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カムカムエヴリバディ

2021年から2022年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説で母娘孫三代が「ラジオ英会話」を通して喜怒哀楽を過ごした人生を描いています。ラジオ放送が開始された1925年から2025年までの100年間、舞台は岡山、大阪、京都へと変わりながら三世代が経験した時代を映し出されています。脚本は藤本有紀で朝ドラでは『ちりとてちん』(2007年)に続いて2作目です。題名(タイトル)の由来は英語講師・平川唯一が出演する同名のラジオ英会話『カムカムエヴリバディ』です。番組主題歌「アルデバラン」は物語のイメージを決定付けました。

1925(大正14)年、日本でラジオ放送が始まった日、岡山市内の商店街にある和菓子屋で、女の子が生まれた。名前を安子(上白石萌音)という。あんこの甘い香りに包まれたあたたかい家庭に育った安子は、ずっと家族との幸せが続くことを願った。やがて戦争の足音が近づくなか、さまざまな試練が安子に舞い降りる。 けれど、ラジオ放送開始からまもなく始まるラジオ英語講座との出会いが、安子の未来を切り開いていく。 安子、るい、ひなたと、三世代の女性たちが紡いでいく、100年のファミリーストーリー。 安子の娘、二代目ヒロイン・るい(深津絵里)の物語は、昭和30年代の大阪から始まる。るいの娘、三代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の物語は、昭和40年代の京都から始まる。 昭和から平成、そして令和へ。三世代ヒロインは、その時代時代の試練にぶちあたり、ときに、世間や流行から取り残されながらも、恋に、仕事に、結婚に、自分らしい生き方を、不器用ながらも、それぞれが違うあり方で、見いだしていく。 そして、3人のかたわらには、ラジオ英語講座があった。 連続テレビ小説「ちりとてちん」の藤本有紀が、ラジオ英語講座と、あんこと野球とジャズと時代劇を題材に書き下ろすオリジナルストーリー。

【放送期間】
2021年(令和3年)11月1日~2022年(令和4年)4月8日​
【作】藤本有紀
【音楽】金子隆博​
【語り】城田優​
【主題歌】
 AI「アルデバラン」​
【主な出演者】
 上白石萌音、深津絵里、川栄李奈、西田尚美、甲本雅裕 ほか

NHKアーカイブス 「朝ドラ100 2021年度後期 第105作「カムカムエヴリバディ」」

感想

総ての感想から申しましょう。雑然としました! ラジオ英会話が主題なのにジャズ、時代劇といった色々な要素が加わって何が何だかわからなくなりました。テーマの盛りすぎです。最初は良くても途中から物語の調和が崩れ悲惨な結果になった作品が多く、当該作品も例に漏れず「英会話はどうなったの?」と言うぐらい意味不明な内容になりました(のちになってテーマを取り戻していきますが)。最初から題名を(作中で流れた)ルイ・アームストロングの名曲に因んだ『On The Sunny Side Of The Street』にすればよかったです。そうなると著作権の問題になるから3人目のヒロインの名前である『ひなた』にした方が分かりやすかったのではないでしょうか。

それでも人気のある作品であるのは確かで、これは上白石萌音が1人目のヒロインで登場する「安子編」のお陰でしょう。和菓子と英語を通して出会った若い男女の恋を丁寧に描き、タイトル通り英語を軸に進んでいました。

そこまではよかったのですが「るい編」(2人目のヒロイン・雉真るい(演:深津絵里))になると内容と構成が一変しドラマは違う方へと進み、英会話が吹き飛びました。しまいにトランペットが吹けなくなり自暴自棄になった大月錠一郎(演:オダギリジョー)が入水する場面で幻滅しました。ついでにるいのキャラクター設定が暗すぎたのも物語に影を落としました。

「ひなた編」(3人目のヒロイン・大月ひなた(演:川栄李奈))になるとノストラダムス(物語が英語とは無関係に進めた効果をもたらしました)が登場するほど凄惨なもので東映太秦映画村(1975年開場 作中では「条映太秦映画村」)を舞台にしていたから『オードリー』(1999年度後半朝ドラ)と重なる部分が多いです。父親譲りの時代劇好きなひなたの設定は元来、「大部屋女優から転身して英語講師」で進めるつもりでしょうが『オードリー』と重なるのか映画村社員に変えたのかと私は推測します。

ハチャメチャな設定と構成が終わるのはるいの岡山帰郷でしょう。ひなたにとって大伯父に当たる橘算太(安子の兄でるいの伯父 演:濱田岳)の死がきっかけでるいは岡山に里帰りする決心をしひなた、夫・錠一郎、息子・桃太郎(ひなたの弟)を連れていきます。

ひなたの夢の中にさだまさし扮する平川唯一が登場し、英語で「玉音放送」を読み上げる場面があります。るい一家が帰郷した時期が1994年8月であり平川唯一は前年(1993年)に死去しているから幻での登場です。同時に「安子編」では声のみ出演のさだまさしにとって唯一の顔出しです。

スタッフの意向と演出でしょうが「安子編」にも一回でもいいからマイクに向かって英語を話す場面を出して欲しかったです。

極めつけはすれ違いで絶縁した母娘の再会でしょう。ハリウッド映画撮影で来日したキャスティングディレクターのアニー・ヒラカワがラジオ番組で安子であることを明かし、聴いていたるい達は驚き、るいは動揺するもクリスマスコンサートの歌をこなし、様子を見に岡山に戻るも逃げるアニー(安子)をひなたが見つけコンサート会場に連れて行き母娘の再会も和解を果たします。私はシェイクスピアの『冬物語』を彷彿させます。

※ 2023. 6. 6  追記
※ 2023. 6.24 加筆修正
※ 2023. 8.21 修正


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