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ネットフリックス「コブラ会」 傑作!単なる「ベスト・キッド」続編を大きく超えた「今日のアメリカへの提言」(ネタバレ注意)

どうも。

この1週間で僕が一番ハマっていたのは、これでした!

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はい。「コブラ会」!

このコブラ会なんですが、ご存知のかたもいらっしゃると思うんですが、

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1980年代に大ヒットしました青春映画シリーズ「ベスト・キッド」、僕はあんまり好きじゃない邦題なので原題の「カラテ・キッド」と呼ぶんですけど、これの30年以上の時を経た続編です。

 これ、本当にヒットしましてね。僕自身のことでいえば、高校受験に受かった日に、姉と北九州の映画館に見に行った思い出があります。1985年3月のことでした。

今回は、主人公をラルフ・マッチオ扮するダニエル・ラルッソではなくて

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ニュージャージーの貧しいイタリアン・コミュニティからLAに転校したばかりだったダニエルをいじめていた高校のいじめっ子で、「情け無用」をポリシーとする「コブラ会」のカラテ・チャンピオンだったウィリアム・ザブカー扮するジョニー・ローレンスが主役です。

いわば、主役をスワップして行われる「カラテ・キッド」の続編で、これが2018年と19年に、YouTubeの有料企画で公開されていたんですね。僕もそのときに触りだけは見てたんですけど、YouTubeに金払いたくなくてそのままにしてました。それが、YouTubeでものすごく好評だったことから、もっと多くの人に見てもらうべく、

先週からネットフリックスに昇格しました。そこでシーズン1.2を見て、ここでも宣伝してますが、来年にシーズン3もやるよ、という告知もしています。

そこで、ちょっと気になって見てみたんですよ。そしたらこれが

もう、最っ高に面白い!!!

いやあ、もう、これ、「続編」なんてレベルじゃなく面白いです!ひとつの、現代の作品として見て、すごく意義のある作品です。

今から、あらすじから説明しますが、「ちょっと見てみたいから、知りたくない」という人はここから先は読まないでください。

では、あらすじ行きましょう。


ストーリーは2018年。ジョニー・ローレンスが落ちぶれた生活をするところからはじまります。映画では「金持ちの息子」の役のはずだったジョニーでしたが、それは母親がハリウッドのプロデューサーと再婚したがゆえのこと。その母親が亡くなってからは、そのショックと、愛情を与えてくれなかった継父との関係も更に悪化し自閉的な生活を送っていました。生活はクビになってばかりの日雇い生活。生きがいは、冷蔵庫に詰めたビールを飲むこと、赤い中古車で80sのメタル、アリーナ・ロックをかけてドライブすることだけでした。

さらに

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さらに、映画の第1弾の決勝でダニエルに負け王者陥落したことがいつまでもトラウマで残っていました。この試合に負けて、彼は道場の恩師にリンチされ空手をやめてしまっていました。さらに、ダニエルに、現在に至っても一番愛していた恋人のアリ―をとられたとも思っていました。

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そんなある日、ジョニーは、近所に引っ越してきたメキシコ移民の青年、ミゲルが不良高校生グループに襲われているところを、錆びついてなかった空手技で撃退します。当初、ミゲルのことを移民扱いして冷たくしていたジョニーですが、徐々に奇妙な友情が芽生えていき

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ミゲルから熱烈に請われる形で空手のレッスンを与えはじめます。彼はここを起点に、かつて自分を育てた道場「コブラ会」を復活させようとします。ミゲルはなんとかジョニーを助けようとサイトまで作って彼を支援します。

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一方、ダニエルは成功したカーディーラーになって、自分のチェーン店を持ちTVCMを打てるほど商売繁盛してました。CMでは空手技と盆栽をフィーチャー。空手への愛は尽きません。ただ、私生活は空手から遠ざかり、師匠のミヤギ氏もだいぶ前に亡くなっていたこともあり、なんとなく物足りない日々を送っていました。

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しかし、車の営業上、偶然ジョニーと再開し、彼がにっくきコブラ会を再開させようと知り、ダニエルはいてもたってもいられなくなります。

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ダニエルにはかわいい女子高生の娘、サマンサ(サム)がいました。裕福な育ちをした彼女は、学校で嫌味な金持ち連中と最初はつきあっていましたが、当初つきあっていたアジア系の野郎がいじめっ子のいやなやつだということを知ってしまいます。ミゲルはそいつのグループに襲われていたのですが、ある日、学校のカフェテリアで、遂に空手技でその連中をやっつけ、たちまち学校のヒーローに。それを素敵だと思ったサムと、そこから恋愛が始まります。

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すると、ミゲルの学校での武勇伝から、コブラ会に、これまでクラスでいじめられていたタイプのキッズが集まります。ジョニーはその子らに当初、差別的な言葉を浴びせていましたが、生徒はすぐに減少。ミゲルのアドバイスもあり、ジョニーは自分の攻撃的な姿勢の空手を「いじめられても、負けずに立ち向かっていけ」と「自分に自信を持つ」というメッセージで転化させ、生徒たちをやる気にさせます。

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一方、ジョニーには、未婚の女性との間に息子のロビーの存在がありました。その母親は男と遊んでばかりで完全な子育て放棄。父親のジョニーも、一緒に暮らしたことはなく、「生まれたときでさえ会いに来なかった」事実に傷ついており、ジョニーのことを軽蔑して寄り付きません。彼は学校もドロップアウトし、不良少年まっしぐらだったのですが、父親のはじめたコブラ会のサイトで、「かつて父を倒した男がいる」と知り

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ダニエルの会社に近づき、働きはじめます。ロビーはダニエルに空手を教えてほしいと請います。するとダニエルは、ミヤギ師匠に映画の中で教えられたワックスがけと塀のペンキ塗りからロビーに教えはじめます。ダニエルは、ひとつにようやく誰かに空手を教えられる喜び、そしてもうひとつはジョニーへの対抗心で、ロビーの教育に熱がこもります。

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これまでの人生に「心の平静」と「献身的な愛」を受けたことのなかったロビーは、ダニエルの「あくまでも護身術」で心のバランスを大事にする空手道に魅せられてしまいます・・・。

・・・で、シーズン1が進んでいきます。

そしてシーズン2では

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80年代に受けた「空手協会永久追放」処分から立ち直り、一気に名声を高めたコブラ会に、創始者のジョン・クリースが姿を表します。自分にリンチをかけた傷から最初、ジョニーはクリースを追い返そうとしますが、コブラ会消滅後にクリースの暮らしがみじめで孤独な老人になっていたことを気にかけ、「俺だって変われたんだから」と温情をかけ、コーチとして迎え入れます。

しかし、映画のときから比べると、だいぶおじいちゃんっぽい言動にはなったものの、「汚い手を使ってでも相手を攻撃しろ」という、もうジョニー自身が全く好まなくなった手法を、彼はジョニーが目を離した隙きに生徒に教え込み、それが危険な火種になります。

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一方、このシーズン2からサムは子供のとき以来に空手を再開し、父ダニエルの道場「ミヤギ道場」の立ち上げをロビーと共に助けようとします。ミゲルとの関係がこの頃、ギクシャクしている間に、コブラ会に、強いものの喧嘩っ早い女の子、トーリが入ってきて、サムとの間に激しいバトルの炎が燃え上がります。

すると、コブラ会のキッズたちはクリースのふっかけもあり、ミヤギ道場に強い敵対心をもやし、それがエスカレートし・・・。

・・といった感じです。

ストーリー、なかなか凝ってて面白いでしょ?

いやあ、これ、脚本が本当に見事なんですよ!

面白いポイントを見ていきましょう。

①ジョニーの美貌と成長

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今回、この30年越しの企画が通ったのは、ひとつ大きかったのが、ジョニーを演じるウィリアム・ザブカの容姿がすごくかっこいいままなんですね。いや、むしろ、いい男になってるんですよ。これが、妙な説得力を持っています。もし、これが仮に、彼の老け方が良くなかったら、これ、企画自体、成立してなかったと思います。聞いた話だと、彼、インディ映画とか、ドキュメンタリーの制作とか、そういう方面でも仕事してたんですって。かつての役は本当に甘やかされて育った嫌なヤツという感じだったんですけど、実際の彼はすごく真面目な努力家タイプ。かつての子役にありがちな自堕落な崩壊した生活とは無縁だった模様。それが30年後にこうやってお釣りとして返ってきた感じですね。

②「カラテ・キッド」時のキャラクターが生かされたままの、ダニエルの納得のいく大人への進化

ここも見事ですね。ジョニーの方は、このドラマからの成長が立派なんですが、ダニエルの今回の設定がまた見事です。

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ここでのダニエルなんですけど、本当に絵に描いたような善人なんですよ。精神の根底の基本にあるのは愛で、家庭優先の愛妻家でもあって。この写真の人が奥さんなんですけど、頭が切れるすごくいい人です。空手を教えるのも、決して派手さや攻撃性を求めず、穏やかさで徹底されています。

 ただ、それがゆえに、娘の教育にはちょっと口やかましくなりすぎて、暴力や憎悪を増長するコブラ会のやり方がとにかく許せない。そこのポイントだけ、正義感から、怒りがわかずにいられない。まあ、この点に関しては「人をいじめたりすると、こういう争いしか生まなくなるよ」というメッセージのようにも見えますけどね。

ただ、「カラテ・キッド」のファンからすれば、うれしいんですよ、これ、「ああ、あのダニエルがミヤギさんの教えを守りすぎるくらい守って成長したんだな」ということがわかって。この点に関して、期待が裏切られることは全くありません。

③子供たちを介した「スワップ」と「ロミオとジュリエット」

今回、何が良いかって、新キャラクターである子供たちの話が、それだけ見てるだけで十分楽しめるくらいに濃いことです。

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ひとつは、ダニエルの娘サムと、ジョニーに「コブラ会」を開かせるきっかけを作ったミゲルのロマンスですね。ジョニーとダニエルにしてみれば、敵の側の子供とつきあうことになるわけですから、許されるはずがない、親(親代わり)のそうした事情もわかって付き合おうとしているから、ここがジョニーとダニエルの対立をロマンティックな形で増幅させる一因となっています。

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そして、ジョニーの息子のロビーがダニエルの一番弟子になることですね。ここも禁断要素をさらに高めています。ネタバレさらにしてしまうと、

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こういうことにもなってしまうわけですが、サムが恋愛すればするほど、禁断要素が高まってしまう。このあたりは、空手を介さなくても、ドロドロの家族サーガとして楽しめます。

さらにいうと

この子供らが、揃いも揃って美男美女!

有料YouTubeのみのヒットだったので、そういう広がり方、してないようなんですけど、ネットフリックスでの放送解禁になったことで、この魅力に気づくティーン、出てこないかなと思いますけどね。

④80s満載の音楽

この使い方は、どっちかというと、アラフォー、アラフィフが楽しめます。

劇中、70s後半、80sのメタル、アリーナ・ロックがとどろきます。

一番の名シーンはここですね。

ジョニーとダニエルが車の中でREOスピードワゴンの「Take It On The Run」を合唱するとこですね。ポップ・ソングが緊張した関係の中でもちょっとした雪解け効果になることを示していて、僕みたいな立場にある人としは嬉しかったですね。

あとジョニー、精神的な成長はするんですけど、カルチャー的には80sで完全に止まってしまってるオッサンです(笑)。そこがギャグとして絶妙な効果を果たしてます。恋愛するのでも、思い出すのはホワイトスネイクのこの曲とかね。

ちなみにこの女性、ミゲルのママなんですけど、すっごセクシーなラテン美女なんですよ。子供たちより、この人に胸がときめいたのを告白すると同時に、「年取ったな、自分」と思いました(笑)。

⑤コメディ要素がだいぶ強い

このように、おっさん化したジョニーを、このドラマ、結構自虐的にからかってるんですけど、コメディの要素強いんですよね、これ。

ところどころにコメディ的なキャラクター、配したりしてます。

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ミゲルの友達の激ナード野郎のディミトリというキャラは特に笑えます。もう、理屈から生まれてきたようなヤツで、空手教えようにもなかなか教えられない。こういうキャラは映画のときには出なかったタイプなので、ここも見ててかなり新鮮です。

そしてそして、このポイントが一番大事なんですけど

⑥話そのものが「今のアメリカの縮図」

この「コブラ会」なんですが、

話そのものが今のトランプ政権のアメリカ、そのものなんですよ!

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思えば「カラテ・キッド」そのものが、80sのアメリカの縮図でした。学校では白人の裕福な連中が威張ってる中、貧しいイタリア人街の少年と日本人移民が力を合わせて対抗し、戦いに勝ち、心優しい白人の美人の女の子もゲットする。そんな話でした。

こういう、「スクールカーストによる白人のいじめっ子」って、この当時多かったんですよ。それは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のビフであり、ジョン・ヒューズ映画のいじめっ子であり。ジョニーなんて、その最大の典型のように言われていたものです。

今から思い返すに、その「いじめる側」が後のアメリカのかなりの縮図だったように思えるんですね。年齢的にも合うんですよ。ジョニーがそうなように、あの当時の白人ティーンってメタルが好きだったし、それが20代後半の世代になればリンプ・ビズキットみたいな感じが流行り、40〜50代になって「ブロ・カントリー」という「ビールと女」を主題としたマッチョなカントリーを聞いている。そして、おそらくはトランプを支持しがち。もう、これ、年齢的に合致しちゃってるんですよ。

ジョニー自身も、運命がそれを変えなければ、そのコースまっしぐらだったはずなんですが


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「コブラ会」での生徒たちは、ケータイ・ジェネレーションのマイノリティたちばかり。そこには黒人もいれば女の子もいて、コンプレックスを抱いたいじめられっ子が多い。そもそも彼の人生を変えたのが、メキシコ移民のミゲルだったわけですからね。

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ここでのジョニーの生き方は、そんな「追い込まれたように見える」白人が、多様性の社会の中、どう世に対処していくべきかどうかの、かなり大きなヒントになってるんですよ。個人的には、ここが惹きつけずにはおれないですね。

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一方のダニエルの方は、「多様性と愛」をひときわ大事にする、どちらかというと90sから大きくなるリベラル路線の典型な人生。その2人が、実はもう、心が通じ始め和解しかかっているんです。ただ、蒸し返す昔の因縁や、ジョニー、ダニエルを愛するそれぞれの人たちの敵視でそれがなかなかかなわない、という感じです。

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そして、そこに浮上する、元祖コブラ会、クリースの、呪われた亡霊のような誘惑ね。もう、これが極右の象徴のようにしか見えなくてね。彼が、「自身をもちはじめたキッズたち」に必要以上の憎悪を植え付け、「弱い立場にいる人たち」、それが自分の本来のルーツでもあるキッズたちにまで自己否定までさせかねないほど、危ない力を持っている。ここはもう、現在のアメリカと照らし合わせて見ずにはおれません。

⑦シーズン3への期待膨らむ、シーズン2の終わり

そして、先程もいったように、来年にシーズン3があります。そして、それを迎えるに当たって

シーズン2の終わり方が最高だったんですよ!

ぶっちゃけていうと、かなり意外なショッキングな終わり方で、ジョニーが窮地に追い込まれるんですよ。「これであと半年、やきもきしなきゃいけないの?」というくらい、悩ましい終わり方です。若干、やりすぎ感もあるんですが、その昔、エイティーズの大映TVみたいな話の終わり方で、そこがまた快感だったりします(笑)。

これのラストシーンが絶妙で。もう、これ以上は言えません(笑)。ただ、これが知りたくなるということは、これまで話したことに興味を持っていただけたことだと思うので、あとは自分の目でいちから全部見てください。

とにかくこれ、かなり中毒的にハマりますよ。



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音楽ジャーナリスト。90年代にNHK-FMで番組を制作した後、99年よりフリー。2004年にインディ・ロック・マガジン「Hard To Explain」を立ち上げる。2010年よりサンパウロに移住。同年に洋楽・洋画・海外ドラマ専門ブログ「THE MAINSTREAM」をはじめる。