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花子とアン

2024年NHK大河ドラマ『光る君へ』が始まりました。紫式部(970年? - 1019年?)を演じるのは吉高由里子です。吉高由里子は十年前の2014年、連続テレビ小説で『赤毛のアン(原題:Anne of Green Gables 緑屋根のアン)』シリーズの翻訳家・村岡花子(1893年 - 1968年)を演じました。

『光る君へ』放送記念として村岡花子を主人公にした『花子とアン』を紹介・解説、感想します。

赤毛のアン 初版本表紙

「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子の明治・大正・昭和にわたる、波乱万丈の半生記です。 山梨の貧しい家に生まれ、東京の女学校で英語を学び、故郷での教師生活をへて翻訳家の道へ進んだヒロイン・花子は、震災や戦争を乗りこえ、子どもたちに夢と希望を送り届けます。
【原案】 村岡恵理 『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』
【脚本】 中園ミホ
【音楽】 梶浦由記
【主題歌】 絢香 『にじいろ』
【語り】 美輪明宏
【初回放送】2014年3月31日から9月27日 総合
出演者・キャストほか
村岡花子(吉高由里子)
安東吉平(伊原剛志)
安東ふじ(室井滋)
安東周造(石橋蓮司)
安東吉太郎(賀来賢人)
安東かよ(黒木華)
益田もも(土屋太鳳)
村岡英治(鈴木亮平)
宮本蓮子(仲間由紀恵)

NHK 連続テレビ小説『花子とアン』

解説

〈〉はモデルとなった人物、組織を表します

『花子とアン』は村岡花子の孫・村岡恵理の『アンのゆりかご』を原案に『ドクターX~外科医・大門未知子~』の中園ミホが脚本を手掛け、前にも触れましたが吉高由里子が村岡花子を演じました。

2014年4月から9月にかけて放送され、山梨の農村で生まれ育った安東はなが行商人のさ父・吉平伊原剛志)によって文才を見出されキリスト教系の修和女学院東洋英和女学院〉の給付生として入学し英語に出会います。

良家の子女が在学する修和女学院に戸惑いながらも学び成長し、翻訳家・児童文学作家として活躍します。

作品には村岡花子の生涯に加え、『赤毛のアン』のエピソードやモチーフが散りばめられ、たとえば花子(安東はな)が「花子と呼んでくりょ」と言うのはアン・シャーリーが「自分の名前はAnnではなくAnneと呼んでほしい」とマリラ・カスバート(アンを誤って引き取り育てた未婚中年女性)に頼む場面から採られており、アンがギルバートの頭を石版で叩く場面やアンが間違ってワインを飲む場面が所々に登場し、花子が母・ふじ室井滋)の為に進学を断念し地元山梨の教師になる話は村岡花子が山梨英和女学院(現存)の英語教師に赴任した史実とマリラの為に大学進学を諦めた話に由来し、『赤毛のアン』のオマージュになっています。

登場人物の名前にも『赤毛のアン』の登場人物が含まれており、花子の祖父・安東周造石橋蓮司)はマリラの兄・マシュー(ついでに言いますがマシューもマリラと同じ未婚)、幼馴染の木場朝市窪田正孝)の母・リン松本明子)はお喋り好きのリンド夫人に由来しています。因みに安東はなは「東のアン」という意味が含まれています。と言うより日本はカナダより西の方ですが…。

地名も同様で花子が通った「阿母(あぼ)尋常小学校」の学校名はアンが住むプリンスエドワード島の架空地名アボンリー(アヴォンリー Avonlea)に由来します。アボンリーのモデルはプリンスエドワード島の村・キャベンディッシュ(Cabendish)です。

花子の兄弟姉妹も登場しますが実際、村岡花子の弟妹は悲惨な人生を歩み、作品にも投影されており花子の長妹・安東かよ黒木華)は奉公に出されるもの酷い待遇に耐えかね脱走、修和女学院に保護された後、銀座のカフェーで勤めることになります。

次妹・安東もも土屋太鳳)は結婚で北海道に行くもの婚家で酷い扱いを受け花子の元に身を寄せ、画家と再婚し娘は姉の養子・村岡美里〈村岡みどり〉になります。

花子の兄・安東吉太郎賀来賢人)は貧しい農民生活への嫌悪と父・吉平に反発し陸軍に志願、軍人の道を進みます。

作品に彩りと艷やかさを与えたのが仲間由紀恵演じる葉山蓮子(→嘉納蓮子宮本蓮子)です。葉山蓮子は言うまでもなく歌人・柳原白蓮(1885年 - 1969年)をモデルにしています。

葉山蓮子と花子の出会いは良くなく、蓮子が密かに持参したぶどう酒を「滋養強壮の飲み物」として花子が飲み泥酔し学校内で騒動を起こす場面は先程触れたアンが誤ってぶどう酒を飲んで酔ってしまう場面から採られました。

『ロミオとジュリエット』で幽閉同然に編入学をさせた実家、兄・葉山晶貴〈柳原前光〉(飯田基祐)に恨みを持ちながらジュリエットを演じ花子と共に兄を辱め電車に乗り込む場面は「腹心の友」になるきっかけになります。

実家を助けるため2度の政略結婚を強いられ花子と1度破綻しますが作家活動を通して再会し東京で3人目の夫となる宮本龍一〈宮崎龍介〉(演:中村歩)に出会い、「白蓮事件」の元になる駆け落ちをします。

視聴者は花子よりも蓮子の物語に興味を引き、特に蓮子2人目の夫・嘉納伝助〈伊藤伝右衛門〉の存在が視聴者の心を掴み、「蓮子とでん」という言葉が生み出しました。

実際、中園ミホがモデルとなった伊藤伝右衛門を調べるうち伊藤に惹かれ作品に投影され、嘉納伝助を演じた吉田鋼太郎の功績も大きいです(仲間由紀恵と吉田鋼太郎は後にCMで再共演を果たしました)。ドラマ中、花子は嘉納伝助に会う場面がありますが実際、伊藤伝右衛門と村岡花子は1度も面識はありません。

それに比べ宮本龍一がひねくれた人物として描かれてしまい、白蓮の娘・宮崎蕗苳(歌人 1925年 - 2022年ドラマでは宮本富士子 演:芳根京子)は放送当時「父(宮崎龍介)はそんな人物ではありません」と残念そうに述べていました ※ 出典元教えてください! 。

花子の夫・村岡英治〈村岡敬三 1887年 - 1963年 ※正確な人名表記の「敬」は 亻+敬 。一部、機具によって表示されない場合があります〉は鈴木亮平が演じ、出版社でアルバイトに来た花子と出逢い、一時結婚し花子との関係に悩むもの妻の死により彼女と再婚(花子は初婚)し1児に恵まれるもの死別し、義妹ももの娘を養子・美里として迎え、夫として花子を支えます。史実は大分異なりますが結婚話は朝ドラ向けに脚色されています。

※ 2024. 1. 23 追記


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