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今のこの時代に「サブスク解禁しない」ことは、一体何を意味するのか

どうも。

今日は久しぶりにこれをテーマにしましょう。それは

サブスク!

こちらになります。

僕、過去にこのテーマではすでにたくさん書いてまして

過去にもこうやって書いてきてるのですが、いまいちど書いておきたい気分になりました。

 それは、日本でサブスク解禁しない大物の方の新作が出たことにもズバリ関係してはいるのですが、その方の個人攻撃を目的としたものは書くつもりはないです。だって、その方だけが配信を拒否しているわけではないので。これは日本の音楽界そのものの、恐れずに言ってしまえば「問題」だと思っています。その意味では、今回の内容が一番厳しいものにはなります。

 はじめに断って起きますが、サブスク解禁するもしないも、そのアーティストの自由であり、その意思は尊重はされるべきなのかな、は思います。ここの一文は読む際に忘れないでください。

が!

「解禁しない」という自由を選択した場合、今日、それに伴うものとはどういうことなのか。


これについて語っていこうかと思います。

 まず、「大物アーティストで、サブスク配信を拒否している人が多い」、こういう状況が何をもたらすか。それはズバリ、「音楽セールスでのサブスクのシェアの低さ」、これをもたらすことになります。そうなると、どうなるか

①日本”ただ1国だけ”が、国際常識からかけ離れた音楽受容を継続することになる

これを忘れてはいけません。

現在、全世界の音楽売り上げのシェアはどうかと言いますと

これが全世界統計なんですが、2020年の数字でいうと、ストリーミングによる音楽売上が134億ドルに対し、フィジカルの売上は42億ドル。つまりストリームがフィジカルの3倍以上なんですよ。フィジカルの中にはさしずめ3割程度がヴァイナル、つまりアナログが含まれているかと思われるのでCDだと30億ドルないでしょうね。そうなるとストリーミングがCDの4倍以上はあるかと思います。

そしてストリーミングが全世界の音楽売り上げに占める割合は65%フィジカルはもう20%程度しか占めていません。

アメリカに至ってはもっとこの差は大きいですよ。ストリーミングが83%、フィジカルはもう11%しかありません。

 続いて、日本でも人気ありますイギリスだとどうかというと、こちらも
2021年で音楽総売り上げ12億6000万ポンドのうちストリーミングが83億なので70%くらいのシェアですね。フィジカルが24億ポンドなので全体の20%行ってません。

僕の住んでるブラジルで見てみると、この差はさらに大きいです。2021年の音楽売り上げのうちストリーミングが1億8000万レアルなのに対し、フィジカルはわずか1200万レアルですよ!なんと、ストリーミングがフィジカルの売り上げの”100倍以上”あるんですよ!

 たしかに、ブラジルでもう「CD売り場」というものを見ないし、CDプレーヤーというものを売っていません。もう、「テクノロジーの更新」が「CDで聴きたい自由」を保証してくれなくなっている状況です。

そして、この現象はブラジルだけではありません。世界の音楽売り上げの統計でみると、南米では86%、中東および北アフリカが95%がストリーミングです。中南部アフリカでは無料ストリーミングが強いとのこと。つまりストリーミングは貧しい国であればあるほど強いんです。

 そんな中、日本はどうか。上のレポートによると、アジア地区は全世界の約50%のフィジカルの売り上げを支えているといいます。

 これは日本だけのことをさしていません。韓国でも、Kポップのいわゆる「推し」のアイドルに関しては「CDを買ってこそ本物のファン」という概念があり、それがCD売り上げを支えているといいます。しかし、そんな韓国でも「6割のリスナーがストリーミング」という統計を別に目にしています。

そんな中、日本のストリーミングの割合はというと

はい。ここ、デカイ字で強調しておきましょう。

「他の国の世界平均で65%がストリーミング」のところを「音楽ソフト、つまりフィジカルが68%」、つまり全世界の他の国と真逆の結果が日本では出ている、ということです!

しかも日本、世界の音楽売り上げで2位の国ですよ。もし、おそらく「全世界で65%のサブスク」という数字も、日本が大きく平均値を下げた可能性がありますね。他の国からしたら、もう70%以上がサブスクで当たり前、という世界なのだと思います。

 なんなんでしょうね、これ。だって僕、アナログがCDに切り替わった1987〜88年のこと覚えてますけど、何の問題もなかったし、むしろレコード会社が変換を奨励してましたよ。ところが今の日本、Apple Musicの上陸が2015年、Spotifyの上陸が2016年と、6〜7年経っても、この状況って何なんでしょう。

 これ、僕からしてみたらですね

これ、2016年に世界的なニュースになったんですけど、「日本で最後のVCRレコーダーの製造会社がついに製造をやめた」というのがネタになりました。このとき僕の周囲でも「日本って家電の国じゃなかったの?DVDでも古いかもしれない時代に、ビデオをまだ見てたの?」とかなりネタになったんですよ。

それから

 これも海外ではたびたびネタになります。「日本の会社ではまだFAXを使ってる」という話。他の国にしてみればファックスって80年代の機器なんですよね。それをまだ使っているということですごく驚かれてます。

 もう、ぶっちゃけ、「音楽売り上げの3分の2がまだCD」なんて話もですね、このVCRやFAXの話に近づいてきてるかと思います。まあ、これ、総じて、「家電の時代までしか世界をリードできなかった日本」を象徴している出来事であるような気がしますけどね。

②音源の違法リスニングを助長し続けることになる


次に、「そもそもなんでサブスクができたのか」、これについて考えなくてはなりません。

 ネットが一般普及して少し経った2001年くらいから、「ネットによるCDの違法ダウンロード」、これが問題になっていました。

 それを解決しようとする形でアップルがオフィシャルのダウンロードはじめてみたりしたもので、ipodなどを通じて解決に当たりましたが、これも今ひとつ決定打にはなりませんでした。やっぱ、曲の単位の価格が高い上に音質良くなかったからわざわざ買う気にはならなかった(僕はこの類でした)し、そんなに利用する気にはならなかった。むしろ、この時代にYouTubeでアルバムまるごとに違法アップデートが増えて、むしろそちらが重宝してたくらいです。

 サブスクというのは、全世界から無限大の音をかき集めることでこれに対処したわけです。僕もサブスクやるようになってから、YouTubeでアルバム漁るのやめましたからね。僕の場合はそれまでブラジルとか南米のロック、非英語圏のヨーロッパのロックのアルバムを漁って聞いてましたけど、後ろめたい気分を味合わずに合法的にレアなアルバム聞ける体験というのはすごくうれしかったですね。

 だからサブスク定着して、合法的にいろんな国のアルバム聴けて嬉しかったんですけど、僕はその後もYouTubeでアルバムを利用しなくちゃならなくなりました。

なぜなら

サブスクで聴けない日本のアルバムがあまりにありすぎるから。

 皮肉なことに、2014年くらいに他の国のアルバムでやってたこと、2016年以降に日本のアルバムでやることになったんですよ。だって、日本だけ、アルバム解禁されないから。しかもわざわざ、後ろめたい気分を感じながらね。

特に日本なんて、シティポップのブームがあったわけだから、国際的に聴きたい人、多いはずなんですよ。それこそサブスクに音源出してりゃ、結構なもうけが海の外から入ってくる可能性があった。なのに、それを無駄にして、世界中に違法で聴く人を増やしてるわけでしょ。意味ないじゃないですか。違法ダウンロード対策20年の成果を完全無視してますよね?

③中古市場の価格破壊の可能性


あと、「サブスク解禁しない」ような作品は当然稀少価値があがります。サブスクのようには簡単に聴けないわけですからね。

 しかも、そういう作品の場合、「最近のアルバム」はCD屋にあっても、たとえば旧譜はしっかりそろっているのでしょうか?僕の覚えている範囲でも、渋谷のタワーレコードのような店でも、邦楽の旧譜の置かれ方はそんなに良かった記憶がありません。ましてや、近くに大型店のない地方の人はそんな簡単に旧譜が手に入るのでしょうか。

そうなるともう、アマゾンで買うか、中古屋で買うかという世界かと思うのですが、手に入りにくい、しかも人気がある作品だと、普通、値段は高く付くものではないでしょうか。そうなると、中古といえども、なかなか大変になってきますよね。

実際、こういう例も聞きましたよ。

まあ、あくまでも一例ですけどね。

こういうことがあると、たとえばシティ・ポップなんて今、国外から日本二階に行く人がいる時代ですから、そういう人が高い渡航費払って、さらに盤そのものも高いんじゃ、本当に大変ですよね。サブスクあれば、そんなことしなくても、そのお金、他の生活費に回すことも出来るんですけどね。

④収益の交渉もなく、ただ拒否をするだけになる


 あと、「サブスク解禁をしないアーティスト」というのは、日本にだけ一方的に多い現象で、欧米圏にはもうほとんどいないもの、なんですよね。

 だって、欧米圏の場合だったら、「今のこのご時世に、サブスク解禁してないアーティストなんてほとんどいない」で当たり前なんです。解禁してないアーティストって、ぶちゃけもう、権利関係がうやむやになってる物故者くらいなものです。それでももう、ほとんどいません。解禁してなかったら、もうそのこと自体が話題になる。そういうレベルです。

 日本のアーティストの場合、サブスクのロイヤルティの低さを理由に挙げる声を小耳に挟んだことはありますが、じゃあ、海外のビッグ・アーティストがエコード会社にみんながみんな服従なのか、といえばそうではありません。

実際、2015年にはジェイZが多くのアーティストの協力と支援を得て、サブスク「TIDAL」をはじめたくらいですからね。TIDALの場合、アーティストへの分配は他のサービスよりもかなり良く、「アーティスト・ファースト」を考えるなら、実は一番いいサブスクです。これはブラジルでもあるので、僕も使っています。

ただ、さっきも言ったように、多くの国でサブスクが貧しい国でウケた背景もあってですね、このTIDAL、「アーティストたちはまだ金を欲しがる守銭奴だ」みたいな批判が飛んでですね、国際的に利用者が伸び悩んだんですよね。そう考えると難しい問題ではあるんですよね。

 なので、日本のアーティストもサブスクのロイヤルティに不満があるなら、自分で新しいサブスク・プラットフォーム作るくらいの勢いがあってもいいんですよね。それこそTIDALなんて日本上陸してない(するって噂あったんだけど、どうなった?)わけですからアーティスト・ファーストいうのであれば組めばいいと思うんですけどね。

 あとはやっぱり、交渉も必要なんじゃないかと思いますね。あと、交渉しないにしても、例えばある時期のトム・ヨークみたいに公にして問題提起するとかね。そういうことをやっているアーティストでも、最終的にファンの「聴く権利」を大事にする形でサブスク解禁してるわけじゃないですか。日本のサブスク解禁されない方は「CDやヴァイナルで聴きたい人の權利」は尊重してますけど、「サブスクで聴きたい」人の意向は残念ながら無視しているとしか云えないですよね。行動に移してもないのに。

⑤時代錯誤な「音質の問題」を言及し続けることになる


あと、「音が悪いからサブスクをしない」という意見もありますけど、これもサブスクの近況知っている立場から言わさせてもらうと、かなり時代錯誤です。

僕自身、サブスクに関しては音は懸念要素でした。itunesのどこか詰まったような真空パックみたいな音質が苦手だったからです。だから2016年から僕も本格的にサブスクはじめたんですけど、音質には徹底的にこだわりましたからね。

その結果、DEEZERとTIDALを僕は選んでですね。サブスクのビジネスしてる側も、リスナーの音のこだわりは熟知しています。なので会社ごとに音質を数値化して、見れるとこでは見れるようにもしてあるんですね。今言った名前のサービスだと、CDともう、ほとんど変わらなかったんですよね。それで僕も一気に使う気になってですね。

 これ、実際、音質にこだわって自分で高品質オーディオ開発しようとしたニール・ヤングみたいな人でもそうでして。この方もいまだにこだわってますけど、そんな彼でも、これ最近僕も知ったんですけど、アマゾン・ミュージックと、改良されたApple Music(昔ひどかったのに)とQobuz(ここの音、かなりすごいと評判です)をほめてるくらい、すごく進化している世界でもあるんですよね。いわゆるハイ・レゾルーション・サウンド対応ということで。

 だから、この「音質方面」からの反論も、サブスクのプラットフォームそのものの進化でだんだん出来にくくなってきています。その筋の専門家たちから一笑に付されるくらいのものになりそうな感じですね。

⑥渋谷タワー1個分以上の音楽宝庫の価値に気がつき損ねる

 あと、サブスクやってみて思うんですけど、すごいなあと思うのは、アプリ一つにあまりに膨大な音楽情報が詰め込まれていることですね。

 それひとつあるだけで、時代もジャンルも国籍もひとっとびで超えていけるわけですからね。だから、僕も実際にそういう人、何人も知ってるんですけど、サブスクの使い方うまい人は、これまでの日本の市場でフォローしきれなかったような国の音楽まですごく器用に聞けるようになっています。もう、申し訳ないですけど、その昔の渋谷のタワーレコードのワールド・ミュージック売り場では処理しきれないくらいのものすごい量がありますね。

 渋谷のタワー、8階建だったはずですけど、今、サブスクにある音源を借りに全部CDで売っていたらフロアいくつ必要になるんでしょうね。20〜30階くらい必要になると思うんですけどね。

 だから思うんですけど、フィジカルって、もう世に出た音源を需要に応えてとにかく置いていくだけではもう入りきれない世界になってたと思うんですよね。もう、オーバーロードもオーバーロードで。それを収めるには、サブスクのような無尽蔵な貯蔵庫が必要だったんだと、僕は思うようにしています。それで時代も国境も越えていけるんだったら、素敵なことだと思うんですけどね。

 そういう空間に日本の貴重な音源が入らないことは国際的に見て本当に悔しいことだし、日本人リスナーの多くがそのことに気がつき損ねるのも惜しいと思います。

⑦「音楽の匠だから、ロックンロールだから解禁しない」などと考えるような人が日本だけにしか存在しないことに気がつかない

あとですね、さっきから言っているように、もう世界的に「サブスク解禁しないアーティスト」というのがほぼいないわけです。「解禁しない理由」などというものは、もう国際的にもかなり見出しにくいものなんですよね。

 ところが日本見てみると、たとえば「あの人は音楽の匠だからな」だとか「やっぱロックンロールだからな」とか言って、サブスク配信しない人の気持ちを勝手に想像してるようなものをたまに見かけるんですよね。まあ、アーティストに対してのよくいえばピュア、悪く言えば盲目的な忠誠心がそうさせるんだと思うんですけど、そんな理由でサブスク配信しない人、世界にいません。

だから、その誤解解くためにもですね

日本でだけなぜか解禁がとまっているキング・クリムゾンの配信、再開して欲しいんですよ。

 別にロバート・フリップが匠だから配信しないとか、そういうのじゃ全然ないですから。ブラジル、全作品、何の問題もなく聴けます。ただ単に権利の問題かなんかだと思います。

 そろそろそういう、「アーティストの頑固なこだわり」みたいなものをイメージで美化して、これからの音楽リスニングの阻害要因にファンまでもが無意識に加担してしまうような感じになることはやめてほしいかなとは思うんですけどね。

⑧結局、「古き良き思い出」に閉じこもるだけになってしまう


これで最後にしたいと思うんですけど、サブスク解禁しない人、サブスクを利用しようと思わない人に僕が薄々感じていることがあります。

それは「レコード屋、CD屋の時代のいい思い出」、これが壊されるのが結局のところ嫌なんじゃないか、という気がしてます。

 たしかにこと、日本のレコード屋文化って、世界的にもすごかったですからね。東京都内とかだったら、もうすこしでも目立つような街だったらどこにでもそれなりの規模のレコード屋があったし、CDの時代は渋谷とか新宿、六本木、池袋とかだとマニアックだったり店舗規模が巨大な店、あったわけでしょ。

 そういう良い思い出が壊されるような気がして先に進めなくなってる人、結構いるんじゃないかと思うんですよね。僕自身も、サンパウロにCD屋なんてなくなっちゃいましたけど、2010年代のわずか最初の5年くらいしか接しなかった、日本のに比べると規模なんて全然小さかった店でもなくなった時にすごく寂しいくらいだったし。日本の場合、そんな比じゃないですよ。あの何店もあってにぎわったものがごっそりなくなるなんてなったら悲しくてやりきれなくなる人、多いと思いますからね。「あんなデパートみたいなすごい店、CDだけで建てたのに」とかね。あれ、国際的にもすごく珍しがられるくらいにすごいものでもありましたしね。僕とて日本にもう10数年行ってないですけど、どの地域のどの辺りに何の店があったか、何てはっきり覚えてますもん。それだけ愛着があるわけです。

 その影響なんでしょうね。僕もまだ、日本で買ったCD、だいぶ減りましたけど500枚くらいはまだ家にありますからね。もうCDプレーヤーもないのに(笑)。妻からは「聴けもしないものをなぜ持ち続けるんだ」と言われた時に「そのアルバムに詰まった僕の思い出が消えるような気がするからだよ」と答えたことがあって。だからこれ書いてても思ったんですけど、「ああ、あの頃のショップの文化がなくなるのがこわくて、それでサブスクに八つ当たりする人たちもいるのかな」とも思うわけです。それだけ80s、90sと文化が栄えすぎたわけですよね。

 ただ、だからと言って、前を向かない、過去に閉じこもってるだけでは何も解決しないし、国際的な音楽受容において置いてけぼりも食らうことになってしまうわけです。あと、「モノでもつ文化」そのものも、国際的にヴァイナルは増加状況にあるので、ショップの文化もそっち方面に転化させればモダンなアップデートも可能なわけで。うまく折り合いつけばいいのになと思っています。

・・・といった、ところでしょうかね。











 











































































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