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二つの震災を描いた朝ドラ

2023年度前半、2作の連続テレビ小説が4月から放送・再放送され重要な意味を帯びました。奇しくも関東大震災100年に当たる2023年、植物学者・牧野富太郎をモデルにし最終回が近づいている『らんまん』と2013年に放送され8年ぶりに再放送された『あまちゃん』です。

※ 2023. 10. 4 訂正:最初の再放送は2015年でした。お詫びいたします。

『あまちゃん』は殆ど見ていませんが作品内容は把握しています。主人公・天野アキ(能年玲奈、現・のん)が母・春子(小泉今日子)に連れられ母の故郷・三陸に移り住み、海女(あま)とアイドルになる物語です。

『あまちゃん』は東日本大震災が登場します。アキの親友でライバルでもある足立ユイ(橋本愛)は東京に憧れながら家族問題等で挫折し自堕落になるも立ち直り改めて上京をしようと三陸鉄道(作中では北三陸鉄道)に乗りトンネルに入ったところで震災に遭う場面が描かれていました。

『らんまん』2023年9月20日(第25週123回)- 22日(125回)放送分に関東大震災が登場します。十徳長屋に住んでいる槙野万太郎夫妻と次女・千歳と孫が遭遇し末娘・千鶴が駆けつけ一部の植物標本と家財道具を背負い根津(文京区)から寿恵子が経営する渋谷の待合に命さながら避難し長男・百喜(ももき)と次男・大喜の無事を確認します。

作中にAIカラー化した当時の記録映像と『いだてん 東京オリンピック噺』(2019年)の一部が挿入され震災の恐怖と混乱が鮮明に伝わり、自警団が結成し朝鮮人虐殺事件が抽象ながら台詞で表現され、万太郎が残った標本を取りに根津に戻る途中、自警団に駐められ「十徳長屋に行く」と流暢に答える場面が出ました。これは方言が原因で朝鮮人に間違えられて殺害された悲劇があったからです。

万太郎が印刷修業した大畑印刷所の主・大畑義平(演:奥田瑛二)率いる神田の住人が必死で消火し焼失を免れた「神田の奇跡」も描かれていました。神田和泉町、佐久間町の一帯が免れた「神田の奇跡」が20年後の昭和戦中期の悪しき見本となり東京大空襲で灰燼に帰するのは言うまでもありません。

震災の混乱に乗じて社会主義者・大杉栄、伊藤野枝夫妻と甥が甘粕正彦によって殺害された「甘粕事件」も台詞で登場しました。これらを要点に絞り上げ15分間の放送で上手くまとめられました。

副題の「ムラサキカタバミ」はカタバミ科の球根植物で私達に馴染みがあり都会から野原に至るまでピンクに近い紫色の花を咲かせます。ムラサキカタバミは南米原産で江戸時代、観賞用として渡来し後帰化し日本各地に広まった繁殖力のある植物です。園芸品種のオキザリス(Oxalis オクサリス)はムラサキカタバミと同じ仲間でカタバミ属の学名です。

話を戻し多くの人が渋谷に逃れ移り住み、小さな田舎町が市街地化するのを目の当たりにした寿恵子は待合を売却し当時農村であった練馬に土地を買い取る場面で締めくくりました。ムラサキカタバミはどんなときでもたくましく生きる人々を表しています。

※ 2023. 9. 23 追記
※ 2023. 9. 29 追記


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