティの対象の範囲の拡大」には、宗教・信条、障害、年齢、性的指向などが含まれ、それらが法整備などのかたちで拡大している。

「ダイバーシティのレベルの深化」とは、法整備による差別の禁止から、多様な人材の能力が社会競争の優位やイノベーションにつながると考えられるため、多様な人材を活用しようという動きに変わってきているということだ。

これらのことから、ダイバーシティの対象は、「表層」的な要素と「深層」的な要素を含めた多種多様な人である。そして、ダイバーシティのレベルは差別を禁止するという法的な対応から、多様性を尊重するという人々の心の変化を求める段階に深化しているといえる。

すなわち、一言にダイバーシティといっても、その概念は、現在進行形で深化しているともいえるだろう。

■ダイバーシティの評価方法

ダイバーシティは、どのように評価されるのだろうか?先に触れた、ダイバーシティのレベルでいうと、法的な整備から深化した、人々の心の面をどのように評価するのかを知りたい。

本報告書でまとめられた評価ツールは、期待していたものとは異なるもののみであった。

スウェーデンでは、JamKas(正式にはaの上に・・が付く)というジェンダー政策の分析のためのガイドラインがあった。

オランダではRPEと呼ばれる、施策の評価ツールがあった。

イギリスでは、平等影響評価(EIA)と呼ばれる評価方法があった。

どれも、ある集団において多様な人々を受け入れる体制を整備しているかどうかを評価するものばかりのように思われた。

この点についても、他の文献にあたりながらより深めていきたい。



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