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ポゼスの遊山録ータイ編③ー

前回からの続き

ポゼス一行はいよいよタイへ出発する。

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出発の日、22時に関空に集合した。

出航23時45分 バンコク(ドンムアン)行。

現地時間、朝の5時前に到着する便である。日本からバンコクまでは約7時間、4500キロ。撮影旅行としてはポゼス史上最長の移動距離である。

今までのP点最長移動距離は、爆破撮影に栃木県岩舟山に行った[Wake Up!! ザ・ポゼス]だが、今回はそれを遥かに上回る遠征なのだ。


関空のターミナル1に着くと、鞄を二つおなか向きにかかえたダイオキシンボーイがガクガク震えながら立っていた。

そう。ダイオキシンボーイは生まれて初めての海外旅行なのだ。生まれて初めての外国で野良MVを撮った彼に敬意を表し、読者の皆様は拍手されたし。


一人が緊張していると自然に気が奮うものである。勇み足で保安検査場に向かった私は案の定、手荷物検査で引っかかった。

もう慣れっこだ。国際線ではこれまで100%の確率で止められている。

旅行に出る時、私は野外収音用のマイクを持っていくのだが、それは知らない人が見たら、確かにアヤシイ機器なのである。商品名もショットガンマイクだし止められて当然かもしれない。

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LCC深夜便だったが、機内食のアジアン鶏肉弁当が出たのでそれを食べ、眠ろうとした。眠れなかった。

ダイオキシンボーイの髪の毛がちくちくと刺さるのも一因である。

3列シートの片側が空いていたので席を移動させてもらい、何とか眠ろうとしたのだが神経が過敏になっていてなかなか熟睡できない。

アイマスクもだめだ。アイマスクをするとかえって聴覚が研ぎ澄まされ、周囲が余計に気になる。気になるけど見えない。見えないから不安になってソワソワする。アイマスクはしない方がよかった(学び)。

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あんまり眠れないままにドンムアン空港に着いた私とダイオキシンボーイ(彼は爆睡できたそうだ)はマジ太の姿を探した。彼は羽田だか成田だか東京の空港から先にタイに入っている。

「ミッションのために現地の空港で落ち合うなんてハリウッド映画みたいじゃね?」と心の中で自賛しながら、ドンムアン空港のトイレでヒートテックの上下を脱ぎ捨て(捨ててはいない)、Tシャツ全開夏浮かれ仕様にチェンジした。

関西組はWi-Fiを契約していなかったので、ここでマジ太と合流するまでにすれ違い珍事件などがあれば面白かったのだが、幸いなことにマジ太はずっと出口の前で待っていてくれ、難波駅集合時と変わらぬすんなり具合で合流できてしまった。

幸せとは概して平凡で退屈に思える時間なのである…。


ところで私はインチキ英語が話せる。高3の頃、入試勉強しているときは英語が一番よくできた。

空港からタクシーに乗り込み、インチキ英語で予約しているホテルまで行くようお願いした。

タイの車はどういうわけだかやたらと車間距離を詰める。100キロ前後で走りながら、前の車まであと30センチという所まで詰め寄るので「いやいやいや当たる当たる…!」と助手席で何度も静かに足を踏ん張った。

その上、道路にもところどころ凹凸があって、高速で走る車体がときどき宙に浮く瞬間がある。クーラーの冷気は半袖一枚の体にガンガン吹きすさび、色んな意味で私たちは青くなった。

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長い長い30分ののち、ホテルの前でタクシーは停車した。

走行中はヒドイ仕打ちを恨めしく思っていたのに、車を降りると無事に到着した安堵と謎の達成感からか、黙々とスーツケースを運び出すタクシーの運転手がイイ人に見えてくるのが不思議である。

女性に冷たく当たる男がなぜかモテる仕組みと同じだろうか。マジ太も笑顔でチップをはずんでいた。


午前6時前、まだ暗いプラアーチット通りに遠ざかるタクシーを見送った後、私たち3人は「さて!」と振り返ってホテルのエントランスを見た。

そこは目的のホテルではなかった。

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(つづく)     Mt.Pontaro

(※タイではソレが普通なので、この運転手が特別乱暴な運転だったわけでもヒドイ人だったわけでもない。日本の交通感覚とは違うというだけである。)

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