スパーク・ジョイ! 「コンマリ」が欧米人ウケしている理由分析
どうも。
検索かけてると、日本でも話題になってるようですね。おそらく欧米圏ではもっと、じゃないかな。これです!
はい。現在、ネットフリックスで世界的人気番組になっています「Tidying Up With Marie Kondo」。現在、ネット上では、「ときめき」の英語訳「spark joy」がちょっとした国際的流行語になっています。すごいことですよね。
実はですね、これ、我が家でもかなりヒットしました(笑)。ブラジルでは彼女の本は出ていないのでコンマリさんのことは知らなかったんですが、僕がしょっちゅうチェックしているMetacriticのサイトで放送開始前に採点されているのを見て、「なんだ、これ?」と気になっていたらワイフが別のところで発見していて、僕に言われる前にもう見てました。そうしてたらどうやら番組効果はてきめんだったようで、先日、うちがリフォームした話はここでもしましたが、そのあと、ワイフは「コンマリ・メソッド」を守る形で、本当に家がキレイになったんですよ。しかも持ってた本の断捨離までやっちゃって。我が家での影響は否定できません。
ただ、個人的にこの番組を見返したり、白人のアメリカ系ブラジル人のワイフの行動を見て改めて思ったんですけど
「ああ、こりゃ、確かに欧米人にはウケるは」
とは思ったんですよね。
そのことについて分析することにしましょう。
①欧米人は「癒し」好き
まず、この番組見て思うのは「片付け」を「癒し」と結びつけているところですが、これがすごく欧米人の心を刺しているんですよね。
欧米圏で生活してても、うちのワイフの家族(ちなみに義父ウルグアイ人の義母アメリカ人)の行動見てても思うんですけど、日常から「心の平静」求める動きは良く見られます。うちの家族はそこまででもないですが、サイカイアトリスト(セラピスト)に定期的に相談してる人、少なくないですし(映画とかでもよく出てくるでしょ)、後、街を歩いても「therapeutic」(「癒し」の英語。healingよりはこっちを聞きます)を謳ってマッサージのビジネスやってるものとかもよく目や耳にするものです。
そして、「片付け」にもこの効果、あるんです。欧米人の場合、日本における「年末の大掃除」をするときにresolution(決意)と呼んで、かなり精神的なものと捉えてやる傾向があるんですけど、いわゆる「コンマリ・メソッド」というのは、欧米人が「大きな片付け」に抱きがちな「精神的な身辺整理」に訴えるところがあるんですよね。そこのところは「今年の汚れ、今年のうちに」の日本よりはスピリチュアルな道義付けが強いような気が、はたから見ていてしますね。ましてやそれが、それまで掃除を怠って久しくやってなかった人だったりするわけでしょ?なおさらだと思います。
②東洋的な神秘さがあって、従来のものと強く差別化できた
あと、「片づけができない!」となったときのお助け役が「遠くアジアの国からやってきた人」という神秘性が利いてると思います。これが、アメリカのどこにでもいるような普通の白人でも黒人でもラテン系でもダメだったろうと思います。
それに、似たような番組なら欧米ですでにありました。それが
この「スーパー・ナニー」という、イギリスの家事のエキスパートが、小さい子どもが暴れまわってメチャクチャになった家のお手入れをして一件落着、みたいな番組だったんですね。今思うに、「イギリス人の家政婦さん」ですからメアリー・ポピンズのイメージだったのかなという気がします。これはこれでそこそこ人気で、ピーク時、10年少し前かな、には日本でも放送やってたし、その後も人を変えて細々やってたようですけど、たとえば白人で別の同種の番組作ったら、間違いなくこれと比較されてしまい、差別化が難しかった、というのがあったと思います。
そこに、コンマリさんが、「日本、アジア」のイメージで現れたのが好都合だったんじゃないかと思いますね。たとえば、マッサージ業なんて見てても、インドとか東洋のものが人気あるじゃないですか。それはやっぱり、「得もいえぬ未知の力」という一種のブランドに利用者が惹かれるからだと思うんですけど、この番組の場合、①にも書いたように、「片付けによって心の安らぎを得たい」という人が対象なわけですから、マッサージと同じように、「日常の生活では、あまりお目にかからないようなタイプ」のものの方が興味をひきやすかった、というのはあったと思います。
特に彼女、片付けに入る前にこうやって祈るでしょ?こういうのも効果的なんですよね。片付けに来られた家族がこれをやられるたびに、最初「えっ、なに、どうしたの?」って一回なる。そういうミステリアスなインパクトを与えられてるのがいいと思います。
③コンマリさんが、「欧米人が思い浮かべやすい典型的日本人」だった
あとですね
このコンマリさん自身がですね、非常に「欧米人が思い描きやすい典型的な日本人っぽい感じ」なのも、わかりやすくていいんだと思います。黒髪のやや長めのボブに、切れ長の目。なんか日本人形っぽいじゃないですか。この風貌って
こんな風に漫画としても描きやすいですからね。特に欧米での日本のイメージに「マンガ」ってしっかりありますから、そのイメージにも沿いやすいんですよね。
そして、風貌以上に「日本人らしい」のが
このように、いつも背後に通訳さんがついてることですね。欧米のリアリティ・ショーのホストに通訳ついてる光景って初めてみましたね。これ、ポジティヴにもネガティヴにも両方取れるんですけど、これがまた「日本人らしい」んですよ!
ここでのコンマリさんは、大半を日本語でしゃべって、たまに英語を話すと、もう思いっきりカタカナ発音の英語なんですね。で、肝を後ろの通訳の人が訳すんですけど、これがすごく日本人らしい。なんか、団体観光客っぽいんですよね(笑)。
これ、見る人によっては「カッコ悪い」と思う人もいると思うんですが、でも、国際的な視聴的にはこっちのスタイルの方が覚えやすいんですよね。「ああ、あの通訳つけてる日本の女の人」という方が、なまじスラスラしゃべれてしまう人よりも絵的なインパクトがあるというかね。
で、この通訳さんが結構出来る人なんですよ。訳の返しが早いし、コンマリさんの口調通りに真似して訳すんですね。これが画面見ないで耳だけで聴いた場合に違和感もないしテンポもいい。彼女が案外重要な気がしてます。
④コンマリさんの言動が「kawaii」カルチャー的
あと、これも「日本人っぽい」感じに連なるんですが、コンマリさんって喋り方とかボキャブラリーがすごく「kawaii」カルチャー的なんですね。
欧米圏だとコスプレもそうだし、キティちゃんもそうなんですけど、そうした文化が「kawaii」という単語で紹介されてるんですね。サンパウロあたりだとに日系人多いから、そういうタイプの専門の店とかありますからね。
そのイメージにもコンマリさん、合うんですよ。それは、あの甲高い声での喋り方とかもそうだし、クライアントの家がキレイになった時の、「ワーワー、キャー!!」っていう騒ぎ方とかね。この感じも、ハリウッド映画やアメリカのテレビで日本の女の子風刺するときによく使われるパターンです。
そして、その最たるものが
スパーク・ジョイ!
これは「ときめき」という、これまた英語の概念にない、日本独自の、勢いkawaii系のものと相性の良い類の言葉ですけど、これを「スパーク・ジョイ」という独自の英語にしてしまって決めフレーズにしてしまっているところなんかは非常にうまいです。しかも、この人さしゆびでポーズも決めることで後押し。こういう感覚、日本以外で見ませんもん。僕も普段の生活してて、テレビから日本っぽい映像なんて流れてこないじゃないですか。だから、コンマリさんがこのポーズ決めながら「スパーク・ジョイ!」なんて言われると、「すごい懐かしい感じだな、これ」と思ったし、こういうのになじみのない欧米視聴者には珍しいんじゃないですかね。
⑤ストーリーが古き良きホームドラマ
このショーが「5つのポイント」で話を進めるので、僕もポイントを5つにしましょう。
これ、話が毎回パターンが決まっていて、ちょっと倦怠していた夫婦や、自分たちを見失ってバラバラになっていたような家族が片付けを通して、昔のものなんかを見つけていくうちに愛情や絆を取り戻していくという、古き良きホームドラマみたいなプロットなんですね。これを成し遂げた後、「ありがとう。マリー(リにアクセント。マリエとは呼びません)」と言われてコンマリさんが去っていく、みたいな感じです。
そこにいろんなファミリーでてくるんですよ。おじいさん・おばあさんから30代前半の若夫婦。子供が中高生の生意気盛りとか。人種も様々です。このドラマの数々のネタが尽きない限りはこれ、続くんじゃないかな。これが見ててホッコリする要素なので。
この「Tidying Up With Marie Kondo」、欧米ではバカあたりしてまして
こんな風に、このところ毎日のようになんか記事でてますね。広いでしょ。BBCにBuzzfeedにVanity Fairですからね。関心度、相当高いです。
このショーですが、僕の読みだと、後2シーズンは大丈夫でしょう。とりわけ第2シーズンの始まりの注目度はかなり高いはずです。
ただ、懸念があるとすれば、5でも言ったように、これ、基本的なプロットのパターンが同じなので「飽きられないかな」という心配がややあることですね。後、コンマリさん自身、もう家族でアメリカに引っ越してきてる(赤ちゃんの娘さん、かわいい!)んですけど、それで英語も上手くなるとは思うんですけど、番組キャラ的にはあえて上手くならない方がいいような気がしてます。
僕はこれ、かなり成功したんじゃないかと思います。
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