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【怖話】お坊さん

私はある時期から毎日のように金縛りに遭っていた。ある時期というのは曖昧なのだが、中学からなのか、高校からなのか、そのあたりだと思う。

これは金縛りに遭う人のあるあるかもしれないが、仰向けになっていると起こりやすいと考え、うつ伏せに寝たり横向きに寝たりして金縛りに合わない寝方を探したものだった。だがしかしどういうわけかどの寝方をしても金縛りに遭う。今度は解くための呪文として、あらゆるお経などを覚えようとしたのだった。

ある日、いつものように金縛りにあった。金縛りにあうときはすぐ分かる。周りの空気が重たくなり、さらに暗くなる。そして体がジワジワと硬くなっていくのだ。その間横を向こうとバタバタしたのだが、それよりも早く体が動かなくなってしまった。

両サイドに人の気配を感じた。この時点で恐怖を感じているので、焦って呼吸も早くなる。2人も来たかと冷静に判断する自分もいたのだが、「誰か!助けて!」と心の中で叫んでいた。

「南無◯◯◯…◯◯…」

遠くからお経のような声が聞こえてきた。薄目を開けるとそこにはお坊さんが両サイドに座っていた。なんだ、お坊さんかと、一瞬安堵したのだが、いや待てよ、じゃあなんで金縛りにあうんだ?!と混乱していた。そしてそのお経はどんどん大きくなり、お坊さんたちは私の胸の間をさすってきた。

次第に私はまた恐怖に襲われた。どうにかしてやめさせたい、どうにかして金縛りをときたい、その一心で私も思い出せるあらゆるお経を唱えた。そして言葉にならない言葉で「消えろ消えろ!帰れ帰れ!」と言った。するとお坊さんのお経が止んだ。良かった、助かった!そう思ったのも束の間、数秒の沈黙の後それは耳元で囁いた。

「そんなことを言っても消えないよ」

私は恐怖の絶頂までいき、気絶した。

ふと目を覚ますと朝だった。あれ?!あれは夢だったのか?!そうだ、夢だったんだ。そう言って自分に言い聞かせた。でもハッキリと覚えていた。そう言えば、お坊さんに胸の間をさすられたよな、まさかね…そう思いつつ恐る恐るパジャマのボタンを開けた。するとそこには真っ赤になった跡がクッキリとついていた。私は再び恐怖が戻り、母に泣きながら

「お坊さんが…さすられて…跡が…」

そう言って訴えた。しかし母にはなんのことやら分からず、

「あんた一体何言ってるの?早く着替えなさい!」

そう言われてしまった。あれは一体何だったのか。お坊さんは良いことをしていたのだろうか。それとも私を苦しめていたのだろうか…。

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