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不安に向き合い、不安を力に


アスリートの記憶力について思いをめぐらせていました。数か月前に対応したとある選手の引退会見。生涯で200ゴールをあげましたが、「すべて鮮明に覚えている」と、ゴールの場面を脳内再生することができます。テレビに映る試合後のインタビュー。MCの問いかけに、細かい描写ができる能力を前職時代に間近に見て感銘を受けたことを覚えています。

今日対応した取材でも、デビューから現在に至るまで時系列で、そのときどきを丁寧に言語化していて、あらためて感心しきり。絶好調のプレー場面だけではなく、大けがをしたときの対戦相手、時期、プレー描写も鮮明でした。そのときに「何を感じたのか」までよどみなく答える姿にただただリスペクトするばかりです。

「記憶力」は私たちの脳を不安に対して強くしてくれます。脳には、モチベーションを調整したり、ネガティブな感情を処理したりする背外側前頭前野という場所があります。記憶力や脳を使うタスクを行うと、その部分が活性化して、いいことが起きたら「よし、もっとやれる!」とモチベーションを上げたり、ネガティブな感情を受けとめて処理する能力を高めたりすることがわかっています。

脳に負荷をかける。いわば脳の筋トレのようなことをしていないと、どんどん不安に弱くなります。ネガティブな状況から目を背けることなく、受け止めるトレーニングによって不安への耐性が身につく。不安に強くなってくると、不安をモチベーションに変えられるようになります。

不安というのは、私たちがきちんと準備をしたり、失敗しないように細かいところまで注意を向けたりするための機能として存在しています。不安があっても、それを「悪くない」と思えるようになると、怖くなくなります。「このストレスが自分を成長させる」「とにかく今をがんばろう」 不安を自らのモチベーションに変換して、前に進んでいくのです。

「人間の脳は簡単に変えられる」ことは科学的にその信憑性が説明されていて、たった30分のトレーニングでも、人の脳から不安が激減することも報告されています。自分の不安っぽい性格は変わらないかもしれませんが、行動を変えていけば、思考が変わり、私たちは「変われる」のです。人格も変えられるということでしょう。

失敗を恐れなくなれば、チャレンジする楽しみしか残りません。いろいろなことに挑戦できます。失敗しないようにするのではなく、失敗してもいいと思えるように。失敗を楽しめるメンタルをつくることは科学的にも可能なことなのです。失敗しても、そこから多くを学んで、失敗してもただでは起きないといった感覚をつくることが大切。

漠然とした不安を根拠のない自信に変えていけば、その自信でがんばれます。先行きが分からない現代社会だからこそ、根拠のない自信をもって行動し、その行動回数を増やして、何がうまくいくのかを探求する必要があります。がんばって、ある程度うまくいって、自分はできる!自分の力で人生を変えられる!と思えるようになれば、「根拠のある自信」に。

根拠のある圧倒的な自信は、このようなメカニズムで育まれていくんだと思います。まずは不安を向き合う。そして不安をモチベーションに。最後は根拠のない自信で行動量を増やす。一つ失敗したら「OK!次!」と切り替えて。さもなくば成功など勝ち取れないと思います。

久保大輔




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