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グローバル・ベストアルバム・プレイリスト(5)アルゼンチン、カリブ海、中南米太平洋側エリアで50枚ずつ!

どうも。

では、グローバル・ベストアルバム・プレイリスト、第5弾いきましょう。

また南米に戻るんですけど、アルゼンチン、そしてそれ以外は国だとそれほど大きくないので、ラテン・アメリカの太平洋寄り、そしてカリブ海よりの3地域で作ってみました。

まずはアルゼンチンから行きましょう。

Los Gatos/Los Gatos (1968)
Almendra/Almendra (1969)
Yo Vivo En Esta  Ciudad/Pedro Y Pablo (1970)
Treinta Minutos De Vida/Moris (1970)
Manal/Manal (1970)
La Bíblia/Vox Dei (1971)
Pappo's Blues Vol.3/Pappo's Blues (1972)
Vida/Sui Generis (1972)
Artaud/Pescado Rabioso (1973)
Nada/Miguel Abuelo (1973)

この国は、世間に評価されている音楽の9割くらいがロックなんですよね。それくらいのロック大国。なのですみません。アストル・ピアソラとかメルセデス・ソーサあたりもあるんですけど、如何しても浮いてしまうのでアルゼンチンはロックだけで生かさせてください。

アルゼンチンで最初の本格的なロックは、このロス・ガットスというバンド。南米でのビートルズ、ストーンズの返答はなんとウルグアイとペルーという、比較的小さな国から起こってます。ウルグアイのロス・シェイカーズというバンドが、ウルグアイじゃあまりにもマーケットが小さいので隣国のアルゼンチンに興行で行って流行って、そこから触発されてバンドが出始めたというストーリーです。

でも、この国のバンドはそういうビートバンドじゃなくて、サイケの時代から強者がで始めるんですよね。

まずはフォークロック・バンドのアルメンドラ。この右端のフロントマンが、アルゼンチン・ロックの父の一人、ルイス・アルベルト・スピネッタ。


これがその次に作ったペスカード・ラビオーゾ。アルゼンチンのオールタイム1位常連のバンドです。ジョニ・ミッチェルのジャズ期がプログレになったみたいな、世界のロック史に残したい素晴らしいバンドです。

スピネッタがこの後、非常に多くのバンドを組んでアルゼンチン・ロックのレベルを上げていくわけです。

それからフォーク・デュオのスイ・ジェネリス。手前の眼鏡がもう一人のアルゼンチンのロックの父、チャーリー・ガルシア。彼もスピネッタ同様にバンドをたくさん組んでシーンを引っ張ります。

この黎明期、この2人だけじゃなくて、ハードロックのマナルとかパッポス・ブルースなども優れたバンドですよ。


El Jardin De Los Presentes/Invisible (1975)
Peliculas/La Maquina De Hacer Pájaros (1977)
La Grasa De Las Capitales/Serú Girán (1979)
Kamikaze/Luis Alberto Spinetta (1982)
Clics Modernos/Charly Garcia (1983)
Giros/Fito Paez (1985)
Nada Personal/Soda Stereo (1985)
Locura/Virus (1985)
Divididos Por La Felicidad/Sumo (1985)
Oktubre/Patricio Rey Y Sus Redonditos De Ricota (1986)

ここも前半はスピネッタとチャーリーの勢い強いですね。Invisibleというバンドはスピネッタです。そのあと、ソロですね。で、チャーリーはこの上の写真のセル・ヒランという、シティ・ポップ・プログレとでもいうべきバンドを組んでこれがビッグになります。チャーリー、クラシックの素養があって、英語圏だと10ccとかトッド・ラングレンの影響が強いんですよね。そのあたりの名前にピンと来る人はもれなく聞いたほうがいいです。あと、このバンドはギターがペスカード・ラビオーゾ、ドラムがガットス、ベースがペドロ・アズナルと言ってジャズ界で有名になる人。この国のいわゆるスーパーグループでもありました。

80sの前半から半ば。この国も軍事政権の終わりころからニュー・ウェイヴの影響を受けたバンドブームが始まります。チャーリーもスピネッタもソロでそっち方向に行くんですけど

ヴィールスとかスーモですね。写真の上のヴィールスは耽美派ポストパンク、下のSumo、まさに日本の相撲から言葉がきてるこのバンドはトーキング・ヘッズとかじゃがたらみたいなファンクですよ。フロントマンは手前のつるっ禿げのやつなんですけど、彼にカリスマ性がありまして、彼の死で終焉。しかし残されたバンドで別バンドというニュー・オーダーみたいな歴史を持ってます。

Contrareloj/Los Enanitos Verdes (1986)
Signos/Soda Stereo (1986)
El Cielo Pueda Esperar/Ataque 77 (1990)
Canción Animal/Soda Stereo (1990)
Peluson Of Milk/Luis Alberto Spinetta (1991)
Algo Mejor/Fabiana Cantilo (1991)
El Amor Después Del Amor/Fito Paez (1992)
El León/Los Fabulosos Cadillacs (1992)
La Era De La Boludez/Divididos (1993)
Mi Vida Loca/Los Auténticos Decadentes (1995)

ここは巨大なものが2つありますね。

まずはソーダ・ステレオですね。スペイン語圏の南米が同じアーティストを共有して盛り上がるようになったのは80sの中頃からなんですけど、その象徴的なバンドが彼ら。中南米圏、どこでも売れてます。また実力も圧倒的。初期はポリスをさらにアリーナ向きにした感じなんですけど、フロントマンのグスタヴォ・セラティの柔軟性が素晴らしくグランジもマッドチェスターも吸収して進化し続けるんですよね。90s後半に解散して、セラティがソロになっても、彼が脳出血で倒れて死ぬまで絶大な人気でした。

そしてフィト・パエス。左の男性ですね。彼もビッグです。1992年にアルゼンチン国内のアルバムの売上記録作ってます。彼はスピネッタとチャーリーからの影響を強く受けた、2人の正当後継者です。

で、その隣に写ってるのがファビアナ・カンティジョと言って、彼の作品の前に入れた人です。まあ、フィトの元カノです。この2人のロマンスはアルゼンチン・ロック界の伝説でして、キャリア初期の80sに付き合ってて別れてフィトはペドロ・アルモドバルの名作映画「オール・アバウト・マイ・マザー」のヒロイン役のセシリア・ロスと結婚して子供も持つんですが離婚。その後、シングル同士でファビアナと付かず離れずの、ファンを焦らす間柄になってることでも知られています。

あと、ファブロゾス・カディジャックスとかアウテンティコス・デカダンテスはアルゼンチン・スカのバンド。ディヴィディドスはさっきも言ったようにスーモがフロントマンのルカ・プロダンが亡くなったあとのバンドです。


3er Arco/Piojos (1996)
Libertinaje/Bersuit Vergarabat (1998)
Alta Suciedad/Andrés Caramaro (1997)
Bocanada/Gustavo Cerati (1999)
Leche/Illya Kuryaki & The Valderramas (1999)
Especial/Viejas Locas (1999)
Jessico/Babasónicos (2001)
Influencia/Charly Garcia (2002)
Infame/Babasónicos (2003)
El Número Imperfecto/Catupecu Machu (2004)

さっきも言ったように、ソーダのセラティ、入ってますね。あと、イリャ・クラキ&ヴァルデラマスというのはこの国で最初に成功したヒップホップ・ユニットなんですけど、ラッパーのダンテ、スピネッタの息子です。僕、1回実はライブ見てます。ブラジルのフェスに来てたんで。

ここで紹介すべきはまず

アンドレス・カラマロですね。彼は90年代前半にスペインに渡ってロス・ロドリゲスというバンドで成功。逆輸入の形でソロでアルゼンチンで当たった人。ディランとかストーンズ好きな人が好む玄人筋のロックンロール。スピネッタ、チャーチー、セラティ、フィトと彼で「5大ロッカー」とする声を聞きますね。

もう一つはやっぱりババソーニコスですね。どこの国でも、「その国のレディオヘッド」みたいな存在がほしがられるのが2000年代の傾向の一つとしてあるんですけど、アルゼンチンのそれがこのバンドです。技巧的にうまいところを見せるインディバンドの代表ですね。ただ、彼ら、90sにイアンん・ブラウンのソロ・アルバムに参加してたりするように、もっとベタなUKロックのファンでもあるんですけどね。

あとはこの時代になってもチャーリーやセラッティが入ってるのも彼らの強さを感じますね。

Otro Dia En El Planeta Tierra/Intoxicados (2005)
Ahí Vamos/Gustavo Cerati (2009)
Despierta/Las Pelotas (2010)
Las Ligas Menores/Las Ligas Menores (2014)
Halo/Juana Molina (2017)
La Sínteses O'Konor/El Mató A Un Polícia Motorizado (2017)
BACH/Bandalos Chinos (2018)
Prender Un Fuego/Marilína Bertoldi (2018)
Tripolar/Usted Señalemelo (2023)
Por Cesáres/Dillom (2024)

そして最近ですけどね。この前の時代までと比べて小粒になったと言われているようですけど、いいアーティストは出てきてます。この国で弱かった女性アーティストも、ポストロックのベテランのフアナ・モリーナや、PJハーヴィーみたいな渋い若手ロッカーのマリリナ・ベルトルディとか、ガールズ・バンドのリーカス・メノーレスもそうですね。

でも期待値の高さでいうなら


El Mató A Un Polícia Motorizadoですね。めんどくさいので現地でもエル・マトーと呼ばれてますけど。彼らはもう、モデスト・マウスとかフレーミング・リップスとかウィルコとかの00sのUSインディ・ロックの南半球で育った後継者ですね。今のアメリカのこの手のバンドより断然完成度高いです。プリマヴェーラ・サウンドでのライブ見て、実際確認しています。

では最後に期待のラッパー、ディロンを。最近はロック絶対の国のアルゼンチンでもヒップホップとかレゲトン強いんですけど、センス、わりといいんですよね。で、その中でもディロンは頭ひとつ飛び抜けてます。昨今のアメリカのトレンドに対しても批評的で、バンド使ったりしてかなり実験的なことして、それを大衆的に聞かせる手法を取っています。機会あったら、ここに入れた最新作、聞いてみたら良いと思います。

では、続いてはラテン・アメリカのカリブ海周辺でいきましょう。ジャマイカ、プエルトリコ、キューバ、ニューヨークのキューバ移民、コロンビアのレゲトン、これらでまとめてみました。

Plays Mucho Mambo/Pérez Prado (1950)
Calypso/Harry Belafonte (1956)
Ska-Boo-Da-Ba/The Skatalites (1966)
On The Beach With The Paragons/The Paragons (1967)
Sings His Hit Songs Ten Commandaments/Princce Buster (1969)
This Is Desmond Dekker/Desmond Dekker (1969)
Vámonos Pa'l Monte/Eddie Palmieri (1971)
Live At The Cheetah Vol.1/Fania All Stars (1971)
The Harder They Come/Soundtrack (1972)
Lo Mato/Willie Colon & Héctor Lavoe (1973)

やっぱ、ここらあたりは伝統的にリズム音楽の宝庫ですね。50年代前半、ロックンロールが生まれる前の段階でマンボがあり、さらにロックンロール・ブームと同じ頃にカリプソ・ブームがあった。「デーオ、デエエオー」でおなじみ、ハリー・ベラフォンテの「バナナ・ボート」がまさにカリプソの代表曲です。トリニダード・ドバコという島の音楽ですね。

ただ、やはり60年代から70年代にかけて出てきたのはやはりジャマイカですよ。最初はスカ。写真はスカタライツですけどね。これはジャマイカ移民がイギリスにもわたることで60sのロンドンにも入って、そこで独自に文化も発展していきます。

これが減速してロック・ステディになり、70sに入ってレゲエになるわけですけど、「ロック・ステディ」の時期が昔はよくわからなかったものです。昔は渋谷のタワーレコードに行っても、ロック・ステディの時代の作品って手に入りやすいものではなかったですから。でも、それがサブスクになって見つけやすくなりましたね。パラゴンズなんて名前は聞いても盤を見た記憶ってなかったし。ブロンディの全米1位の「The Tide Is High/夢見るNo.1」のオリジナルを歌ってた人たちです。

で、1972年に映画「ザ・ハーダー・ゼイ・カム」のサントラを通じて、世界にレゲエが浸透して行くことになります。

そしてレゲエとちょうど同じ頃にニューヨークのキューバ移民がサルサを発展させます。その中の代表アーティストがウィリー・コローン。60年代の後半にデビューするんですけど、ちょうどレゲエのハーダー・ゼイ・カムもバッドボーイのイメージで売ってるんですけど、コローンのアルバムのジャケ写、ギャングスターまがいのもの、ばっかりなんですよね。この辺りに南米音楽につきがちなヤンキー・イメージの原点があるような気がしています。今の耳で聞くと、ホーンが賑やかな陽気な音楽って感じなんですけどね。

Burnin'/Bob Marley & The Wailers (1973)
Funky Kingston/Toots & The Maytals (1973)
Celia & Johnny/Celia Cruz & Johnny Pacheco (1974)
Dub Split The Atom/King Tubby (1974)
Marcus Garvey/Burning Spear (1975)
Dread In A Babylon/U-Roy (1975)
Legalize It/Peter Tosh (1976)
Super Ape/The Upsetters (1976)
King Tubby Meets Rockers Uptown/Augustus Pablo (1976)
War Ina Babylon/Max Romeo (1976)

1973年にはボブ・マーリーがアイランド・レコーズを通して全世界デビューを果たしますが、ここから数年がレゲエの黄金時代ですね。マーリーはウェイラーズにピーター・トッシュとバニー・ウェイラーがいたこの時代ってやっぱりかけがえのない時代だし、彼らのこの当時の鋭い社会批判精神にあふれたリリックはトッシュのソロにもバーニング・スピアなどにもつながっていきますしね。

あとはやはりリー・スクラッチ・ペリーですよね。音圧と浮遊感でアレンジとグルーヴの概念をレゲエだけでなく、音楽界全体に影響を与えるレベルで変えた人。その片鱗を彼のアップセッターズやキング・タビー、オーガスタス・パブロトの共作盤で感じて欲しいですね。

あと、ラップにも影響を与えたDJ(レゲエの世界ではMC)が出始めるのもこの頃で、U-Royが代表格ですね。昔、そのような話は聞いてもU-Royなんて何聞いて良いのかわからないものでしたが、今はRate Your Musicのような評価サイトとか、Spotifyのストリーム・データもあってそういうのがはるかにわかりやすくなって本当に便利になりましたね。


Heart Of The Congos/The Congos (1977)
Exodus/Bob Marley & The Wailers (1977)
Siembra/Willie Colon & Rubén Blades (1978)
De Ti Depende/Héctor Lavoe (1978)
Al Final De Este Viaje/Silvio Rodríguez (1978)
Uprising/Bob Marley & The Wailers (1980)
Red/Black Uhuru (1981)
Night Nurse/Gregory Isaacs (1982)
Dance Hall Style/Horace Andy (1982)
Primitive Love/Miami Sound Machine (1985)

ここも、コローンとかマーリーの延長線上にはありますね。それだけ影響力が強いということですね。

キューバからはフォークシンガーのシルヴィオ・ロドリゲスの名前がありますね。彼も重要です。

レゲエの影響力が、パンク/ニュー・ウェイヴの影響もあってイギリスで強くなる頃ですね。ブラック・ウルフーなんて、UB40と同じくイギリスのレゲエバンドだと長らく勘違いしてましたからね。

あと80sでアメリカだとマイアミ・サウンド・マシーンですね。サルサのシーンをもっと一般的なダンス・ポップだったりアダルト・コンテンポラリーのバラードで広くした感じでしたよね。サルサまではマニアックでよくわからなかった当時の人には良い入り口に、なった人もいた、かもしれません。


Bachata Rosa/Juan Luís Guerra 4.40 (1990)
'Til Shiloh/Buju Banton (1995)
Boombastic/Shaggy (1995)
Buena Vista Social Club/Buena Vista Social Club (1997)
Ricky Martin/ Ricky Martin (1999)
Marc Anthony/Marc Anthony (1999)
Arepa 3000/Los Amigos Invisibles (2000)
El Abayarde/Tego Calderón (2003)
Gasolina/Daddy Yankee (2004)
Diva/Ivy Queen (2004)

90年代ですね。実はこの頃に僕はNHKのFM部に入りまして、最初の担当番組がラテン音楽の番組で1年半やったんですよ。実はそれでこのあたりのことは詳しくなったんです。その番組自体はやたら古いマンボとかタンゴばかりかけてて最新のものかけてはなかったんですけど、やっぱこの時の印象だとサルサとダンスホール・レゲエ、強かった印象ですよね。フアン・ルイス・ゲーラはドニミカのサルサの人ですね。あと、ダンスホールではブジュ・バントンとか、やっぱシャギーですね。ヒップホップとの相性が良いので若い人に売れやすかったですね。

あと、ラテン音楽の番組より、そのあとにピーター・バラカンさんとやってたウィークエンド・サンシャインで聴いた印象でしたけど

ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブも、あの当時のロックじゃないですけど、伝統が普遍になる感じでクールでしたね。

で、90sの末にアメリカで巨大なラテンブーム来ましたね。東海岸からはやはりプエルトリコのリッキー・マーティン、そしてニューヨーク・ラテンからはサルサ・キングだったマーク・アンソニー、ビッグ・ヒット飛ばしてましたね。あと、一つ、入れにくかったんですけど、ベネズエラもカリブ圏なので、あの国の異色のアーバン・シティ・ポップバンドのロス・アミーゴス・インヴィジブルズも入れてみました。

で、それが終わって2000s入るとプエルトリコからレゲトンですよ。

ダディ・ヤンキーの「Gasolina」、ヒットしましたけど、あの当時の印象では、このシングルのイメージが強くて、アルバムとかジャンルでヒットするのかな、という疑問がありました。

実際にそこまで掘って聞くのは当時すごくマニアックな印象ありましたけど、でも振り返るとここであげてるテゴ・カルデロンとかアイヴィー・クイーン、ウィシン&ヤンデルとか、その道での名盤は出てたわけなんですよね。


Pa'l Mundo/Wisin & Yandel (2005)
Entre Los Que Quieran/Calle 13 (2010)
Formula Vol.2/Romeo Santos (2014)
Vibras/J Balvin (2018)
YHLQMDLG/Bad Bunny (2020)
Vice Versa/Rauw Alejandro (2021)
Feliz Cumplean̈os Ferxxo Te Pirateamos El Album/Feid (2022)
Un Verano Sin Ti/Bad Bunny (2022)
Mañana Será Bonito/Karol G (2023)
Data/Tainy (2023)

やっぱここは大レゲトン時代ですよね。よく見ると、ラテン・ヒップホップ界の硬派ラップ・デュオのカージェ・トレーセや、バチャッタという歌謡ラテン社交ダンス音楽みたいなジャンルの今のキングのロメオ・サントスも入ってますけどね。

やっぱバッドバニーを中心に進みましたよね。彼がレゲトンをトラップに近づけたことでアメリカの移民のヒップホッパーたちが大量にレゲトンを聞くようになり、そこから離れたことによって独自性も持つこともできた。そこ、すごく大きかったと思いますね。

彼を中心に和も広がりましたよね。ラウ・アレハンドロとかFeidとかTainyとか。そしてコロンビアからJバルヴィンやキャロルGが出てきてレゲトンの地図拡大したことも重要ですよね。

では続いて、ラテン・アメリカの、今度は太平洋側に行きましょう。メキシコ、レゲトンでないコロンビア、チリ、そしてアメリカのかカリフォルニアやテキサスへのラテン移民。これらでまとめてみました。


Teen Tops/Los Teen Tops (1960)
Rock Con Los Locos Del Ritmo/Los Locos Del Ritmo (1960)
Las Últimas Composiciones/Violeta Parra (1966)
68/Los York's (1968)
En El Maravlloso De Ingesón/Los Speakers (1968)
La Revolución De Emiliano Zapata/La Revolución De Emiliano Zapata (1970)
Virgin/Traffic Sound (1970)
Abraxas/Santana (1970)
Coleccion Avandalo, Vol.1/Three Souls In My Mind (1971)
We All Together/We All Together (1971)

メキシコという国はアメリカと国境が近いこともあって、ロックンロールの影響は早くから受けてます。そして、アメリカでさえソロシンガーだったところ、メキシコの場合、写真のロス・ティーン・トップス、ロス・ロコス・デル・リチモなどのバンドが、エルヴィスやチャック・ベリーのロックンロールを演奏していた、という貴重な歴史があります。

で、南米で最初にビートルズに反応した地域は、上にも書いたようにウルグアイなんですけど、その次がなんとペルーなんですよね。今となっては何にもないとこなんですけど、この当時、景気良かったみたいでですね。ロス・ヨークス、その後にトラフィック・サウンド、ウィ・オール・トゥゲザーと言ったバンドが同国のシーンを彩ります。そして隣のコロンビアからもロス・スピーカーズが出てきます。

メキシコはビートルズの時代はそこまで影響受けてないんですが、その後のサイケデリック・ロックの時代にはラ・レヴォルシオン・デ・エミリアーノ・サパタ、スリー・ソウルズ・イン・マイ・マインド、ロス・ドゥグ・ドゥグズのようなハードロック・バンドが時代を築きます。そして1971年には「メキシコのウッドストック」ことアヴァンダロ・フェスティバルも伝説化します。ただ、この成功で政府に睨まれてしまいロックが取り締まり対象となり、10年ほど苦渋の期間を味わいます。

El Derecho De Vivir En Paz/Victor Jara (1971)
Arriba Huentian/Vicente Fernández (1972)
Smog/Los Dug Dug's (1973)
Why Can't We Be Friends/War (1973)
Contraband Y Traicion/Los Tigres Del Norte (1975)
Altura De Macchu Picchu/Los Jaivas (1981)
Botellita  De Jerez/Botellita De Jerez (1984)
Simplemente/El Tri (1984)
Arpia/Cecilia Toussaint (1987)
Soy Como Quiero Ser/Luis Miguel (1987)

70年代の南米はどこの国も、第二のキューバを作らせまいとする軍事政権の時代で、背後にアメリカがバックについていました。自由と社会的平等(南米は貧富の拡散が激しいところなので特に)を求める若者たちは政治犯にされ苦難の時代でした。チリも独裁者ピノチェトに多くの若者が殺された時代ですが、気鋭のフォークシンガー、ヴィクトル・ハラも1973年の軍事クーデター勃発直後に処刑されます。ただ、彼の歌は現在もこの国のプロテスト・ソングの象徴になり続けています。

南米で軍事政権だった時代は、むしろアメリカでラテン移民のバンドが活躍した時代でした。サンタナ、そしてラテン・ソウルバンドのウォー(写真)ですね。ともにカリフォルニアのバンド。特にウォーのちょっとラテン入ったファンク、メッセージ性の強い歌詞はヒップホップとも親和性、いいですね。

ロックを禁じられたメキシコでは、メキシコの伝統音楽の回帰が強まりました。ヴィセンテ・フェルナンデス、そして写真のロス・ティグレス・デル・ノルテがヒットを出しますが、ティグレスなんかは少しロックの影響あるんですよね。この辺りは近年のこの辺りのサウンドの再評価で入れさせていただきました。

で、80年代の半ばにメキシコでロックが再開されまして、スリー・ソウルズ・イン・マイ・マインドが発展解消してできたエル・トリ、ボデジータ・デ・ヘレス、女性ロッカーのセシリア・トゥーサンが出てきます。

その一方で

スーパー・ティーン・アイドルのルイス・ミゲルが出てきます。歌かなりうまくてかっこよくて、中南米中で大スターになります。彼は脱皮にも成功して90s以降はラヴ・バラードのシンガーとしてヒット連発。僕がNHK絵番組やってた時期はその路線の初期でした。ただ音楽的には正直、つまんなくなるんですけどね。


La Bamba/Soundtrack (1987)
Caifanes/Caifanes (1988)
Corazones/Los Prisioneros (1989)
Fobia/Fobia (1990)
El Circo/Maldita Vecindad Y Los Hijos Del 5to Patio (1991)
¿Donde Jugarán Los Niños?/Maná (1992)
Re/Café Tacvba (1994)
Clássicos De La Provincia/Carlos Vives (1994)
Amor Proibido/Selena (1994)
Invisible/El Ley (1995)

1987年には、アメリカのメキシコ移民のロックンローラー、リッチー・バレンスの伝記映画「ラ・バンバ」が世界的にヒット。これが拡大しつつあった南米をネットするマーケットも刺激するようになります。

そして各地のシーンが刺激されます。

80s後半からメキシコで本格的に始まったバンドブームではカイファーネス(左)、カフェ・タクーヴァ(右)と言った、よりモダンなバンドが出てきてシーンを活性化させます。マルディタ・ヴェンシダやフォビア、アメリカ市場で特にブレイクしたマナーもそうですね。あと、次の段落で出てくる女性フロントのゴス系のサンタ・サビーナもそうです。

チリにも国民的パンク、ニュー・ウェイヴ・バンドのロス・プリジネロス、エル・レイ、次の時代に入りますけど、ルシベル、ロス・トレスと90年代にかけて出てきて、軍事政権の終わったチリを盛り立てます。

そしてアメリカでは、メキシコ移民のラテン・マーケットの女性シンガー、セレーナが、アメリカ市場での英語デビュー直前に殺人事件で命を奪われます。しかし、この悲劇性を持ってアメリカでのラテン・ミュージック人気が爆発します。


El Dorado/Aterciopelados (1995)
Viajar/Lucybell (1996)
Babel/Santa Sabina (1997)
Fome/Los Tres (1997)
Donde Jurgaran Las Niñas/Molotov (1997)
Mucho Barato/Control Machete (1997)
Donde Estan Los Ladrones/Shakira (1998)
Chúntaros Radio Poder/El Gran Silencio (2001)
Si/Julieta Venegas (2003)
Mi Sangre/Juanes (2004)

90年代後半になると、コロンビアが一気に台頭してきます。一つは南米オルタナティヴ・ロックの雄、僕も尊敬してますアテルシオペラードス。リードシンガーのアンドレア・エチェヴェリはビヨークとかPJハーヴィーが生まれた時代らしい進歩的な女性アイコンです。

そしてシャキーラですよね。ミレニアムのラテン・ポップブーム以降、世界的なポップスターになりますけど、90sの頃はまだ若干ロックっぽかったんですよね。彼女のコアファンはその頃の彼女を求めてるところ、まだありますね。あとフアネスもそうですし、音楽じゃなくテレビドラマでも「アグリー・ベティ」もコロンビア生まれ。この頃のコロンビア、すごかったんですね。

あと、メキシコの台頭がめざましい時期です。モロトフ、エル・グランシレンシオ、ヒップホップのコントロール・マンチェッテとコワモテ系が目立ちますが

フリエッタ・ヴェネガス、大事ですね。彼女が現在におけるメキシコ・インディ女子の走りなので。彼女のあとにナタリア・ラフォルカーデやモン・ラフェルテが続いてますのでね。


Programaton/Zoé (2013)
Hasta La Raiz/Natalía Lafourcade (2015)
Mon Lafaerte, Vol.1/Mon Lafaerte (2015)
Amanecer/Bomba Estéreo (2015)
Atrasado En Un Sueño/Junior H (2020)
Mira Lo Que Me Hiciste Hacer/Diamante Eléctrico (2021)
Pa Que Hablen/Fuerza Regida (2022)
Desvelado/Eslabon Armado (2023)
Submarine/The Marias (2024)
Keep Me Fed/The Warning (2024)

ラストも語ること、多いですね。メキシコ・インディの強い流れが続いてます。女性アーティストもそうですけど、この国のレディオヘッドなのかこーtルドプレイかは見る人の判断によりますがゾイってバンドも重要です。

あと、コロンビアが相変わらず安定の強さですね。この国のEDMミクスチャー・バンドみたいなボンバ・エステレオにシティ・ポップ・バンドのディアマンテ・エレクトリコ。

でも今やっぱり今一番強いのは、メキシコ伝統音楽祭解釈組ですね。MCスタイルでヒップホップ風に再解釈を始めたのが、写真の赤いジャケット着たジュニアH、そしてアメリカでビッグになったペソ・プルーマ。そしてそれをバンド・サウンドで支える、プッパパ、プッパパなトロンボーンでおなじみのエスラボン・アルマーダ。アメリカ移民の同型のバンドのフエルサ・レジダも重要です。

あと、今年に入って注目はこのエリアからのバンドですね。

一つはロスアンゼルスのラテン移民のザ・マリアズ。バッドバニー始め客演が多く、それを今年のアルバムの全米28位の成績につなげましたね。アーバンなオシャレ・サウンドで人気です。

そしてメキシコの第2都市、モンテルレイが生んだハードロック3姉妹ザ・ウォーニング。全員2000年代生まれの3人で、10代の頃からYouTubeで名物姉妹として知られ、その信じがたいテクニックで話題になってましたが、そうした人たちにありがちだった中途でのフェイドアウトもなく順調に成長。出たばかりの新作が、ドイツでトップ20に入り、アメリカでも59位に入ってきてます。ただでさえ女性のロック系のアーティストに今追い風吹いてますからね。僕は彼女たち、かなり期待してます。



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