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沢田太陽の2020年間ベストアルバム 30-21位

どうも。

では、沢田太陽の2020年間ベストアルバム、続いていきましょう。今度は30位から21位。

このようになりました。

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はい。

いいアルバムばかりです。早速、30位からいきましょう。


30.Imploding The Mirage/The Killers

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30位はザ・キラーズ。もう、キラーズといえば、世界のフェスでヘッドライナーをつとめないことがまずありえないくらいの大物バンドになっているわけですが、こと、アルバムで言えば、今回のレベルでよかった最後のアルバムは2008年のサード・アルバムですね。キラーズとしては、ちょっと不調が続き、2017年の前作が非常によくなかったので不安になっていたのですが、なんとか持ちこたえてくれました。契機はバンド内の危機感ですね。前作の際にギターのデイヴ・キューニングとベースのマーク・ストーマーのツアー不参加。今作でマークは帰ってきたもののデイヴは不参加。さらにフロントマンのブランドン・フラワーズの奥さんがうつ病。バンドのセールスも右肩下がりという状況の中、ブランドンがヴァンパイア・ウィークエンドのアルバムを聴いて一念発起。今作は「従来のキラーズらしさ」にこだわったものではなく、彼自身のソロ作に回していたカントリーやフォークの土着的な要素もキラーズに惜しみなく投下。その結果、ABBAとスプリングスティーンの融合というか、ヨーロッパとアメリカの旋律の美学が融合した深い作品となりました。もともと「単なるシンセ・ポップ」を超えた存在ではありましたが、深みが増したと思います。ここから巻き返す気がします。

29.A Written Testimony/Jay Electronica

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29位はジェイ・エレクトロニカ。フレディ・ギブスのところでも言ったように、今年のヒップホップは「親父の逆襲」が目立つのですが、その第2弾は44 歳のニューオーリンズのラッパー、ジェイ・エレクトロニカ。この人、2000年代の終わりくらいからフィーチャリングでいろんな人の作品に参加してたのですが、自分のオリジナルのアルバム制作になかなかたどり着いてなかったのですが、本作でとうとう43歳にしてのデビューとなりました。もう、流行りとかそうしたものを気にしなくて良い年齢ということもあるのか、ここでのサンプリングにこだわったトラックがまず秀逸です。60年代のフランスだかイタリア映画のムーディなメロディから、クール・ジャズのサイロフォンの響きなどパーツの選び方がかなりスタイリッシュなんですが、そこに黒人の誇りをブラック・ムスリムやラスタファリの観点も加えながらジェイが語りかけていきます。また、プリンスやケイト・ブッシュ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」といったカルチャー・レファレンスのセンスも粋です。そんな彼を、契約したレーベルのボスでもあるジェイZが複数の曲にわたって全面バックアップ。ジェイZの音楽のクリエイティヴィティに対してのこうしたバックアップは僕は本当に好きですね。


28.Fake It Flowers/Beabadobee

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28位はビーバドゥービー。ロンドンに拠点を置く、ビリー・アイリッシュと1歳違いのフィリピン移民の20歳の女の子のメジャー・デビュー作です。ここ数年、「インディ・ロックの担い手は女の子」の現象が目立ってきてましたけど、この子はその決定版とでもいうべき感じですね。90sのシューゲイザーやオルタナといったサウンドだけでなく、あの当時のオルタナのミュージック・ヴィデオやファッションのセンス、Tシャツとかワンピースとかヘアダイとかに顕著ですけど、知的におしゃれに表現する術にものすごく長けてますね、彼女は。曲の方も、シューゲイザー、ドリームポップ的な透明感や浮遊感をまといながらも、決めのフレーズでスマッシング・パンプキズや曲によってはアヴリル・ラヴィーン的なポップな掴みを見せるうまさがある。そしてなにより、ささやき気味に歌う声がちょっとかすれる瞬間な甘えた感じの声が絶妙にセクシーです。こういうことを彼女自身がすべて自分でコントロールして表現できているとしたらかなりの才能ですが、天然にそれができているような気もします。全英5位でも十分成功ではありますが、もっとスター・ヴァリューのある子だと思います。

27.Powers/羊文学

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そして27位に羊文学です!この年間ベスト、今年で4回目なんですけど、いわゆる邦楽アーティストを入れるのは彼女たちが最初になります。これまでミツキや今回のリナ・サワヤマみたいな、外国育ちの日本人なら入れてきていましたけど。これもSpotifyの発達のおかげです。そして、この羊文学ですが、もう、最近の日本のバンドの中でも実力、段違いですね。もう、単なる「センスがおしゃれなバンド」の粋をはるかに超えた実力があるといいますかね。シューゲイザーのバンドとしてすごく洋楽のインディ・バンド並みに洗練された曲を書くことは確かなんですけど、塩塚モエカのヴォーカルが立体感ありますね。他の女の子だったら力んでキーンってなりそうなところで息を抜くことで声に幅を持たせ、ときによってそこからとんでもないハイトーンを繰り出したりもできて。加えて、ギターの儚げなゆらめきに耳が行きがちなシューゲイザーにあって、すごくリズム・パターンが複雑でいろんな曲調に対応できるんですよね。それを可能にしているリズム隊の二人も見事です。前から名前聞いてたのでその印象なかったのですが、これがメジャーでの最初のアルバム。それにして、このバンドとしての完成度の高さ。シューゲ志向するインディバンド、欧米でも多いんですけど、そういうとこに混ぜても堂々渡り合える実力あります。でっかく勝負して欲しいバンドです。

26.BE/BTS

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そして26位にBTSの「BE」。これでKポップふたつめのランクインですね。去年まではゼロだったんですが。これはバンタンにとって、今年2枚目のアルバムで、かの「Dynamite」が収録されているものです。あの曲はインディ・ロック聴くような人にもすごく人気があるので、ここからBTSを聴き始めた人も多い作品ですね。そして、ここからバンタンはひとつの大きな転機を迎えます。曲調がとうとう、これまでのようなベースを主体とした、Kポップのソングライティングの中心にあった、アメリカのR&B的な作りから離れて、ギターやキーボードのコード進行から曲を作るパターンにこれ、変えてきてると思います。これ、すごく意識的にやってると思うんですよね。聞こえ方がすごく変わってきています。そして、今年1年、コロナで多くの音楽家がパフォーマンスできない中、彼らは積極的にテレビ出演していろんなパフォーマンスを披露して、退屈かつ不安な毎日を暮らしている全世界の人たちを楽しませてくれましたけど、このアルバムは、そんなコロナの日常を生きる人たちにポジティヴな勇気を与えるメッセージ・ソングばかり。彼らのこうした姿勢も、間違いなく愛される秘訣だと思います。

25.Minisode 1 : Blue Hour/Tomorrow X Together

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そして、年間ベストの順位折り返し地点の25位に、トゥモロウ・バイ・トゥギャザーことTXTのEPを。彼らはBTSの弟分として去年デビューしたんですけど、すごくポテンシャル持ってますね。バンタンみたいな、ひとりひとりに特殊すぎる才能みたいなものこそまだ見当たりはしないんですけど、歌ってる曲のセンスが早くからKポップ離れして、すごく異色なんですよね。それが顕著になったのが10月に出たこのEPです。冒頭の「Ghosting」に関しては「スーパーカー?」と呼びたくなるほどのシューゲイザー風の完全なるインディ・ロックですよ!彼ら自身、「ニュー・ゲイズ」と呼んでいたので、ビッグヒット・エンターテイメントのソングライティング・チームが作ったこの曲の狙いは把握できてますね。他にも「Dynamite」継承路線のディスコから、エモ・パンク、さらにはフランク・オーシャン以降のネオ・ソウル路線まで、Kポップの域を超越した音楽オタク度濃厚の曲群が並びます。これが出た後に先ほどの「BE」が出たわけで。僕はここからがビッグヒットのその後の方向性のはじまりだと解釈してます。スケールのデカさが違います。

24.Deep Down Happy/Sports Team

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24位はスポーツ・チームのデビュー・アルバム。今年、UKロックは、夏を迎えた以降から、チャート・アクション目ざましかったんですけど、その先陣を切ったのがこのアルバムでした。なにせ、ズブの新人バンドがいきなり、相手は2週目だったとはいえ、レディ・ガガに勝って初登場1位になりそうだったんだから。そこから勢いついたんですよね。彼らも面白い人たちで、ガガとのチャート争いでもそうだったし、その後、フォンテーンズDCやデクラン・マッケンナが1位争いした際もネットで応援煽ってましたからね。その彼らのこのアルバムですけど、もう、すごいど正当なインディ・ロックといいますか。ブラーとかパルプみたいな、90sの神経症的なブリットポップにペイヴメントとかピクシーズのエッセンスが加わった感じですね。それでちょいと70s初期のボウイみたいなグラム・ロックンロールもあり。とりわけ、フロントマンのアレックス・ライスのトーキング調の煽りヴォーカルが持ち味です。これ、パッと聴き新しさはないんですが、曲が本当によく書けてるので回数重ねて聴くのがオススメです。なんで支持されてるのか、そこでわかるようになります。調べたら、この人たち、ケンブリッジ大学の人たちなんですね。どうりで理屈っぽい、人を食ったユーモア・センスがあるわけで、チャート争いの時のユーモア交えた立ち居振る舞いとかも納得です。すごくアウトスポークンで頭の切れるバンドなので、ちょっとこの先、注目した方がいいと思います。

23.Rough And Rowdy Ways/Bob Dylan

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23位はボブ・ディランの「Rough And Rowdy Ways」。御年79歳になるディランですが、創作意欲、全く衰えません。それどころか、もう80に手が届こうとしているのに、ロックとしての強度がむしろ上がっているようなそんな感じさえしますね。今、ちょうどコロナでツアーなどできませんが、この年になっても尖ったままロックするディラン、見てみたいですよね。このアルバムは、いわゆるカバーものとかを除けば2012年の「Tempest」以来のオリジナルになります。作風としては、基本的には2001年の名作「Love And Theft」以降は基本は一貫していて、ちょっと歪みのあるアンビエントな音像の中に、1920〜30年代のラグタイムやら初期のフォーク、カントリーのエッセンスをロックンロールのリズムに取り入れた感じなんですが、今作はメリハリいいですね。感傷的なフォークと前のめりなブルージーなロックンロールがうまく交錯してて。歌詞の方はホイットマンやメアリー・シェリーといった文学者の引用が多用され、パッと読みで解読が難しいですが。ただ、そんな中でも今作の最大の聴きものは16分にも及ぶ、21世紀ディランの最高傑作の呼び声高い、ジョンFケネディの暗殺を語った叙事詩「Murder Most Foul」が収められていることですね。これがあるだけでも、十分後期キャリアを代表している作品と思えます。

22.Circles/Mac Miller

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続いて22位はマック・ミラーの遺作「Circles」。このアルバムは2018年、ドラッグのオーヴァードーズで突如26歳でこの世を去ったホワイト・ラッパー、マック・ミラーが生前に録り溜めていた前作「Swimming」と遂になるはずだったアルバムを、前作で重要な役割を果たしたプロデューサー、ジョン・ブライオンがトラックを完成させて世に出たアルバムです。「Swimming」は僕もすごく好きなアルバムで、2018年の年間ベストで元カノのアリアナ・グランデのアルバムと並べる形で26位(アリアナが25位)にしたんですけど、もう、本当にこれ聴くと、「アーティストとして何皮も向けるはずだったのに」と思わずにいられませんね。前作の時点で、Jコールからの強い影響を語っていたように、よりオーガニックで肉感的な表現に目覚めていて、トラックもそうだし、彼自身の表現もよりヴォーカルに近づいてはいたんですけど、ここではエイミー・マンやフィオナ・アップル、数々のインディ系映画のサントラでおなじみのブライオンの優美な管弦楽アレンジとアナログシンセやピアノの華麗なコード進行と、いい意味ですごくやさぐれ感の強いマック・ミラーのヴォーカルで、シンガーソングライターへと進化する一歩手前のところまで行ってます。本当にこの続きが聴きたかったものですが、そんな彼の成長に一途な姿はずっと語られていくはずです。

21.Songs/Adrianne Lenker

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そして21位はエイドリアン・レンカー。ビッグ・シーフのフロント・ウーマンのソロ作ですけどね。この人、本当に多作で、毎年のように、ソロかビッグ・シーフで出してますよね。去年はビッグ・シーフで2枚。両方ともこの年間ベストで20位以内に入りましたけど、バンドでそこまで忙しく出したのに、もうソロで今年また入ってきました。今回は入れませんでしたけど、今年はこのアルバムと同日にインストゥルメンタルのソロ作も出してますから、ものすごい創作力です。今回のアルバムはコロナ禍で家にこもっているとき、そのときに彼女はちょうど失恋もしたんですけど、そのときの内省的な気持ちで曲が一気に書けて、マサチューセッツのスタジオで3週間でできたアルバムとのこと。で、これ聴いても思うんですけど、この前のソロもそうだったし、ビッグ・シーフの「UFOF」でもそうだったんですけど、彼女、楽曲がより個人に近づけば近づくほど、どんどんトム・ヨーク化するんですよね。もともと、曲で使ってるコード進行がトムのそれに近いのが一番の要因だと思うんですけど、歌い方が不安定になって声が上ずってしまうとこまで似てますね。もう「後継者」のレベルです。こういうのが3週間くらいで衝動で作れるところを見ると、もう、この時代の女性のシンガーソングライターとして頭から数えた方が早い才人だと思いますね。


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音楽ジャーナリスト。90年代にNHK-FMで番組を制作した後、99年よりフリー。2004年にインディ・ロック・マガジン「Hard To Explain」を立ち上げる。2010年よりサンパウロに移住。同年に洋楽・洋画・海外ドラマ専門ブログ「THE MAINSTREAM」をはじめる。