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二酸化炭素排出の守り方(SDGs14.3その5~海の豊かさの守り方3-1)

二酸化炭素を減らすという脱炭素の流れは今後どんどん進んでいきます。しかも地球が一致団結して取り組んでいくべき大きな問題として取り上げられてきています。では具体的にどうやって二酸化炭素を減らすのか考えて見ることにします。

1つは、今ある二酸化炭素を消費するという方向性です。例えば、藻場を増やすことで二酸化炭素を吸収したり(※1)、二酸化炭素を固体化して保管したりと、二酸化炭素を利用するというアイデアは最近になってどんどん出てくるようになりました。
そしてもう1つの方向性が、二酸化炭素自体を出さないという方向性です。国際輸送で使われている船が排出する二酸化炭素は年間で8億トンと言われています。そのほとんどがエンジンを動かすときに出てくる排気ガスです。これを無くそうというわけです。

船は重油と呼ばれる化石燃料を使ってエンジンを回します。この重油に空気(酸素)を混ぜて、火をつけて爆発させます。その爆発の威力を使ってプロペラを回すといった仕組みです。理科っぽく言うと、重油という化学エネルギーを爆発という熱エネルギーに変えて、さらにその熱エネルギーを船を動かす運動エネルギーに変えて船を動かしているといったところです。

でも必要なのは化石燃料ではなく、船についているプロペラが回すためのなんかしらの動力源です。つまり電力という動力源でもいいわけです。そこで注目されてきたのが水素です。現在、船の電力は各船ごとに備え付けている発電機から作られた電気を使っています。でも、その発電機も化石燃料を使っています。回すものが船を動かすためのプロペラなのか、電気を生み出すタービンなのかの違いだけで構造は同じです。そしてなぜ水素かというと、水素を燃やして動力を得るためではありません。水素はもともと電気を生む特性を持っているからなんです。水素は水素イオンに代わりやすい物質です。この水素イオンに変わろうとするとき、水素は電気自体を生み出します。この水素由来の電気を使って電力を取ろうというのが水素燃料電池というわけです。つまり水素があれば電気が生み出せるんですね。この水素の力を借りて動力を得る船のことを水素燃料船と呼んでいます。

でも、その水素を扱うにはなかなか手がかかります。例えば水素を運ぶために液体にしようとするならば-253℃にまで冷やさなくてはいけないし、できるだけコンパクトに運ぼうと思えばめちゃめちゃ圧力をかけて運ばないといけなくなります。ちなみに今の水素自動車とかは空気の約700倍の圧力で保管しています。この圧力は水深7000mの深海と同じ圧力です。一筋縄ではいきません。でも、この水素を運びやすくできる方法が発見されました。それがアンモニアです。アンモニアは肥料の材料としたり、ほかの薬品として使っていたりとすでに持ち運びできるように工夫されています。そこで保管したり運んだりするときはアンモニアにしておいて、いざ電気として使いたいときは水素だけを取り出して使おうという仕組みです。このアンモニアを使って動く船のことをアンモニア燃料船と呼んでいます。(※2)とはいえ、アンモニアを燃料にするには船自体にアンモニアから水素を取り出す設備が必要だとか、副産物で生まれる窒素はどうするんだとか、そもそもアンモニア自体が毒だったりとまだまだ課題があって、未完成です。コスト面でも設置場所的にも国際航海する大きめの船でしか実現できないのが現状です。

その点、いつでもどこでも手軽に水素が手に入るといった環境が整えさえすれば、水素は日本のメインの電気の供給減となっていくでしょう。また、日本の政府もこの水素燃料を当たり前のように使うことができるような社会を目指して様々な支援をしてくるようになってきました。とにもかくにも水素が、海の脱炭素には一役買ってくれることは間違いなさそうです。

※1、藻場の守り方(SDGs14.2その5~海の豊かさの守り方2-2)
https://note.com/theruleofoceans/n/nb0fac832fd42
※2、アンモニアから水素を取り出すための汎用技術がまだ成熟していないため、現在では通常の化石燃料にアンモニアを混ぜてつかうハイブリッド型のアンモニア燃料船が主流。

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