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【怖】廃墟の病院パート2

私たちはそれからゆっくりと2階へ上がっていった。まだ明るかったので思っていたよりも怖くはなかった。ただ、何かの気配はずっとまとわりついていた。少し螺旋状になっている階段を上がっていくと、そこにはいくつもの部屋に分かれていた。

私たちは迷わず一番左側にある部屋へ進んだ。なぜそこだったのか、何かに呼ばれていたのかは分からないが、誰も言葉を発することなく吸い込まれるように足はその部屋へ向かっていた。

そこは手術室だった。そこそこ広めの部屋には、真ん中に手術台があり、その周りには手術に必要な機械がそのまま残っていた。その中にはメスなどの切る道具も残っていた。血は付いていなかったが、そのようなものが普通に置かれてあるのが逆に恐怖だった。私たちは部屋中のものを物色しながらあれこれと議論した。

だんだん日は沈み始め、薄暗くなってきた。そろそろ帰ろうということになり私たちは廃墟を出た。車に乗る頃にはだいぶ暗くなっていた。車内ではその日の出来事をワイワイと話していた。ガラスが落ちて危なかったが、特に何も起こらなかったことに安堵していたのだった。

だいぶ暗くなった頃、運転していた友人の様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたの?」
私が質問してみると、彼は青ざめた顔をして答えた。
「出られない・・・」
私たちは迷ったのかと笑いながら話したのだが、本人は笑っていなかった。この廃墟には何度も来ていて、地元なので道もよく知っているのに、同じ道を何度も走っているというのだ。私たちはだんだん笑顔がなくなった。そして車内は静まり返った。

何時間走ったのだろうか。辺りは真っ暗だった。誰も来ないような場所なので、人や車にも遭遇しない。私たちは誰もが無言で、ただただ祈っていた。運転している友人はまるで何かが乗り移っているかのような、別人の顔をして固まっていた。その時の車内は蒸し暑さがあったことを忘れ、冬でも来るのかと思うほど凍りつきそうだった。

フッと車内の空気が変わった。運転している友人を見ると、元の顔に戻っていた。それを見た私たちはホッとした。
「やっと出られたよ!良かった!」
こうして私たちは行きの時間の3~4倍の時間をかけて集合場所の駅まで戻ってくることができた。誰もがそれ以上話題にせず、早く帰りたかった。私も早く家に帰って寝たかった。まあ、私の場合家に帰っても霊がいるのだが・・・。

その日の夜のこと。廃墟は怖いというイメージをもっていたからなのか、うなされていた。次第に体調も悪くなり寝込んでしまった。熱を測ってみると39度。私はこの時は人生で一番高い熱だった。それは3日間続いた。その間うなされ続け、怖くて何度も泣いた。これを機に廃墟には遊び半分で2度と行かないと誓った。

4日目になり熱が下がっていた。しかし体調の悪さや悪寒、顔色の悪さは残っていた。みんなはどうしたのか気になっていたので大学へ行ってみた。すると運転していた友人ともう1人に会った。2人とも何だかよそよそしく顔色も悪かった。私はこの数日間のことを話した。どうやらその2人も同じく高熱で寝込んでいたことが分かった。私たちはあの日のことを誰もが嫌な思い出として残ってしまっていた。

しばらくして一緒に行った最後の1人に会った。彼もまた同じく寝込んでいたそうだ。顔色が悪くやせ細っていた。4人ともどことなく以前の感じではなくなっていた。そして私たちはこれを機にバラバラになってしまった。

私はしばらく顔がゆがんでしまい、イライラする日が続いた。まるで誰かが私の中に入っているかのような、別人のような性格になっていた。今思うと、もしかしたら霊が怒って私の中に入り込んだのかもしれない。または、医療器具が殺菌消毒もせず置いてあったことで、何かの菌やウイルスが入り込んだのかもしれない。その頃に自分の能力に気づいて使っていたら何か分かったかもしれないが、波長も低く自分を否定して生きていた時代には、乗っ取られやすい体だったのだろう。

あの病院はどうなったのだろうか。未だにひっそりとあの場所に佇んでいるのだろうか。これから訪れる人々にまた怒りをあらわにするのだろうか。廃墟に暮らす霊たちは、静かに暮らしたいと思っている。それを邪魔する人々には容赦しないのかもしれない・・・。

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