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不愛想からの笑顔が人の心を動かす

同じものでも、その前に起こった出来事次第で、まったく違ったものに思えてしまう。

コントラストの原理は「影響力の武器」でも紹介されています。営業担当者が、意識的か無意識的かを問わず使っているテクニック。悪用される場合もあるかもしれません。なぜなら見破ることが不可能だからです。

昨年、車を購入しました。特に車に関心があるわけではないのですが、2人の娘がまだ幼いこともあり、家族で遠出するときにはどうしても必要。妻の押しもあっての割と高い買い物でした。

そしてそのときのディーラーが実に巧妙。だいたいの予算感や車種、カラーなどを事前に伝えて提示されたタイプA。担当者は申し訳なさそうに説明してくれました。

以前乗っていたタイプより一回り小さく、価格も良心的。以前のデザインは生産中止になり、以前と同価格帯となるとこの「小さめのタイプ」しかないとのことでした。車内に入ってインテリアのチェック。ところどころ、気になるところが目につき始めました。「うーん…」と首をかしげていた私に向かって、「あと●●万出せそうでしたらこちらもあります」という声。

タイプBは以前のタイプより大きめ。でも内装はピカピカに見えてきました。ローンは●年。月々の支払額で換算すると、プラス●●万円は「誤差」 そう考えた私は即、妻に電話して事の成り行きを説明します。了承をえて購入したのはタイプBでした。そのときは満足感が先だって何とも思いませんでしたが、コントラストの原理を知って合点がいきました。

住宅販売なんかでも同じ「手口」を使うそう。「当て馬物件」と呼ばれる古めの家は、売るためではなく「ただ見せるためだけ」に用意します。これと比較すれば、本当に売りたい高めの物件が輝いて見えるからです

逆に高い商品を先に見せる場合もあり。紳士服のセールスパーソンは、スーツを先に売り込んでから、付属品(ネクタイ、ベルト、シャツなど)を紹介します。単品ごとでみるとわりと高価な付属品ですが、3万のスーツを買うと決めたあとは、それほど高価には思えなくなっています

FTRは、Fear-Then-Reliefの略。「恐怖からの安心」と言われる対比効果です。これは「超影響力」で解説されていますが、不愛想でめんどくさそうな人が一転、気さくな笑顔でしゃべりかけてきたら皆さんはどう感じるでしょうか?緊張感から解放されてほっと一安心。その隙をついて相手は、いろんな要求をしてくるかもしれません。でもそのとき皆さんはFTRの術中にはまって要求をのみやすくなっています。これもコントラストの原理に通づるところがあります。

ある程度年齢を重ねてくると、仕事において中心的な役回りを担うことが増えてきます。そんなとき私は性格上、周りにやさしく接してしまいがち。嫌われたくないという防衛本能が働くからでしょう。でも上述のコントラストの原理を思い起こせば、ちょっと「強面」で攻めたほうがいいかもしれません。

悪用は厳禁ですが、自分の理論や経験に絶対の自信があるのであれば、組織全体の利益を考えて「不愛想→笑顔」でメンバーの心を良き方向に操作するのもアリかもしれません。リーダーとしてメンバーの思考や行動を変えたい、影響を及ぼしたいと願うなら、ちょっとした恐怖を演じて、時間を見計らって優しく声をかけるというコントラストが功を奏すと思われます。

久保大輔




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