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知られざる海の世界(14.C その4)

「我々の求める未来」にしろ、国連海洋法条約にしろ、言いたいことは「海はとても大事です。だから大切にしましょう」ということです。それはラムサール条約にしろ京都議定書にしろ令和改正漁業法にしろ海洋保護区制度にしろドーハ開発アジェンダにしろ「海洋科学の10年」にしろ…結局、同じことをいっているのです。。「海を大切にする」なんて誰もが思っていることだし、そうしなくちゃいけないことも知っています。当たり前すぎる話で常識の範囲というレベルです。でもそんな常識をわざわざルールにしなくちゃいけない理由があるのです。答えは簡単です。海を大事に思っていない人がいるということです。

ちょっと魚を多めにとって自分だけ儲けたいとか、自分だけならごみを捨ててもわからないとか、自分が悪いことをしていると知っていながら悪事を働く人がいるのです。確かに悪いと知って悪事を働くことは悪いことです。しかもわざと悪いことをしている人はごくわずかなのです。ほとんどの漁師は真面目な漁師です。マグロの漁獲割り当てが年間300㎏と言われれば守っています。300㎏のマグロと言えば大物を釣ってしまったら終わりです。つまり1本のマグロで1年間を過ごさなくてはいけないのです。でも漁獲割り当てなんて関係ないといって1回の漁で何十トン上げたと自慢する人が現れてしまったら元もこうもなくなってしまいます。そうして漁獲に関するルールが厳しくなります。ほとんどのダイバーは真面目なダイバーです。普通に海へ潜って、海という異世界を見て楽しんでいます。でもアワビやウニの密漁者は長時間水中にもぐるため、ウェットスーツを着込みます。同じようにダイバーもウェットスーツを着込んでいます。遠くから見ると誰が密漁者で誰がスキューバダイビングかわからないのです。そうしてウェットスーツをきている人へのルールが厳しくなります。趣味で釣りをする人はローカルルールを守って釣りをしています。でも用を足したいけど周りにも人がいるしと近くにあった漁船に無断で乗り込みしれっと用を足す人がいます。翌日漁に出かけようとした漁師が船に乗り込むと異臭を放つ物体を見つけるのです。そうして漁港へ入る人へのルールが厳しくなります。そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、実際にあったことです。そんなわずかながらの悪党がいることでどんどんルールが増えていき、厳しくなっているのが現状です。そうしてルールが厳しくなれば、そのルールをかいくぐった巧妙な悪事が生まれてしまい、さらにルールが厳しくなっていきます。その結果、ガチガチのルールに縛られた海では、その他大勢の善良な海の利用者が減ってしまい、豊かな海どころではなく、悪事がはびこる世界になってしまうのです。

ルールは複雑になればなるほど、専門的になってその業界にいないとわからないほど難しくなっていくものです。海ではまったく違う産業が海という同じフィールドで活動しています。専門性が高くなればどんな人でも理解できるように説明がまどろっこしくなってしまい、さらに複雑になっていきます。海に関するシンポジウムやフォーラムがたくさん行われていていますが、結局専門的な人ばかりが集まってしまい、違う分野の人が来てもちんぷんかんぷんということになってしまいます。

海の入りにくさは海に生きる人ばかりではありません。陸に生きる人にもより高い壁になります。陸と海は確実につながっています。海上輸送を効率的にするため港を作ることで干潟をなしくているかもしれないし、二酸化炭素を出すことでサンゴを殺しているのかもしれないのです。陸で捨てられたプラスチックが風で飛ばされ川にたどり着き、海にたどり着いて魚を殺しているし、生活排水で油を捨ててしまうと海に流れついて赤潮をおこして、魚を無駄に殺してもいるのも事実です。最終的に負担を背負っているのは海なのです。でもそんなことになっているなんて思いもよりません。というのも海が複雑で難しい世界だからです。結局いくらルールを作っても海は孤立したよくわからない別世界になってしまっているのです。

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