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「梨泰院クラス」を見終わった〜思いの丈を語る(ネタバレ注意)

どうも。

見終わりましたよ。もちろん、これです!

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こないだから、ここで何度か話題に出してました、ネットフリックスで世界的に放送されてる韓国のドラマ「梨泰院クラス」ですが、全エピソード、見終わりました!

いや〜

最高に面白かった!!

今、誰かとこの話題、したくてたまらないのですが、ちょっと、これ、話すと物語の核心までつかないといけないので、「まだ見てないけど、これから見たい」人にとっては、どうしてもネタバレ部分が出てしまいます。あるいは、「途中まで見てるんだけど、まだ全部見終わってない」という人にも良くないです。

なので今回は、「これから梨泰院が見たい!」と少しでも思われる方は、これから先は読まないでください。逆に「もう見たよ!」、あるいは「どうせ見ないだろうけどね」という人だけ、読んでください。

それでは、ここからネタバレで話を勧めていきます。

では、この「梨泰院」、なにがそんなに良かったのか。語っていこうかと思います。

①全エピソードが「人生の生き様バトル」

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このドラマ、なにがすごいって、全16エピソード、全部に渡って「自分の生きざまバトル」があるんですよね。どのエピソードでも、「この場合、キミはどう生きるか」の人世の選択が迫られるんですよね。そして、そこに、それを突きつけられたキャラクターたちが、時間をかけてどういう決断を、どういう自分の人世哲学に準じて出していくか。

この手法を取るから、見る人がこのドラマを自分のことのように強く感じ、より没入して入れ込むことができる。これが成功の最大の秘訣だと思います。

たとえば主人公、パク・セロイは、結果的に自分の父親を殺した大財閥チャンガの、「権力さえ持てば、誰もが自分たちにひざまずく」と思い込んでいる体質が高校生のときから許せず、自分の美学上、詫びることがどうしてもできないものには一切頭を下げない。もう、スタートの地点がこれですからね。こうやって、見る人たちに対し、かなり能動的な思考をグイグイ求めていく、’これが次第に快感になるんですよね。

②セロイは「現代韓国の高倉健」

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このドラマ、世界的に見て、久しぶりにロールモデルとなれるような男性像が示されてますね。それが主人公セロイなんですけど、彼がこう、見てて、ヘアスタイルのせいもあるんですけど、すごく高倉健なんですよね。

設定も思い切りそうなんですよ。罪を背負わされて生き、普段は寡黙で朴訥。だけど、筋が通らない事だけには我慢できずにあふれるものを抑えることができない。そして、さりげなく、自分が愛する人たちなら全力で守ろうとする。いわゆる「理想の上司」みたいな投票で名前上げたくなるタイプですよね。そんな彼の人生哲学が全エピソードできくことができるのが、このシリーズのおもしろいところです。

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そして。恋愛に関しても、泣けるくらいにストイックなのも、今どきめずらしくも愛おしい感じです。言ってしまえば、かなり遅くまで童貞を保ってしまったことにもなるんですが、その理由が、自分の父の死の事実を知り、幼い頃に辛い過去を背負うスアに対して、彼女が自分を何度か裏切って、しかもにくきチャンガに就いた人になったのに、「キミを取り戻すまで俺は戦う」と言い切って、それを実現しようとさえした。第6話でのこの告白、僕、泣きました。「こんな、略奪された姫を奪還するまであきらめずに待つ」みたいな騎士道精神、まだ通用するんだなと思って。

これまでのドラマだったら、この純愛だけで成立させてもいい。そういうものだったと思うんですけど

③「エンパワメント・ジェネレーション」を先立った、イソの新たなヒロイン像

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そう、させなかったのが、このイソの存在ですが、彼女もおそらく、韓国ドラマ史上に残る、画期的な女性像として歴史に残りそうな気がしています。いや、現在の全世界的に見ても、彼女はかなり新しいキャラクターです。

それは、ひとつは彼女の役の設定が、「ネット世代のインフルエンサーから転じて天才的経営マネージャーになった」というのももちろんあるんですけど、そんな彼女がもう、思い切り「自分はできる。誰より美しい」と自分を信じて疑っていない、もう、典型的なビヨンセやガガ、テイラー以降の「エンパワメント・ジェネレーションの申し子」みたいな感じでね。

それをイソは理想的な形で実現させてしまった。クイーン・ビーみたいな女王様気取りみたいな連中を嫌うクラスでのオルタナティヴな立ち位置で、ものすごく洗練された趣味で遊びも派手な未成年クラバーでファッション・センスも「かわいい」ではなく、あくまでエッジィ。そして容姿も、僕はかわいいと思うんですけど、でも、これまでの映画やドラマのヒロインのタイプとは明らかに異質。保守的な男性であれば、「かわいくないのに」と言いそうだし、実際、ネットでそういう意見も見ます。

だけど、このイソこそ、今後増えるべき役柄だと僕は思いますけどね。表層的なセクシーではなくあくまで「自分がどういう人間でありたいか」を表現しながら生きていく。ただ、これを表現するのがなかなか難しくてですね。だってこれ、仮にハリウッドでリメイクする場合に、誰でさせます?難しいんですよ。配役が全く思いつかなくて。日本だと、誰になります?日本のは疎いのでわからないんですが、今回、キム・ダミって女優さんがやったテイストでそれができる人って、世界探してもなかなかいないと思うんですよね。このダミ、とにかく目の表情が豊かで、台詞回しも絶妙。韓国の業界では、「大物新人が出てきた」と騒ぎらしいのですが、それも納得です。

そのイソは、セロイのパブ「タンバン」に入ったのが20歳と若く、功利的な計算をしすぎるのと、溢れすぎる自信でたまに自分が見えなくなり、感情と意見を表に出しすぎてセロイによく説教もされる未熟なところも描かれるんですが、そこもいい。根っこで「曲がったことは許せない」性格があるので、すぐに修正もできるし。

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この新しいキャラクターこそが、セロイとスアの純愛に待ったをかけようとする。これがまた新しい。キスしそうになった2人にイソがスアの口をつかんで止めるシーンがあるんですけど、そこも「古風な恋愛もの」の時代を終わらせて、新しい今の時代の恋愛像を示したい製作者の意図みたいなものを感じたし、全力で生きて、毎日のようにセロイの味方について「誰が一番彼のことを思っているのか」を毎日証明したくて生きてるような、イソの全力な姿、これもかなり心打つものがあります。

そんなイソを

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気の優しいグンスが追う、というのも、これ、面白い展開なんですよね。もとはクラスの中で密かにイソに思いをいだき、かっこいいイソのそばにいて、彼女がそんな彼の思いを利用して振り回されもするんだけど、それでも幸せだと思い。それが’きっかけで、イソと一緒にタンバンのメンバーにもなって。本来、セロイと対立するチャンガ社長の息子であるにもかかわらずね。

それは彼が、父親に大事に育てられなかったことが「自分の無力感」を植え付けられていたからなんですが、でも、セロイという、イソとの恋愛でかないっこないライバルを見つけてしまい、イソの心無い一言でチャンガに戻ってしまい、ひどいこともしてしまう。このグンスの「覚醒」も、このドラマ、かなり見ものです。

でも、「エンパワメントな女の子」を静かに受け止める姿、これは、これからの男性像として増えてきそうな気もしてます。

④ポリコレにもポジティヴ

あと、これ、ポリコレにもすごくポジティヴなんですよね。

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まず、タンバンのシェフ役のヒョニはトランスジェンダーなんですが、劇中、そのことが明かされてしまって差別を受けるシーンが出てきます。ただ、それを乗り越えてみせることで、LGBTへの差別に対する製作者側の理解を求めるメッセージが見て取れるし

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タンバンに後から入ったアフリカからやってきたトニーも差別を受ける姿が描かれたり。これらの描写は、韓国社会の保守的な側面への痛烈な批判だとも思うんですけどね。でも、それを、そこから目をそらそうとせずにしっかり現実に存在するものとして描写しようとする勇気を買いたいですけどね。

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そして、タンバンでのいい意味でのボケ役で笑えるナイスないいヤツ、スングォンに至っては、元ヤクザですからね。こういう人たちに偏見を持つのではなく、平等に社会で成功するチャンスを与える。これもセロイの人生哲学でもあり、このドラマの大きなメッセージのひとつだと思います。

⑤悪役の憎たらしさ

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そして、こういう復讐劇の場合、敵が憎たらしくないと面白くないんですが、これも見事です。

まずは、チャンガ総帥のチャン・デフィ。これが極悪非道で、すごく癇に障る高笑いを毎週のようにするんですけど、頭脳派でつぎつぎとセロイを罠にかけるようなことを仕掛けてくる。だから、セロイたちにとってにくさが倍増するんですけど、ただ、それが理由で、「さすがはチャンガの総帥だな」と思わせる理由にもなってしまう。

ただ

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その底意地の悪さゆえに、息子の教育には失敗します。この後継者グンウォンの、何ひとつ良くない最低ぶりがまた笑えてね(笑)。人は暴力使っていじめる、仕事はできない、悪趣味な笑い方はする。こいつが、第1話から最終話まで、とにかく最低です。

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このセロイとの対決のシーン、見るたびに「高倉健VSマルフォイ」なんですけどね(笑)。反省もせず、ひたすら意地悪であり続けるバカ息子、という意味で、ハリー・ポッターのマルフォイほど、この男に似合う形容、ないです。共感は全くできませんが、話は盛り上げてくれています。

⑥サブキャラの有効活用

あと、これは考えようによってはウィークポイントでもあるんですが、このドラマ、前に別の立場で登場した人が、別の角度で後からドラマに貢献してるんですよね。ここも面白いところです。

たとえば、マルフォイにいじめられた少年がセロイのビジネス・パートナーになったり、セロイの父の事故死での担当刑事さんが同じくビジネス手伝ったりね。ただ

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ただ、このおばあさんの設定だけ、ちょっと強引な気はしましたけどね。出方が唐突な上に、それがトニーの生き別れたおばあちゃんだった、というのはね。

「物事がそんな狭いところばかりで起こるわけ、ないだろ(笑)?」というツッコミには十分なります。ここは面白いんですけど、ちょっとやりすぎな部分ではあります。

と、これだけ満載であれば、「見たい」という興味も上がるかと思うんですが、最後に

⑦続編の可能性は?

これについてですね。

このドラマ、「セロイの復讐」ということで、もう全てが解決した状態で終わっているので、続編作るのはかなり難しいでしょう。チャンガがもう、実質、なくなったとの同じだし、デフィも、描かれなかったけど、続編作る頃には存在してないでしょうからね。

これ、続編あるとしたら、むしろスピンオフで

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スアの話になるんじゃないかな、という気がしてます。なんとなく、最終回でそれが匂わされてるんですよね。このドラマの他のキャラクター、出さずにすむ展開になったのも、彼女だけですからね。

このドラマ、一番つらい立場にあったの、彼女なんですよね。セロイとチャンガの板挟みになって。そこのところ、よく見てる人は情もあるでしょうから、人気を得ることは可能だと思うんですけどね。

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あと、もうひとつ可能性があるとしたら、セロイとイソが結婚せずに終わったので、特別編か映画みたいな形で残されたりしてるのかな、とも思わないではありません。

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