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ロックもいまいちど「時代を定義する録音」にこだわる時代になるべきだ

どうも。

この1週間、これ、よく聴きましたね。

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はい。ロイヤル・ブラッドのアルバム「Typhoons」なんですけど、これ、とにかく音がすごくかっこいいアルバムです。

なにがいいって、このベースの低音の出力。これがとにかく、これまでのロックでほとんど聴いたことない感じだったんですよね。

これ、フレンチ・ハウスとかエレクトロのベースの音、そのものなんで。

今回のロイヤル・ブラッドのアルバムの曲、リズムだけ聞いて、「ポップな売れ線に走った」みたいに言う意見を、とりわけメタル大好きな欧米のロックファンが言うんですけど、とんでもないですね。ロック勢がそういうダンス方向に意識が向いた時って、いみじくもそうした表面的なリズムをなぞっただけの作品にはたしかになりがちだったんです。でも、さすがにロイヤル・ブラッドは世代的に若かったんですね。「実際のクラブでの重低音の出力」までしっかり計算に入れて音を作れているところがさすがだと思いましたね。

これ、たぶん、ヴォーカルのマイク・カーがベーシストなんで、特にそういうとこに気を使ったかな。もともとベースの4本弦をギター代わりに音出してた人なんで、そうしたところには敏感なんでしょうね。やっぱ、この人、そういうセンスは天才的ですね。

で、これ聞いて思ったんですけど

ロックもそろそろ「時代を定義する録音」というものに回帰すべき!

これはいわゆる「○○年代サウンド」ってやつですね。

そもそもロックファンというのは、元来、曲を聴いただけで、「これは○○年代の曲だね」というのがすぐわかるくらい、ロックの年代と録音の感覚が身についていたんです。だいたい、ギター・サウンドが年代の感覚とすごく結びついていましたからね。それが50年代から00年代までそうでした。聞いただけで年代がわかったものです。

ところが、2010年代のロックは、ギターそのもののイノヴェーションが全くなかったからなのか、00年代のロックをほぼそのまんま踏襲してしまった。いわゆる「パッと聞いて2010年代とわかる音」というものを定義させることができなかった。ここにも僕は、「2010年代におけるロックの低迷」の原因のひとつを見ています。

そこに今回のロイヤル・ブラッドのように、明らかにエレクトロやヒップホップのビートを意識した、太い重低音が提示された。これはすごく意義深いことだと思うんですよね。

こういう意識って

たとえば、デフ・レパードが80sを象徴する「ドゥ〜ン」っていう電気加工したドラムの音、あれをどう生んだのかを聞かれた時に「ヒューマン・リーグに負けたくなかったんだ」と、ドキュメンタリーの中で言ってるんですけど、そういう意識ですよね。一見、自分たちと領域の違いそうなところから刺激を受けて、自分たちの新しい音楽を作る。昔、ロックが当たり前にやってきた努力を今一度するべきなんだと思います。

ただ、ロイヤル・ブラッドとはちょっとやり方は違うんですけど、「そろそろバンドも”今のバンド・サウンド”というものに、またこだわりはじめてきだしたかな」ということは去年、2つのアルバムをきいたときに思ってはいました。



このストロークスとHAIMのアルバム聴いた時の、ギターのちょっとビリビリする感じ。ここに「工夫のあるギター・サウンド」を感じて、「ああ、ようやくギターの音が工夫されはじめたか」と思ってワクワクしたんですよね。その影響でこの2枚、僕の年間ベストではだいぶ上の方に入れましたけどね。

ストロークスは2000sのギター・サウンドを定義したバンドだけあって、さすがにそのあたりは敏感だし、HAIMのプロデュースを手掛けた元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムもそうしたところは意識的なタイプの人ですからね。こんな感じでロックがまた、「音をどう録って、どう新しい音を作るか」に意識がむきだすと、うまくいけば、この20年代がロックにとって良いデケイドになる可能性が出てくるかもしれません。


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