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ST3年目までの方へ嚥下評価でMWSTを行う時に見るべきポイント3つ

 皆様、当ノートを閲覧していただき、ありがとうございます。
【嚥下評価】に興味を持ってもらいとても嬉しいです。

 本日はST3年目までの方に向けて「MWST」のポイントについてお伝えしたいと思います。

 MWSTから嚥下能力を推察できることで日々の臨床の時間短縮につながり、より良いケアへ繋げやすいため、よろしければ最後までお付き合い頂けると幸いです。

おさらい:MWSTとは?

 改訂水飲みテストと呼ばれる『誤嚥の有無を鑑別するスクリーニング』検査となります。

方法

 冷たい水を3mlシリンジに入れておき、口を開けてもらい、口腔底に注ぎます。その後嚥下を指示し、飲み込んでもらった後反復して2回嚥下を促します。これを2回実施し、点数が悪い場合を評価します。

1点:嚥下なし むせる and / or 呼吸切迫
2点:嚥下あり 呼吸切迫 (Silent Aspiration 疑い)
3点:嚥下あり 呼吸良好 むせる and / or 湿性嗄声
4点:嚥下あり 呼吸良好 ムセなし
5点:嚥下あり 呼吸良好 続けて30秒のうち2回嚥下を促す

細かい解釈

 細かい部分なので解釈が違うと思われる人もいらっしゃるかもしれません。ご参考までにお願いします。

■1点:
 嚥下がなくムセがあり、その後嚥下反射が認められる場合、1点としています。嚥下があってムセもあるからといって3点とはしません。

■2点:
 呼吸切迫という言葉を調べてみると「呼吸回数」と「呼吸の深さ」の増加が認められる状態であるとのことです。そのため普段の「呼吸」を見ていかなければなりません。

・「呼吸回数」
 吸って吐くを1回とします。
 平均値として【呼吸回数は1分12回~20回】となります。
 呼吸回数がだいたい何回されているのかをざっくりとMWST前に確認しておくと良いかと思います。

・「呼吸の深さ」
 呼吸の深さに関して「吸気相」「呼気相」の時間などを測定しておくと良いと思われます。スクリーニングのためストップウォッチで測る必要はないかと思います。呼吸回数が15回であれば吸気相も呼気相も大体2秒で行われているはずです。それを基準にしてMWST後の呼吸変化を見ていきましょう。
 わかりにくいですが大事なのは【変化】です。

 難しい点として「心疾患」や「呼吸器疾患」が元からある人ですね。可能であればRSSTを実施してもらいその時の嚥下前嚥下後の呼吸に変化があるかどうかを一度見ておくと良いと思われます。
 RSSTが不可能な人は口腔ケア中の嚥下反射で判断していく必要があると思われます。他にも血中酸素飽和度を随時確認していくと【呼吸切迫の有無】を判断する材料になると思われます。嚥下後、呼吸切迫がなく、ムセもない、が、明らかに反応が乏しくなり、口唇のチアノーゼや血中酸素飽和度が下がったのなら「何らかの要因で呼吸の切迫が出なくなってしまった状態」と評価しても良いと思われます。万が一も起こりうるためすぐにナースを呼び多人数で対応しましょう。

■3点:
 3mlの冷水を嚥下後すぐにムセが見られるのでしたらわかりやすいですが、20秒30秒経って咳が出てしまうとわかりにくいですね。
 私は20秒以内に咳が出たら3点とするようにしています。
 その20秒の間に軽くフリートークをはさんでおりますが、その時の声の共鳴(開鼻声の有無または増強減弱)、声量(MWST実施前後での変化)、声質の変化(湿性/嗄声)を見ています。その時点でどれかが顕著に変化した場合は咳を出してと促します。もしこの時に咳が出せなければ2点の可能性も視野に入れます。

 ここでも「心疾患」や「呼吸器疾患」が元からある人が難しいですね。「心疾患」や「呼吸器疾患」があると【痰】が良く出てしまいます。そのため「誤嚥によるムセ」か「痰による咳」かは判断が難しいです。
 とはいえどちらも「食事」を摂る上で弊害となる症状です。安全を期するなら、ムセが出たとして判断し点数を低くしても良いのではないかと思います。

 ムセが出たからといって安心は出来ません。
 我々も一度誤嚥すると何十秒も咳が止まらないことがあると思います。
 SpO2や、呼吸が正常に戻るかなどをしっかり見て、咳を促しましょう。背中を手でさする行為はあまり意味がないとの話を聞きますが、思いやりは伝わるので注意がそれて咳が止まるなどの極端なことがない限り手を添えさせていただきましょう。

見るべきポイント3つ

 それでは1つずつ見ていきましょう。

 1.何のために行うか
 2.指示に従えるのか
 3.ムセのタイミング

 1.何のために行うのか
 MWSTを何のために行うのかを見ていきます。
 1つは「嚥下障害の有無を鑑別」したい時です。
 ドクターやナースから「この人嚥下障害ある?」と聞かれた時に行う場合が多いと思います。

 2つは「食事が摂れるかどうか」を評価したい時だと思います。
 この人はご飯が食べれそうかどうかをチェックしたい、そういう時でもこの評価が役立つと思います。

 2.指示に従えるのか
 指示通りにうまくいかない人が居ます。
 口を開けてと言っても開けてくれなかったり、まだ飲み込まないでと言っても飲み込んでしまったりすることはたくさんあると思います。
 この指示に従ってもらえないと、データは取れません。つまり「嚥下障害」と明確に評価することが出来ません。

 そのため発想の転換が必要です。上記の通り「嚥下障害」の有無を決めるための嚥下評価とするか「食事が摂れるかどうか」を考える機会として嚥下評価をするかになります。

 指示通りに従えず、シリンジでは口を開けてくれないためスプーンで代用してしまったMWSTでは「嚥下障害」がある/ないを評価できません。
 しかし、口を開けてくれるフードテストを試したら、2回とも指示通り嚥下してもらうことが叶い、4点の評価が出来たとしたら、嚥下障害の有無を出すことが可能です。
 嚥下障害があるかどうかなど、MWST以外のポイントで評価した結果をドクターに報告し診断してもらうといった方法もあります。ポイントは指示に従えないMWST"だけ"では嚥下障害と評価しにくいという点です。

 「食事が摂れるかどうか」を判断するために行う場合は「指示に従えない」要因を探る必要があります。
 音声提示がダメなのか文字提示ならいけるのか、環境が騒がしいせいなのか、静かなところなら問題ないのかなど考えるポイントは様々であると思います。

 また、そもそも覚醒が低下しており意思疎通困難、酸素が10㍑入っており常時開口状態であればMWSTを行うよりも前に口腔ケアを行い患者様の反応を見てMWSTが実施可能かどうかを判別した方が良いかもしれません。口を触っても拒否がないのか、首を横に振って拒否されるのか、その際に唾液嚥下はあるのか、口腔内を湿潤させることで舌運動が変わったりするのかなど見るべきポイントはたくさんありますね。
 やはり、ある程度バイタルが安定し、通常嚥下がしやすいとされるギャッジアップ30度頸部屈曲位にしても血圧が変わったりしないことがベストです。

 3.ムセのタイミング
 ムセが嚥下前に起こったのか嚥下後に起こったのかを判断する必要があります。難しいのは嚥下後すぐのムセですね。嚥下障害を鑑別するためだけでしたら、3点で良いのです。

 「食事が摂れるかどうか」を判断するためにはしっかりと考えなければなりませんね。MWSTが3点の場合、嚥下後の誤嚥と捉えると、問題は「咽頭の貯留」による誤嚥と考えがちです。

 しかし、我々も早期咽頭流入による嚥下前誤嚥を1度くらい経験していると思いますが、嚥下前誤嚥だったとしても咽頭内にあるものを一度嚥下して処理してからムセが出ると思います。

 そのためMWST3点は「早期咽頭流入」なのか「嚥下中誤嚥」なのか「咽頭貯留による喉頭侵入→誤嚥」なのか判断がつきにくい場合があります。

 ポイントは【嚥下の瞬間】ですね。
 【嚥下の瞬間】に

 ・異常な嚥下音が聴取された
 ・嚥下の瞬間か、その前に顔をしかめた
 ・口を動かし、咽頭へ送り込もうとしていると思われる動きが無かった

 上記のようなポイントがあり「嚥下後ムセ」があると咽頭貯留よりも「早期咽頭流入」によるムセの可能性を考えた方が良いかもしれません。

 この結果を頼りに「水分のトロミ」を調整したりします。
 水分のトロミは薄いと早期咽頭流入の問題、濃すぎると咽頭残留の問題へ発展しますので注意が必要です。

まとめ

ここまでご覧いただき誠にありがとうございます。

MWSTは簡便で使い勝手が良く、感度や特異度も統計的に計算されているためすごく安心して使えたり、症例発表などに大活躍の検査です。

ですが、細かいところでどうしたらいいかわからない部分があると思います。これらを参考にしてブラッシュアップしていただけると幸いです。

それでは!


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