見出し画像

「ストリーム時代に世界で本当に聴かれているアルバム」 21世紀編③2010年代の変革

どうも。

では、ご好評いただいている連載「ストリーム時代に世界で本当に聴かれているアルバム」、今日がラストになります。

 今回はいよいよ2010年代、ストリームがはじまって以降の話になります。この10数年に音楽の世界で一体何が起こったのか。今日も前日に続いて、6章構成で迫ってみようと思います。


①アイドルがアルバムで本気にされる時代


2010年代に入って最初にする話題はアイドルですね。まさにこの年にジャスティン・ビーバーのブームがあって、彼のアルバムが1億ストリームの曲を8曲以上も抱えます。そして、それが向こう10年で3作も生まれます。

これって快挙なんですよ。だって、これまで、アイドルっていったら短命で、かつ、「アルバムでは聞かれない」というのがどこの国でも定説だったから。

だって、日本でアイドルで「名盤アルバム」なんていうと、アイドル・マニアのあいだでのまにあっくなトピックでこそあれ、世間一般で議論されるトピックではないでしょ?それと同じことは洋楽でも同じです。

たとえば、2000年に出たインシンクの「No Strings Attached」ってアルバムがあるんですけど、リリース当時、200万枚という、当時のCD売り上げの1週間での新記録作ったんですよ。

そのアルバムが今、Spotifyでどうかというと、1000万ストリームを超えた曲、わずか4曲ですよ!もっとも3曲は1億超えてますけど、それ以外は弱い曲になると300万ストリームくらいしかない。仮にも世界記録作ったアルバムの曲が、ですよ。

 実はこれ、インシンクだけじゃなくて他のアイドルでもそうです。ブリトニーでも、他の時代の一斉を風靡したアイドルでも同じことが起きています。

これ、リスナーの構造上の問題だと思うんですけどね。アイドルの場合、購買層のメインが小・中学性でしょ?まだ、その年頃でアルバムの意識が低いし、有名な曲だけ聴いて喜んでそのままになるってことが、他の世代よりはたしかに起こりやすいんですよね。アイドルの音楽的成長を妨げていたのは、そうした未成熟なファンにもあったと僕は思ってます。

 ただ、「アイドルと言ってなめないほうがいいぞ」と思った瞬間が僕にもありまして。それが2000年代のジャスティン・ティンバーレイク。それこそインシンクのリードシンガーですよ。彼がプログレッシヴなR&Bやりはじめてからは僕も割と積極的にアイドル聴くようになりましたからね。

 ジャスティン、アイドルの曲をアルバム全体でコンスタントに1000万ストリーム稼げるアーティストにはなりました。ただ、全盛期に運がなかった。一番いい時期に、サブスク時代じゃなかった!それがゆえに、微妙にストリーミングで損してるんです。そこがドンピシャに当たれば、1億ストリーム当たり前のアーティストになってたような気がするんですよね。

 そこで恩恵を受けていたのが

間違いなく、ビーバーとワン・ダイレクションでしょうね。どっちとも、「アイドルだからってなめないほうがいい」という、アイドルに対しての見方に好転した空気が生まれる中で人気を獲得。さらにサブスクの時代ということで、キッズのアルバムへのアクセスが非常に楽になった、その恩恵を受けたと思いますね。

 だって、CDの時代、幼い子が自分でレコード店まで行ってある程度の代金払わないと買えないものだったじゃないですか。それが親が支払ってくれるケータイ代で、聴き放題で簡単なそうさで聞けるわけでしょ?距離、圧倒的に縮まったに決まってるじゃないですか。これで、ヒット曲しか興味のなかったような子がアルバム聞きやすくなったと思うんですよね。

 そして、この恩恵は、

マイリー・サイラス、セレーナ・ゴメス、デミ・ロヴァート、ジョナス・ブラザーズといったディズニーにアイドルにも恩恵がもたらされます。

 彼ら、ブームはストリーム直前の0年代末期で、そのときはいかにも子供なイメージだったので典型的な「シングルしか聞かれない」感じだったんですけど、脱皮作を図る時期がちょうどストリームの最初の勢いある時期と重なったんですよね。それによってファンがこれまでのアイドルにつきものだった「卒業」をしないでついていくようになった。ここが大きかったですね。

それによって

マイリー、生き残っちゃって、今がありますからねえ。

これに、

本当に歌がとびきりうまいアイドル、アリアナ・グランデがだめ押しした感じですね。僕、彼女が出てたニッケルオデオンの子供ドラマ、たまに見てたんですけど、あんなにデカくなってびっくりですね。

②短命ながら、良くも悪くも意味はあったEDM


そして、2010sの前半がEDMのブームですよ。前回にデヴィッド・ゲッタのアルバムとカルヴィン・ハリスの2012年のアルバムが1億ストリーム8曲以上のアルバムになったと言う話をしました。

実はエレクトロでそこまでデカくヒットしたアルバムって、後にも先にもこれしかないんですよね、ストリームだと。

「あれ?ビッグビートのブームのときは?」って思うでしょ?たしかに90sのあのブームって音楽シーン的には大きいんですけど、あの頃で「1000万ストリーム8曲以上」の時点で、モービーの「Play」しか達してなくて、あとエールの「Moon Safari」が7曲で惜しかったくらい。ケミカル・ブラザーズ、プロディジー、ファットボーイ・スリム、アンダーワールド・クラスだと、多くてアルバム中5曲とか、そのくらいなんですよね。それが、全く同時期に活躍したエレクトロのカリスマ、エイフェックス・ツインなんて、もっとないです。悲しいですが。

おそらく気を吐いてたのって

ダフト・パンクだと思うんですよね。この2013年の「Random Access Memories」で1億ストリームの曲5曲、あの松本零士でおなじみ2001年の「Discovery」で同じく4曲。やはり、影響力はめちゃくちゃあったと思うんですよね。

ただ、ビッグビートの四天王でもダフト・パンクでもなく、EDMのキングがゲッタとカルヴィン・ハリスになってしまった。それに続いたのもAvicii、Zedd、チェインスモーカーズとかでしょ。やっぱ、そのあたりでちょっとがっかりなところは批評的名盤がたくさん生まれたエレクトロ体験してると、「う〜ん」なところはありましたね。やっぱライブでの、盛り上げのためのギミックとか体験してみると。

 でも、このブーム、語るべきところはあるんですよね。ひとつは、ロックファンをたくさん奪ったとこ(苦笑)ですね。エモ・キッズがエモのブームの終わりと共にすごくEDMに流れてるんですよね。スクリレックスみたいなエモから転向したDJも実際いたわけですしね。一時期、ファッション的にもすごくかぶってましたしね。

 ただ、EDMがあったおかげで、前回触れた新進の女性アーティストや、アイドルが存在感を示す場面が増えた。これは確かなんですよ。R&Bやヒップホップだと、フィーチャリングがどうして黒人アーティストの方が多くならざるをえなかったかけど、EDMなら非黒人のシンガーが絡みやすかった。この点で得した人、結構いたような気がします。

ぶっちゃけ

ホールジーやデュア・リパといったあたりは、EDMでフィーチャリングされた経験が、かなりキャリアのステップアップとして機能したと思いますものね。

③新世代の草の根からの台頭で、R&B/ヒップホップが再び活性化し覇権へ


そして、R&B/ヒップホップです。

ここであえて「再び」と言ってるのは、正直な話、2000年代後半から10年代初頭にかけてのメインストリーム・ヒップホップでそこまで活躍した印象がないからです。ある時期、ヒップホップで目立つのカニエだけになってたときがあるし、それこそピッチフォークでヒップホップのレビュー、あまり見なくなってたときでもありましたしね。特に00sの後半は。チャート的にもEDMに押されてましたからね。

ただ、その形勢がかわりはじめたのが2010年ですね。きっかけは、やっぱこれじゃないかな。

カニエ・ウェストの「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」。これがピッチフォークが10点満点とったときでしょうね。あの頃、インディ・ファンの知人、みんなピッチフォーク見るようになってた時期だったんですけど、これが満点取ったことで、「おお〜、あのピッチフォークがそういうのだからよほどのことだ」となった人、多かったんですよね。僕の知人でも、これまでヒップホップなんて全く縁遠い、インディ・ロックしか聴くイメージなかった人までが聴くようになりましたからね。

 ここを皮切りに、ニューカマーのイメージと登場タイミングがことごとく良かったんですよ。カナダはトロントからドレイクとウィーケンド、LAのヒップホップ・コレクティヴのオッド・フューチャーからタイラー・ザ・クリエイターやフランク・オーシャン、LA郊外のコンプトンからケンドリック・ラマー、シカゴからチャンス・ザ・ラッパー・・と出てきた。

この出てき方って、ローカル・シーンとアンダーグラウンドでしょ?インディ・ロックファン、大好きなパターンなんですよ。「おおっ!下から盛り上がってきてるシーンがあるじゃないか!」という感じで。

また、これ以前が、あまりにもメジャー主導に頼りすぎた感じになって、ローカルとかアンダーグラウンドとか、そういうのが見えにくい感じの印象もあったし、だからこそ停滞して見えたのも事実だと思うんですよね。ミッシーとアウトキャストとジェイZとエミネムが同時に消えたくらいのときですね。あれは痛かったし、僕も積極的にヒップホップ聞かなくなった時期と重なってます。それ以来にシーンが活気ついたことは事実だと思います。

で、2011年から16年、17年も含めてもいいかな、そこから毎年、歴史的な傑作が生まれてきて。それと同時に、BLMみたいな人種問題をめぐる社会運動も生まれてきて。その意味で、ソウル・ミュージックの全盛期と公民権運動が重なった60年代後半とか、ロス暴動とギャングスタ・ヒップホップとスパイク・リーの映画が重なった90年代の初頭とか、そのあたりと比べても遜色ないような空気ってたしかにあったんですよね。

それはやはりこのあたりを頂点に。

やっぱケンドリック・ラマーの「To Pimp A Butterfly」とビヨンセの「Lemonade」は不可欠ですよね。社会的な名盤というか。あとJコールとチャイルディッシュ・ガンビーノの作品にも、そうしたソーシャル、カルチュアルな意味で大事なものを感じますけどね。

ただ、ここまでのアルバムが、カニエのもそうなんですけど、1億ストリーム8曲には至っていなかった、というのも不思議なオチなんですけどね。

 ただ、そのいい雰囲気が、ちょっと10年代後半に鈍ってきたのが残念ですけどね。やっぱ、トラップとエモ・ラップで。このあたりも初期は面白かったんですけど、やっぱり気軽に参加できる敷居が低すぎることと、ブラック・ミュージックに伝統的にありがちな、商売性重視の類似作品の大量生産と。「あ〜あ、90sも00sも結局はそうだったよ」という感じが、リスニング経験長いとどうしても感じちゃうんですけどね。とりわけエモラップあたりだと、あれ、ヨーロッパでもすごく流行って、それこそ非黒人的なウケ方もしてるんですよね。「ユニバーサルにアピールした」という意味ではなく、「ブラック・ミュージック、よくわかってなさそうなセンスの人にウケちゃった」みたいな感じで。

 まあ、いずれにせよ、ポップ・ミュージックが本来あるべき成長の仕方でシーンの覇権まで奪って、ブラック・ミュージックをついに「アルバムで聞かせるべき音楽」として認知させるところまで行ったことは大いに評価しますけどね。

④インディ・ロック失墜の理由


あと、昨日の①で、「インディ・ロックはフェスもあって安定してる」と書きましたが、2010年代の半ばに、かなりの失速をしてしまった話をしましょう。

ひとつは、ロックがそもそも持ってた多様な要素が切り分けられるようになりすぎちゃったんですよね。ただでさえ、00年代にはニュー・メタル切ってハードなサウンドから離れたり、フォークやソウルでアダルトなものはロックとしてカウントしなくなってた。あと、低年齢層に人気だったエモを実際にフェスで締め出したりもしたし。それから、日本だとわかりにくいですけど、カントリーに、80年代までだったら「アメリカン・ロック」なんて言われてロックで十分人気だったブライアン・アダムスみたいなサウンドが完全にそっちに吸収されていってしまった。

そういうことをやりすぎていってしまうと、ロックの表現の可動域が狭まってしまって、結局、「こういうのが理想的」と型先行になってしまって、本当に個性的なものがウケにくくなるし、サウンドも画一的になってしまうんですよね。

そんな状況だったのに、ピッチフォークときたら、華があって売れそうなバンドをやたら攻撃してきた。こんなことやってったら、売れるもの、どんどんなくなっていくんですよ。キラーズとか、キングス・オブ・レオンとかですね。正直、「この人たち、なんでこんなことやってるんだろう」と思ってました。それで代わりに推してたバンドが売れるんだったらいいけど、Best Coastだ、Real Eatateだ、Japandroidsだ、Cloud Nothingsだ、って、「こんなの推したところで売れねえよ」と思ってたら、本当に売れなくて。どんなに頑張っても、アルバムの中に1000万ストリームの曲が2曲ぐらいが限度。やっぱ、決定的に華がなかったよですよね。

 逆にもう一方では、アメリカのラジオ局が人気者にしたいバンド、これに一貫性がなかったんですよね。

 2010年代、前半は割とインディ・ロックのヒット曲、あったんです。マムフォード&サンズとかブラック・キーズとか、ケイジ・ジ・エレファント、フォスター・ザ・ピープル、ルーミニアーズ、ホージヤー。どれも、今も、曲口ずさむと「あ〜」ってなって懐かしむ人、多いんですよね、このあたり。

ただ、推す側の熱意が足りなかったのか、あるいは当のアーティストにヒット・ポテンシャルが続かなかったのか、なかなか育っていかなかったんですよね。

フォスター・ザ・ピープルのこれなんて、ポテンシャルあったと思うんですけどねえ。これは全曲が1000万ストリーム超えで1億ストリーム超えも5曲。ビッグにしなきゃいけなかったと思うんですけど、伸び悩んでしまって。もっとも、彼らはMGMTの代理みたいな感じのレーベルの売り出し方でしたけど、MGMTがそもそも変なアルバム作らないでちゃんと作品作ってたら今頃は・・・なバンドでしたからね。

 こういうことでにっちもさっちもいかないあいだに、この間のロックで一番ビッグになってしまったのが


イマジン・ドラゴンズだった、というのは皮肉でしたよね。ピッチフォーク的なスノビズムが強かった時代に、もっともメジャー・レーベルが作り上げたみたいな産業ロック的なバンドが一番ウケたというのも。

でも、子供たち見てたら、本当に「ロックバンド」っていったらこのバンドの名前出す子、本当に多いんですよ。うちの子らがそうだし(笑)、妻の学校の生徒もそうらしいですから。

⑤Kポップ、レゲトン、アフロビーツ・・・そして日本にも?


2017年くらいまでは、「ヒップホップ強くなって、ロック落ち目だな」みたいな印象がSpotifyのチャートなんて見てても伝わってきてたんですけど、2018年超えると今度は「アメリカ自体がそもそもスケール小せえな」と思えるほど、グローバル・チャートが一気に国際色濃くなるんですよね。

そのきっかけはやっぱり

BTSですけどね。彼らの場合は2013年にデビューした時から強くて、「1000万ストリーム8曲、もしくは8割以上」というのはその頃から当たり前にやってるんですけどね。

ただ、そういうKポップの現象って果たしていつからなんだろう?そう思って調べてみたんですが、それ以前の「1000万ストリーム8曲以上のKポップ」って

ないんですよ!

Kポップの場合、「第○世代」的な言われ方をするんですけど、いわゆる第2世代までだと、ぶっちゃけアルバムへの訴求力そのものがないですね。強いのはシングルばかりで。第2世代というと少女時代、KARA、2NE1、BIG BANG、Wonder Girls、f(x)、SHINEE、スーパージュニアと、かなり有名どころ、つまってるんですけど、まだまだ聞かれる層そのものがこの時点では小さいというか。

やはりバンタンと言う巨大な存在が登場して、女の子ならBLACKPINKがあって、EXO、セブチ、モンスタX、TWICE、やっぱこのあたりのいわゆる第3世代になってからですよね。Kポップ勢が1000万ストリームが収録曲の8割超えたりしだすのは。実際問題、ビルボードのトップ10にこのあたりがこぞって入り出すのが2020年なので、10年代後半に徐々に力をつけて20年代で爆発、という感じなんだと思います。

さっき、R&B/ヒップホップが10年代後半に飽和になってきたようなこと書きましたけど、Kポップ人気がそこから本格的になったのは僕は関係あると思ってます。やっぱ、「歌って踊れる」という、これまでブラック・ミュージックの専売特許みたいなこと、黒人がやらなくなったから。なんだかんだでその需要がまだ世の中的に多いことをKポップは証明したんじゃないかなと思ってます。

 続いて、これもほぼ同じタイミングでレゲトンですね。ここの場合も立役者は

バッドバニーであることは間違い無いんですけど、それ以前にはなかったのか。ここも検証したいと思います。

ラテン音楽圏が、スペイン語を喋る国同士でつながりはじめたのは、80年代にアイドル、そしてロックバンドの影響からだよ、という話は90年代のところですでにルイス・ミゲルとソーダ・ステレオの例でしています。その後、ミレニアム頃にリッキー・マーティン・エンリケ・イグレシアス、サンタナ、シャキーラの全米ブレイクもあったんで、そこでラテン・ミュージック大きくなるかと思いきや、意外にそんなことなかったんですね。

 ただ、2000年代半ばに、中南米の若い子らを結び付けてきた新しい勢力、それがレゲトン、もしくはそれが含まれる、ラテン・ヒップホップもまぜたウルバノってジャンルですね。そこで主役になったのがダディ・ヤンキー、ウィシン&ヤンデル、アイヴィー・クイーン、ヒップホップだったらカージェ13ってとこなんですけど、このあたりだと、「1000万ストリームが8曲」程度は出るようになってきます。ただ、今日につながるような特大ヒットのイメージまでは無い。

そこに近づくのは

マルーマ、Jバルヴィンのコロンビアのイケメン・コンビですね。ちょっとタレ目の方がマルーマです。彼らが2014、2015年に出したアルバムくらいから1億ストリームの曲が一気に増え出します。

ただ、そこで「今度こそ世界大ブレイク」ってとこで、一気に追い抜いて行ったがバッドバニーだった、という感じですね。

バッドバニーにオズナ、ラウ・アレハンドロ、女の子ならキャロルGが追ってる感じかな。ちょっと違うけど、そこに一応ロザリアも入ってきてる感じかな。

 ここに関しては、スペイン語圏での盛り上がりもさることながら、今や
黒人を超えマイノリティ・ナンバー1の人口となったアメリカ市場でその価値に気がつかれたのが大きかった
んじゃないかと思います。


アフロビーツも、昔からあるものだとは思うのですが、国際的に注目されてきたのはここ数年ですね。

エポック・メイキングだといえるのは

バーナ・ボーイが2019年に出した「African Giant」というアルバム。ナイジェリアってシーンが大きいとは思えないから、国際的になる前まではストリームの数字も大きなものではなかったのですが、ここではじめて1000万ストリーム8曲を超えてますね。

あとはウィズ・キッドが2020年に出した「Made In Lagos」ですね。

そこに僕が去年年間ベストのトップ10に入れたアシャケとか、ファイアボーイDMLのアルバムで1000万ストリームの曲が5曲くらいですね。あとは女性シンガー、テムズのアルバムを期待して待ちたいところです。

そしてですね、この次に何がグローバルに来るか、とい点に関して言うのならば、あえて「日本」の名を、あげておこうかと思います。

断言まではしません。ですが、以下の状況ゆえに、有力ではあるんですよ。

a)すでにSpotifyのグローバル・チャートに入り始めている
b)仮に国際ブレイクしなくても、国内に強い地盤がある
c)tik tokでのウケが良い

この3つがあるので、他の国のシーンのものより、僕はウケやすいと思ってます。インドとかブラジルでも国が大きいから1番流行ってるくらいの曲は国内の需要だけでもグローバル・チャートに入ったりするんですが、tik tokノリが良いとは思えない、軽いポップ性が正直な話、ないんですよね。その点、日本のもの、有利だと思うんです。

 それも僕は、バンドもの、あるいは自作自演ものの方が圧倒的に有利だと思ってます。なぜか。もうアイドルではKポップのイメージ凌駕するのは無理だと思うから。もう、今から進出したとしても、もう二番煎じにしか映らないと思うんですよね。あと、ロリータウケねらいのkawaii系も、、あれはとうに欧米圏ですけど、同性ウケが悪いので、固定ファン以外に広がりにくくカルトウケにしかならないのが難しいところです。

で、実際問題、国内需要の強さで達していることも考えられはするんですけど、「1000万ストリーム8曲以上の日本のアルバム」、近作だと存在します。

こんな感じですね。

狂言/Ado
Help Ever Hunt Never/藤井風
Stray Sheep/米津玄師
Ceremony/King Gnu
Traveler/Offficial髭男dism
Ambitions/ONE OK ROCK
Eyes Of The Storm/ONE OK ROCK
The Book/YOASBI
The Book 2/YOASBI

僕が思いつく範囲で調べた限り、こんな感じですね。

ONE OK ROCKあたりは海外リリースで国内人気がプラスアルファしてるのを感じますね。ベビメタがファーストがあとちょいで達してました。

これより上の世代になると入ってないですね。宇多田のBADモードが4、5曲くらいで、時間かけたら可能性あるとも思いますが。

でも、中でもこれですよね。

藤井風のこれですね。彼、「死ぬのがいいわ」って、ブラジル住んでても、息子や娘が使うtik tokとかyoutubeキッズからガンガン流れてくるんですよ。しかも、日本が全く関係のないものから。その曲に関して言えば、もうすぐ
3億ストリーム。アルバム自体も、あと1曲達成すれば、11曲の収録曲すべて1000万ストリームに達します。

最近はグローバル・チャートだったり、そこに準じたプレイリストがあったりするので、いろんな国の人がチェックしやすくなってるんですよ。それが、ここ最近の非英語圏のヒットにもつながってることはたしかです。


⑥tik tokやアイドル、悲しい少女たちでロック予想外の再活性


で、上のやつで終えても綺麗だったわけですが、やっぱロック好きとしてはそうもいかず(笑)、最後はロックで締めます。

ここ最近、また調子は上向いてきてます、ロック。ただ、その理由がtik tokとか、プレイリストとかだったりすることは、みなさんご存知でしょうか?

tik tokで流行ったといえば

マネスキンを思い浮かべる人もいるかと思うんですけど、それも大事ですけど、それだけじゃないんですよ。

tik tokとかっていうと、勝手に低級なものとして馬鹿にする人、いるんですけど、それは実情を知りません。

これhなんてtik tokが名盤にした作品ですよ。


はい。テイム・インパーラの「Currents」。これの収録曲のtik tokでの動画数、調べてみてください。すごいですから。「The Less i Know The Better」「New Person,Same Old Mistake」は特に。この影響でこのアルバム、1億ストリーム以上が7曲もあるんですよ!もう、時代はそういうとこまで行ってます。

あと、tik tokってシガレッツ・アフター・セックス、ビーチハウス、マック・デマルコあたりがバズったりしてるところでもあります。あと、ネイバーフッドとか、ちょっと忘れられてたバンドも。このあたり、何ヶ月か前に話しましたけど、やっぱ強いんですよ。このあたり、うちの10歳の息子も勝手に見つけてきて聞いてるくらいですからね。

あと、絶賛来日中のハリー・スタイルズやマイリー・サイラス、オリヴィア・ロドリゴといった、アイドルの出自だった人がロックに回ってヒットする状況があって、それがキッズにロックの意印象をよくしてるところもあります。


あと、こないだも言いましたけど、悲しい女の子の歌を集めた「サッドガール・プレイリスト」、ここでバズってる人も少なくないと言う現象もあります。

ミツキの「Be The Cowboy」、ビルボードだと最高位50位台なんですけど、14曲中13曲で1000万ストリーム超えてて、1億ストリーム以上3曲あるんですよ!

フィービー・ブリッジャーズの「Punisher」も動きが似てます。こちらは1億乗った曲は1曲のみなんですが、全曲で1000万ストリーム達成しています。

「1000万ストリーム8曲」って結構いいバロメーターでして、たとえばWet Leg、サム・フェンダー、ビーバドゥービーの最新作が現時点で6曲なんですよ。やっぱ、勢いがそのまま数字に反映されているというか。あと、マネスキンの1月に出た「Rush!」。あれも2ヶ月でもう8曲に乗ってます。

・・・というふうに、「何が今、聞かれているアルバムなのか」を見ていくと面白いですよ。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?