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2022アメリカ音楽界の問題(前) 今やアメリカが「ロックの鬼門」! 他の国で復興傾向進む中

どうも。

久々に洋楽シーン分析の話、行きましょう。

このテの話は2019年からこのブログではやってるんですけど、僕の口から出てくるのはたいがい

アメリカの音楽界へのぼやき


これがメインになります。

 というか、本当にこの数年のアメリカの音楽界、非常にうっとおしいというか、こういうこという日が訪れるなんて80年代とか90年代には想像もいなかったんですけど、「他の国の足を引っ張るんじゃないか」ってくらい、悪くなってきてます。


 過去にこういう記事も書いて、いかにアメリカが世界のシーンにおいてロックを路頭に迷わせている存在となっているか、について語ってきました。

 その上の2つの記事にも書いたんですけど、この10年くらい、アメリカのロック業界自体が「何を押して良いのかわからない」とばかりに迷走してるんですよね。むしろ、他の国の方がそれをわかってるのに、そういうアーティストを積極的に押そうとせずに、「誰がそんなの聞くの?」みたいなアーティストばかりロック系のラジオで押しては、一部まぐれ当たりするものはあるものの大概は外して、結局、ロック局のラジオが聞かれなくなる。ヒットチャートではそれが重要なポイントになるにもかかわらず、リスナーもそっぽ向いてラジオ聞かないものだからどんどんチャート結果も悪くなって、「なんだ、ロックってもう全然だめなジャンルじゃないか」みたいな印象を与えかねないものにしてしまってます。

 ただ、それでも、まだ「すでに売れている、あるいは国際的に人気のアーティストのアルバムの初登場順位くらいは大丈夫だろう」と思ってたんですね。

が!

変な最高位の数字がアメリカで出始めている!


 その例を示していこうと思います。

 まず

 8月の同じ日にリリースされたMUSEのアルバム「Will Of The People」とDJキャリドのアルバム「God Did」。これの各国の最高位、ちょっと見てみましょう。イギリス、オーストラリア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、日本、そしてアメリカで比較してみましょう。

MUSE UK1,Aus1,Ger1,Fra1,Ita2,Spa2,JP6,US15
DJ Khaled UK4,Aus9,Ger15,Fra30,Ita21,Spa55,JP40,US1

これはびっくりしちゃいましたね。8カ国中、7国でミューズ、圧勝に近い勝ち方だったのに、アメリカだけキャリド1位のミューズ15位ですよ!

 そりゃたしかに、「母国でのヒップホップ・アーティストだけに贔屓で1位」という考え方はわかりますよ。だけど、ヨーロッパの先進国でどこでも1位か2位のバンドがアメリカだけ15位というのは・・・。

 しかもミューズが過去にアメリカでヒット・アルバムを出していないのならまだ理解できるんですけど、過去に全米1位も記録したバンドですよ。それがなんでこんなことに・・・ですよね。

 あと、これに近いことは

yungbludの出たばかりのアルバムにも感じています。本国イギリスではこれで2枚連続での1位。ヨーロッパの他の地域でも売れ始めてますが、結果はこうでした。

yungblud UK1,Aus1,Ger3,Ita6,Spa5,US45

 これもちょっと、「ええっ!」って感じでしたね。

 前作との比較で言えば、最高位が75位から45位にはあがってるんですよ。だけど彼、マシンガン・ケリーとかウィロウ、ホールジーとも共演してて、名前の通り、かなり良くなってるんですよ。それで、この数字というのはいくらなんでも低すぎる。たしかに先行シングルで攻勢かけてなかったなとは思うんですけど、トップ10は難しくても10位代くらいはいくんじゃないかと思ってましたからね。

 これなんかも、キッズ受け良さそうなんだから、もう少しアメリカの放送関係とか、ラウド系よりのオルタナティヴ・ロックの雑誌のAP(Alternative Press)あたりがあおればまだ成績良かった気がするんですよね。なんか、そのあたりが足並み揃ってないなあと思うわけですよ。

 でも、僕のブログを前から読んでいただいている方ならわかると思うんですけど、ロック戻ってきてるんですよ、世界的には。それは昨年のSpotify上でのオリヴィア・ロドリゴ、マネスキン、グラス・アニマルズのヒットにはじまり、イギリスだとサム・フェンダーやWet Legがただでさえ売れてた上にグラストンベリーでバカ受けして長めに売れてるし、その後もいろいろ出てきてUKロックの層も厚くなってきている。

 あと、「ストレンジャー・シングス」効果でケイト・ブッシュやメタリカの名曲が若い人にも発見された。これだって大きいんですよね。

 それに加えて、まだロック系のヒットがSpotifyではまだ続いているんですよ。

https://www.youtube.com/watch?v=k5mX3NkA7jM

顕著なのはこれですよ。ゴーストの「Mary On A Cross」。これ、今、tik tokでバカ受けして、世界のどこでもトップ50入ってるんですよ。

あとtik tokって過去の曲の発掘に長けてまして

https://www.youtube.com/watch?v=MwpMEbgC7DA

このトム・オデルの2013年のヒット「Another Love」も同じようにヒットしてますし

そして、すごいのこれですよ。アークティック・モンキーズの2007年のセカンド・アルバム「Favorite Worst Nightmare」に入ってたクロージング・ナンバー「505」。これなんて以前にシングルになってるわけじゃない、ファンの間での人気曲だったのに、これもかなり長いこと、ずっとSpotifyのチャートに入り続けて、今や彼らの歴史上、三番目の人気曲になってるんですよ。もっと言うなら、出たばかりの最新シングルより現時点でチャート、上なんですよ!本当に世の中、わからないものですよ。

 こういう風にtik tokやSpotifyを通じ、ロックのヒット、続々出てきてるんです。

が!


ビルボードが、アメリカのロック系のラジオ局のオンエア状況をまとめたAlternative Airplayのチャートで、こうしたtik tok上のロックのヒットが何一つ入ってないんですよ!

 キラーズとかマネスキンが入ってて嬉しくはあるチャートなんですけど、こういうチャートじゃ、アメリカで聞かれてるロックの現実を反映してませんよね。

だって今日付けのSpotifyのUSのチャートで、そのAlternative Airplayに入ってる曲、1曲も50位以内にランクインしてないのに、アークティック33位に、ゴースト40位ですよ!しかも、全体の総合チャートでですよ。矛盾もいいとこですよね。

 あと、それだけじゃありません。

https://www.youtube.com/watch?v=eKL3TceSxvk

これ、今、僕が俄然注目始めてるんですけど、SpotifyのUSで今日付けで6位の17歳の黒人少年D4vdの「Romantic Homicide」、これ、黒人によるゴス・ロックですよ!これ思うに、エモ・ラップやってた少年が興味が高じてジョイ・ディヴィジョンやらキュアーにまで接近したらこれに至った、という感じだと思います。

 これがたまたまではなく、彼、他の曲もこんな感じです。つい最近、ビリー・アイリッシュのレーベルと契約して、すごく売れそうです。

それから

これはカントリーとのクロスオーバー・ヒットなんですけど、ザック・ブライアンの「Something In The Orange」。これはどっちかというと純フォークなんですけど、すごくいい曲です。

 実はd4vdもザックも、ビルボードのもうひとつ別の尺度で作ってるロックのチャートにはランクインしてるんです。それをなぜか、アメリカのロック系のラジオが拾わないんです。ビルボードのシングル・チャートのポイントに有利になるにはストリーミングより圧倒的にラジオのチャートなのに!

 もう、いい加減ですね、ビルボードのチャートの不公正によって起こる、ロックに対する不公正、勘弁して欲しいんですけどね。

 皮肉なことをもうひとついうと

Spotify上で最も長く愛され、いまだにコンスタントにストリームされている曲の代表としてコールドプレイの「Yellow」があるんですけど、2000年当時のビルボードのシングル・チャートで48位までしか上がってないことになってるんですよ。その当時から、「絶対そんなわけない!」って僕、言い張り続けてるんですけど、このロングヒッットから察するに、やっぱり絶対チャートのつけ方、おかしかったと思い続けてます。

 とにかく、いい加減にチャートのつけかたなおさないと、アメリカのロック鬼門が解消されないと思います。




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