クイーン の楽曲が、商品開発のヒント
2018年秋に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディー」が爆発的なヒットとなり、世界興行収入は1,000億円を超えたようです。何度も観に行かれた方が多いと聞きますが、私も御多分に洩れず、16回映画館へ観に行きました。
2020年1月には埼玉、大阪、名古屋で来日コンサートも開催されました。
私がクイーンに出会った1970年代は、洋楽ロックの黄金時代とも言われ、Queenのほか、ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ドゥービー・ブラザース、キッス、スージー・クワトロ、ローリング・ストーンズ、イーグルス、ボブ・ディラン、アース・ウィンド&ファイヤー、エアロスミス等々、たくさんのロックグループが活躍していた時代です。
弊社社長も私も、Queenを40年以上に渡って聴き続けていて、マグリットの商品開発は、Queenの巧みな楽曲づくりもヒントの一つになっています。
2020年1月に来日したコンサートで人生初の生クイーンを体験させていただき、フレディーとジョンはいなかったものの、想像をはるかに超えたQueenの素晴らしさに度肝を抜かれました。
Queenは自ら「僕らは単なるハード・ロック・グループではない!」、と断言していて、独自の音楽センスを持った4人のメンバーがそれぞれ作曲を行うために、ロックとはいえ、楽曲のバリエーションがとても幅広いのも、40年以上聴き続けても決して飽きない最大の理由かもしれません。
各メンバーの作風には違いがありますが、多くの楽曲にはQueenらしい共通点があります。そのひとつが、何度も音を重ねる多重録音を施すレコーディング手法ではないでしょうか。
「キラー・クイーン」のギターソロ(ギター・オーケストレーション)のほか、「ボヘミアン・ラプソディー」のオペラ・パートでは、アナログの時代に180回ものボーカルのオーバー・ダビングが施されています。
▲ キラー・クイーン 1:30あたりからはじまるギターソロ(ギター・オーケストレーション)をお聴きください。
▲ ボヘミアン・ラプソディーのオペラ・パート
『ボヘミアン・ラプソディ』「オペラ・パート」はどのようにつくられたのか(1)
この分解された音源はどうやって入手されたのでしょうか? ボヘミアン・ラプソディーのオペラ・パートのマスターテープであれば、とても貴重なものです。本物であれば、これは凄い。
「ブライトン・ロック」のギターソロ、「預言者の唄」のアカペラ・パートのように、計算し尽くされたエコーマシンの使い方にも独特なものがあります。
▲ ブライトン・ロック ギターソロ(ライヴバージョン)2:10あたりから始まるエコーマシンを使った演奏をお聴きください。
▲ 預言者の唄 アカペラパート(ライヴバージョン)
そして、Queenの楽曲にはところどころに、効果音や何か判別不明な音を組み込んでいること、前後左右に揺さぶるように聞こえるレコーディングの仕方、瞬間的に使用するリバーブ等々。素人の私でも、レコーディングには、様々なアイデアが盛り込まれていて、かなりの時間と労力がかけられていることが想像できます。
また、シンセサイザーと間違えるような音色を出す、ハンドメイドギター”レッド・スペシャル”とブライアン・メイのプレイング・テクニック。
「ボヘミアン・ラプソディー」のように1曲のなかに、バラード、オペラ、ロックを入れ込む通常ではあり得ない曲調展開、絶妙なタイミングで転調したり、変拍子を入れたりする曲調。エフェクターを駆使して音声を上げたり下げたり。あとは、完璧なコーラス・ハーモニーでしょうか。
ファーストアルバムの“戦慄の王女”から、レコーディングに携わった、プロデューサーのロイ・トーマス・ベイカーは、Queenの楽曲に大きな影響を与えた一人です。
Queenとロイとはお互いに”運命の出会い”というべきで、Queenはロイのプロデュースによって、楽曲が洗練され、ロイはQueenによって、グラミー賞やギネス世界記録など多くの賞を受賞することができたのです。戦慄の王女、QueenⅡ、Sheer Heart Attack、A Night At The Opera、JAZZの5枚のアルバムをプロデュースしていて、私が特に聴き続けてきたアルバム、戦慄の王女からA Night At The Operaまでは、ロイのプロデュースによるアルバムでした。
すべての楽曲ではありませんが、Queenの楽曲は、ロックとはいえ、ドラマティックな展開があり、起承転結を感じる楽曲もあれば、とても神秘的で芸術性を感じる楽曲もあります。
別の見方をしますと、ある意味、音楽のシュルレアリスムではないか、と思うことがあります。シュルレアリスムの技法の一つに現代美術用語で“ディペイズマン”と呼ばれる技法があり、これは「意外な組み合わせを行うことによって、見る者を驚かせる」という技法です。
下記は、ベルギーの画家、ルネ・マグリットのディペイズマンの技法を使った代表作「光の帝国Ⅱ」です。上半分は青空が広がった昼を描き、下半分は街灯が灯った夜を描いています。相反する昼と夜を見事に一枚の絵にまとめています。
このディペイズマンの技法を美術から音楽に置き換えた場合、Queenの楽曲も、衝撃を覚えるような独創的な曲調展開がありながら、それに反して一般的で耳に馴染みやすいメロディーラインもあり、この相反する二つが両立しているところも、大きな特徴の一つではないでしょうか。そして、忘れてはならないのが、数万人の観衆全員を巻き込む、フレディー・マーキュリーのステージ上でのパフォーマンス力です(映像でしか観たことはないのですが・・・)。
40年以上前に買った、レコード“QueenⅡ”の解説には、ロキシー・ミュージックのドラマー、ポール・トンプソンが、「あんまり仕掛けをしすぎる演奏」と批評している、との記載があり、プロのミュージシャンでも、レコーディングにはかなり手が込んでいる、と逆に認めている裏付けと言えるのではないでしょうか。
実は、1996年に誕生した、黒を基調とする初代マグリットホールは、1980年代後半にニューヨークで圧倒的な人気を博したナイトクラブ“ネルズ”が原形になっていますが、上記のように様々な工夫や多彩な仕掛けを施すQueenの楽曲づくりもヒントの一つになっているのです。
マグリットホールが完成した時点で、次なるホールのコンセプトは既に決定していました。それは、QueenⅡのアルバムコンセプト、A面をサイド・ホワイト「White Queen」、B面をサイド・ブラック「Black Queen」(レコードの時代は、表面をA面、裏面をB面と表現していました)とする着想がヒントになりました。
黒を基調としたマグリットホールとは対照的で、白を基調とするホールです。4年後の2000年には、真っ白なホール、ブルーアイズ(現 リバティー・ペントハウス)を完成させました。
“QueenⅡ”に収録されている「フェアリー・フェラーの神技」
様々なアイデアが凝縮されているこの楽曲は、あまりメジャーではないかもしれませんが、私を含めQueenファンのなかで密かに気に入っている人も多いのではないでしょうか。最初は、「Ogre Battle」と「Seven Seas Of Rhye」ばかりを聴いていたのですが、中学1年生の夏にこの楽曲と「The March Of The Black Queen」にハマり、数え切れないくらい聴き返した思い出があります。
ファンならご存知の方も多いと思いますが、この楽曲は、ヴィクトリア朝時代、“狂気の画家”と言われた、リチャード・ダッド(1817-1886)の、多くの人物や妖精が、びっしり描かれている「フェアリー・フェラーの神技」をモチーフとした同じタイトルの楽曲です。ダッドの絵と同じように歌詞には人物や妖精が多く登場し、曲調も転調を繰り返し、錯綜しています。
私としては、この絵だけをモチーフにしているのでなく、この絵を作成しているときには、既に精神に異常をきたしていたダッドの心理状態をそのまま楽曲に表現したかのようにも感じます。
リチャード・ダッド
イギリス南東部ケント州チャタムで生まれる。本格的に絵を描き始めたのは、13歳からである。1837年、ロイヤル・アカデミースクールの学生許可をとる。この年「眠るティターニア」がロイヤルアカデミーに「パックと妖精たち」が英国芸術家協会に展示された。この展示で批評家に絶賛され、将来を有望された画家であった。
弁護士のサー・トーマス・フィリップスが、ヨーロッパ、中東旅行に同行する画家を求めており、ダッド(25~26歳の頃)はこの仕事を得て、10カ月の旅行に出た。しかし、旅の後半から、ダッドの精神状態がおかしくなり、狂いそうな自分を抑え、急いで帰国した。ところが、ついに大きな事件を犯してしまい、一生涯、精神病棟で過ごすことになるが、ダッドにとって、絵を描くことで、知性の破壊を免れた。絵の話になると、聡明に話すことができたが、一旦妄想の世界に入り込むと話はつじつまが合わなくなった。1884年没。
ヴァーチャル絵画館より
「フェアリー・フェラーの神技」は1855年から1864年まで長年に渡り描き続けられ、細密描写を実現しているが、画面の左下部分だけが、下書きの状態となっており未完作品となっている。
アンティークアナスタシアより
「フェアリー・フェラーの神技」は小説としても出版されています。
主人公が幼い日に衝撃を受けた絵の謎を解くことで生きる意味を見出そうと、画家の足跡を辿る旅に出る話。
翻訳者 木村京子氏Amazon著者からのコメントより
この楽曲のライヴ演奏は絶対に不可能だ、と長年思っていましたが、you tubeにありました。但し、映像は他のライヴ映像の組合せのようです。
映画で初めてQueenを観られた方は「ボヘミアン・ラプソディー」5分53秒が最も長い楽曲だと考えがちですが、実はもっと長い楽曲があるのです。
“A Night At The Opera”に収録されている「The Prophet’s Song」(預言者の唄)が一番長いと言われていて、8分19秒もあります。その他にも、”戦慄の王女“収録の「Lair」6分25秒、”QueenⅡ“収録の「Father To Son」6分13秒、「The March Of The Black Queen」6分33秒などがあります。
しかし、本当に一番長い楽曲は、“Made In Heaven”に収録されている「Reprise」(インストゥルメンタル)は、なんと22分31秒もあるのです。2020年1月に来日したときのコンサート開始前20分ほど流れていた曲は、部分的にこの曲に似ているように感じます。
なかでも作曲・作詞共にフレディー・マーキュリーが手掛けた、「The March Of The Black Queen」は曲構成が“起承転結”を感じさせ、「ボヘミアン・ラプソディー」の原形を思わせるような楽曲です。フレディーはQueenが結成される前からこの楽曲づくりに取り組んでいたようで、この楽曲を完成するのに何年もかかったという力作です。曲調は全く違いますが、なぜか、「ボヘミアン・ラプソディー」を彷彿させられます。
▲ CDバージョン+映像は不明です。
マグリットでは、通常のウェディングのなかに、様々なアイデアを盛り込んでいて、そのなかには、三次元の絵の世界をイメージしたチャペル、ゲストの様子がわかる360°カメラ、挙式直前の4画面同時上映システム、自在に変えることができるチャペルのレイアウト、キャンドルの十字架、定説を逆説に変えた挙式の進行、ルネ・マグリットの「絵の扉」、キャンドルの壁、移動可能な2本の柱、窓から臨む吹抜けの空間、本格的な常設バーカウンター、直径450cmのマザーシップ・テーブル、50kgを超える天井から吊るすフラワーアレンジメント、キャンドルライトの効果を狙ったメリハリのあるライティング、コンサート仕様のスピーカー、パーティーの進行の組み方、フュージョン料理のメニュー・・・等々、これらの着想は、ベルギーの画家、ルネ・マグリットだけでなく、Queenの楽曲づくりも多大な影響を受けているのです。
株式会社マグリット
専務取締役 羽原正人
THE MAGRITTE @partylabo.
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