映画「クルエラ」(エマ・ストーン主演)

この映画は2021年製作だそうだから、私が見る映画としては極めて新しい部類に入る。そもそも映画館で見るという習慣がなくなって10年以上経つので。ところで、この映画、話の筋もさることながら、とにもかくにも主演のエマ・ストーンのクルエラ役に魅了される映画である。彼女はエステラというファッションの凄い才能を持つ野暮ったい女とクルエラという妖艶な悪女の一人二役を演じているが、その演技と厚化粧による変身ぶりが非常に光っている。彼女が最初にクルエラになって登場するシーンで、彼女の二人の“家族“は何でもないように会話しているが、見ているこちらの方は彼女の姿に思わずグッと惹きつけられる。それは魅力的というより魅惑的と形容したい。今ふと思ったが、あの表情豊かな演技には、なんとなくアメリカ版歌舞伎役者のような雰囲気も少し感じられる。

ややネタバレになるが、話の筋としては、やさしい母親にエステラとして育てられたヒロインの可愛らしい子供時代から始まり、しかし、すでにその頃から時々、生まれつきのクルエルな(非情な)性格が日常生活のそこここで顔を出す。そのため学校は退学させられ、生活に困窮したやさしい母親とエステラはある女性を頼って旅に出る。その後、やさしい母親はある事件で亡くなり、彼女は孤児に。そしてある日、ひょんなことから気のいい二人の泥棒と知り合い仲間となる。それから10年後、ファッションの才能抜群の彼女は、ふとしたきっかけでロンドンのトップデザイナーであるバロネスという性悪ばあさんの目に留まり、雇われることに。そして最初からバロネスの頼もしい右腕として活躍するが、そのうちにバロネスの黒い過去を知ってしまう。それは、あのやさしい母親は実はバロネスによって殺されたのだということ。その時から彼女はエステラを捨てクルエラとなって復讐を誓う。そして、ここから徐々にクライマックスになっていくが、例によって大きなどんでん返しが待っている。ヒントは「この親にしてこの子あり」である。

この映画はディズニーなので、もとよりそれほど深みのある映画ではないのだが、しかし、見終わってみると、改めていろいろと深く考えることもできる映画でもあった。つまり、それは、「悪」とは何かという根本問題についてである。

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