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(もう1回チャンスあるけど)ライブ以前の問題だったフランク・オーシャンのコーチェラ1回目

どうも。

やってましたね、この週末。コーチェラ。

以前から僕のブログ読んでいただいてる人には、僕がこのフェスに関してあまり優しくないことは知られているかとは思いますが、こと「世界に向けての配信」ということに関しては、「音楽ファンが一体になれるお祭り」な感じがあるので、嫌いではないです。ただ、「そのアーティスト、別のフェスでも観れるのに、もっといいラインナップのインディのフェスで褒めて欲しいなあ」とか、「結局はビルボードのシングル・チャートの上位いく人気者にだけ注目してる、昔のこのフェスの歴史知らないお客さんが大半になってるに過ぎないよ」とかの気持ちがあるからネットの前に張り付いて見たりはしてません。

今年も数を絞って、1つ、ないし2つだけ見ようかなと思ってました。一つはバッドバニー。これは当たりでした。彼、声がライブで力強い上に、
プエルトリコの音楽の歴史を大観衆の前で紹介し、それへの深いリスペクトを捧げてましたからね。ラティーノ初のヘッドライナーとしての責任背負った感じがしてかなり好感持てました。メタリカの記事の追い込みで見れなかったロザリア(彼女に関してはロラパルーザのレポートで紹介済なので、そちらをぜひ!)と合わせて、ラテンのウルバーノ(アーバン)・ミュージックの現在の勢いと実力見せつけてたと思います。

 そして、もうひとつ見たかったのがフランク・オーシャンでした。といっても、「怖いもの見たさ」の方が先行してて、まず「良いかどうか確認して、良ければ継続してみよう」と、「お試し」モードでした。

というのは

2013年のグラミー賞でのパフォーマンス。これがもう、とにかくガッカリで。声が出てない上に不安定でね。自信もなさそうで。彼、スタジオ内というか、自分のレコーディング環境だと、妙に芸の細かい緻密なサウンド・プロダクションくりだせるのに、それをライブの場でどう転換させるかまでのアイデア、ないし、おそらくそこに興味がないのかな、と言う印象でした。

そのあと、2016年にかの名作「Blond」で、より密室性の高い、「世界一高価なデモテープ」みたいな、生な手作り感と最新鋭の技術駆使したテクノロジーの美学、そして凝りに凝ったコード進行を駆使した高洗練のポップソング、この3つが絶妙に混ざり合った、もう人種も時代も超えた圧倒的な世界観を作り上げました。

ただ、それも果たして彼はライブで表現気があるのか。いくつかパフォーマンスの記録こそ残ってはいるものの、それがなかなか伝わっては来ず、「そこんとこどうするんだろう」と思っているうちに沈黙が6年続く・・・という感じでした。だから今回、彼が「コーチェラ」という世界で最も多くの人が見るフェスにヘッドライナーとして出ると聞いて驚くと同時に「できるの?」という不安感も頭をよぎっていたものです。


ですが

結果的に「不安」の方が的中してしまいました


もしかして耳にされている方もいらっしゃるかと思いますが、ライブは酷評です。

が!

今回は、もう、ライブそのもの以前の問題です!


もう、ステージに立つ前からの問題です。そのことを過剰書きにして説明しますと。

①ライブ配信が命のコーチェラで、ヘッドライナーなのに配信ドタキャン


これがまずありえません。今、コーチェラと言ったら、現地でのライブ以上に、世界の人に同時配信するのが売りのフェスティバルです。音楽業界に身を置く人がそれを知らないわけがないし、ましてやヘッドライナーを引き受けるのは「それこそが前提」なわけじゃないですか。ブラジルで「ロック・イン・リオ」という80年代から続くフェスも、テレビ中継が前提のフェスで有名で、それを2019年にドレイクが中継拒んだだけで、「もう絶対許せん!」の空気が生まれたものでした。それが世界相手のコーチェラならなおさらです。「だったら、なんで引き受けたんだ?」の疑問がここでまず生まれます。

②フェスの最終日の夜に客を1時間待たせた


僕が一番許せないの、ここですね。「見たわけじゃないのになぜ怒るんだ」という人がいますが、その場にいなくとも、「フェスに行く」という行為を毎年やってる人間として、この立場を思いやらないわけにはいきません。
コーチェラって、まず「地元民」としては見れないものです。カリフォルニア州インジオってところにあるわけですから。交通に時間かけて、暑い気温の中、3日間立ちながら見るわけでしょ。それの3日目の夜遅くですよ。疲れとしては普通に考えてピークですよ。そこを、普通、かっちり時間決められてるはずのフェスでお客さんを60分待たせた。これは由々しき事態です。


③ライブが途中で切られて終わった



ここもダメですね。

ライブのお客さんって、どんなに開演待たされても中身が良かったら満足するものです。

たとえば、ガンズ&ローゼズいるでしょ。彼らもそれくらいは平気で待たせます。僕自身、サマーソニックの2002年、あれはそれくらい待ったはずです。2011年だったかな、テレビ中継で見たロック・イン・リオでもそれくらい待たせてました。ただ、いずれの場合も、「それで時間が短くなった」ことを感じさせないくらい、本編も長かったんですよ。

 あと、僕はエイミー・ワインハウスの死の数ヶ月前のサンパウロ公演というのも見てて、そのときもそれくらいは待たされてます。さらにいうと、序盤はひどかったです。ところが、鼻をすすったところ、そこから調子があがって、あの名唱は、もしかしたらベストなものではなかったかもしれないけど、聴けたんです。その時も1時間は見れたもので、それでも「短い」と文句を言う人はいました。

 そこをフランク・オーシャン、演奏を途中でカットされて時間切れで終わってます!ちょっと僕の時間の計算まちがいで分数は書き直しますが、いずれにせよダメです。

さらに

現地で見た日本の方からも、こうした具体的な証言があります。ここまで網羅した映像は見てないのですが、わざわざ見に行かれた方が露悪的に書くことは考えにくいですけどね。

さらに

④パフォーマンスの中には、ひどいリップシンクも


そのパフォーマンスの中には、このように、マイクさえ持たなかったリップシンクまでありました。これはtik tokでバラされ、一気にネットに拡散してギャグのネタにさえなってました。

「何言ってんだ。ちゃんと歌ってたときもあったぞ」という反論を見てますが、「それが当たり前だろ(苦笑)」な話でしかないです。こういうものが含まれている時点でダメだし、ましてやそれが1時間遅れて短くなったライブでこれがあってはダメです。

「こんなに客が途中で去っていくフェスのヘッドライナー、初めて見た」という現地の声を聞いてますが、僕もそこにいたら同じことをしたでしょうね。

⑤客からあがっていた「He hates us」の声


あと、僕自身も実際にその言葉をツイッター上で見かけたんですけど、現地に見に行った人たちから「He hates us(彼はうちらのこと嫌いなんだ)」という言葉が、キャッチフレーズのように聞こえてきてましたね。

これ、本当にかわいそうですよ。だって、さっきも言ったように、地元民としてはいけないライブですよ。航空運賃も払ってはるばる見に来てる人がほとんどだと思います。フランクの場合、「6年待った!」と言って来てた人もtik tok見たらすごく多かったです。中には「そんなに待ったのに、なぜハイライトが警備員の腰振りダンスなんだ!」といって動画をあげていた人もいましたよ。そう思うと、やるせないですよね。

場合によっては、国境を越えてまで見に行った人もいたわけです。いわば、「世界でもトップ・クラス」のファン。彼はそれを裏切ってしまったわけです。

⑥その場にいただけ、まだマシだけど


唯一、救いがあるとしたら、

このロラパルーザ・ブラジルのときのドレイクのように、キャンセルを発表した当日の朝にアメリカに帰国していた、よりはまだマシなのかなと。その場に「少なくとも存在はした」わけなので。

だからこそ、「いや、ひどいなんて嘘だ。すごいライブじゃないか!」なんて言ってる声、たまに見ますけどね。まあ、そのセリフが疲れてる中で60分待った上でもそう言えるものなのかな、とは思いますけどね。

まあ、せめて、その才能の片鱗をどこかに感じさせる痕跡をまがりなりにも残したことはたしかでしょう。ただ、僕が見る限り、歌唱力そのものはグラミーで見た時とそんなに変わってないし、「新しいアレンジをほどこした!」といっても、それがライブ全体でそんなにアピールするものとは思えないし。まあ、それだけ「信じたい!」と思わせる魅力が元からあるアーティストではあるんですが、ここまで見た感じだと、ライブにはそこまで期待しないほうがやっぱりいいのかなあ、とは思いましたけどね。

それ以前に、ライブを人に提供するアーティストとして、最低限のマナーも守らなかった人に対して、見えないものまで見ようと評価する姿勢って、宗教詐欺にあったのに頑なに否定する信者みたいにも見えかねないので、あまり行き過ぎるのは個人的にはおすすめできないです。まあ、音楽にそういうマジックがあることは僕も認めはしますけどね。

⑦本人はリターン・マッチの意向あるみたいなので

フランク本人は、「何日か前に足を怪我して」とか「弟の死が」みたいなことを言ってて、それは気の毒だなとは思うんですけど、それも、②から④で書いたパフォーマンスに至る理由にはなりません。まともにパフォーマンスしようと思えばできることですからね。腰の骨折っても普通にライブしてたテイム・インパーラのケヴィン・パーカーに比べたら、少なくとも歩いて、飛び跳ねる光景まで見せていたわけなんだから。

 それでも本人、罪悪感があるのか、先のパフォーマンスで直前でプラン変更して採用を止めたアイス・スケート・リンクを作り直して、今度の日曜の2回目のパフォーマンスやる予定なので、もう1回チャンスは与えていいのかなとは思いますけどね。ただ、そこでもしくじったら、ポップ・ミュージック史の汚点にさえなりかねないので、頑張って欲しいですけどね。



















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