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入会しやすく退会しにくいサービスは人間を捕獲するモンドリである

2021年のお正月、近くに住む高齢の義父の家を訪れました。
そして、義父の家の通信費がやたらと高額で非常に搾取的に見える契約となっていることが親族の間で問題となりました。
その後、妻と義妹一家も含め、ふた家族で見直しに着手、1ヶ月を経てやっと全容解明し、収束が見えてきました(でもまだ完全解決していない)。

義父宅の契約は
・テレビ視聴(インターネットテレビ)
・インターネット接続プロバイダー契約
・固定電話
・携帯電話

の4つがセットになっていて、総額で約14,348円。
これが見直しによって9,373円に下がりました。
1か月あたり5,000円、年間6万円の支出削減です。

通信系のサービスを通常、新規入会から一定期間、料金が割り引かれるサービスがありますが、今回の比較ではこの入会時割引は考慮しておらず、入会時割引終了後の金額で比較しています(つまり入会時の今でいえばさらに金額差が出て、9,000円程度安くなっています)。まあ、上記の14,348円の中には義母の携帯電話料金1,370円とかも含まれていてそれも解約したので正確な比較でもないのですが、それでもかなり下がったのはご理解いただけると思います。

義父も高齢なので、亡くなったときにはどうなるか…考えてみるとこわいです。僕の母はも昨年亡くなったところで、相続手続きの煩雑さ、大変さは骨身にしみたばかり。あれにサブスク系のサービス解約の面倒さも加わると思うと考えただけでもゾッとします

そんな矢先に目にしたのがこちらの記事。

この記事だけでなく、サブスクサービスの闇を指摘する記事は増えてきましたが、サブスクまでいかない普通の定額契約のサービスであっても理不尽と思える内容のものは多いです。

僕が様々な記事や義父の件を通じて感じた「よくない定額系サービス事業者の理不尽さ」としては以下の3点が挙げられると思います。

良くない定額・サブスク系サービス事業者の理不尽な傾向
①公明正大性の欠如
②解約手続きの意図的煩雑さ
③顧客価値の提供は二の次

以下、順に上の3点について説明します。

まず、①公明正大性の欠如という姿勢についていえば、契約の結果どうなるのかが明らかでないパターンが多いということが特徴的な事実です。
例えばNUROひかりの場合「今なら一年間ずっと980円」と書いてあるけど1年後は月額いくらになるのかわかりにくい。(ソニーさんの名誉のために補足しますが、ちゃんと探したら書いてあるページもありますし、探し方によっては普通にたどり着けます。でもリテラシーが高くない方がその情報にたどり着きやすいのかは…。)

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「1年間の81%OFFの期間が過ぎた後は月額いくらかかるのか、それが他社と比べて安いのか。そうした記述が見つけにくい(別にNUROだけが悪いわけではなくてこの業界の慣行的なものだと思います)。
ある程度のリテラシーを持っている僕ら世代が見つけにくいのであれば、こういうのに疎い高齢者が一人で調べるのは相当のハイレベルな難度だと思います。

②解約手続きの意図的煩雑さについては、入会時は非常に入りやすいですよね。ネットでも電話でもすぐ繋がるし、契約もスムーズです。しかし、退会することのハードルの高さといったら。ネットで入会できるサービスでも退会には電話が必要だったり、電話してもIDやパスワードが必要だったり。そんなの高齢者が全部管理できてなくても責められないじゃないですか。しかし、IDとパスワードの情報がなければ、本人であることが特定できないと解約できないとか無理ゲーすぎます。多くの人はここで泣き寝入りせざるを得ない。

この入会と退会の煩雑さの非対称性を意図して作り出しているのは魚取りの罠の「モンドリ」と一緒ですよ。

モンドリとは竹や木材などを使い「魚などが入りやすくて、しかも出にくい構造につくられたカゴ」型の罠です。

意図的に入会しやすく退会しにくいサービスなんて、このモンドリを人間に対して仕掛けているようなものです。

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こんな商売がまかり通っている社会ってちょっとおかしいんじゃないかなと思います。
僕も商売やってる家に生まれて、今も自分が商売やってるのでよくわかるのですが、お客様の顔をちゃんと見てたら恥ずかしくてこんな商売できないだろうと思います。

③顧客価値の提供は二の次という企業姿勢は、結局、こうしたサービスが競争にさらされるのは入会時のみなので(それは①と②が原因なんだけど)結果としてユーザーに対する価値提供にフォーカスされてないということです。

サービスのフリをした顧客囲い込みの道具となっていて、ユーザーのための機能アップデートなどがなされているように見えない。

これは日本人の多くが感じている問題じゃないのかな?

だとすればこれからのデジタル庁とかでぜひ議論してもらいたいと思いました。

上記の
①公明正大性の欠如
②解約手続きの意図的煩雑さ
③顧客価値の提供は二の次
という課題は、裏返せば企業にとって必要となるものが浮き彫りになってきます。

すなわち

①公明正大性の欠如 → フェア(公明正大さ)
②解約手続きの意図的煩雑さ → イージー(手続きのしやすさ)
③顧客価値の提供は二の次 → バリュー(顧客価値フォーカス)

です。

これらは商売の基本であり本質でもあると思います。

これらを忘れて多くの企業が自分たちの視点、自分たちの論理しか持ち合わせなくなったとするならば、それは企業が自らの価値を棄損しているといえると思います。
もちろんその背景にはちゃんとしたルールが整備されない中での競争激化とかいろんな理由があったのでしょうし、企業だけの問題でもないと思います。

与えられた環境の中で利益の最大化をめざすのもまた市場競争の原理であり、当然の企業活動です。
正しい環境が実現しているかどうかは、公的利益の観点で判断されるべきでしょうし、そういう意味では行政や政治が適切な環境を実現すべく動くべきだと思います。
行政や政治が動くためには、我々国民がこうした現実に対して「これはおかしい!!」と声を上げなくてはならない。

僕が今、こうしてnoteを書いているのも、通信事業者を槍玉にあげて留飲を下げたいからではないんです。
入会当初の有利な条件のみを刷り込んで撒き餌をし、入会に比べて退会手続きを意図的に煩雑にする。
そうやって人間をモンドリ(罠)に追い込みがんじがらめにして利益をしゃぶり続ける。
そんなことが企業活動としてあたりまえに許されていることはおかしいよねという共通認識を国民の間に定着させ、それにより政治家と行政を動かし、社会をより良い状態に変革する。
そのために少しでも役に立ちたいという思いからのことです。

そしてそう言う事実をあきらかにし、声高に叫ぶのは今だと思うんです。
コロナ禍により、より良い社会実現への機運が高まっている今こそ、これを解決すべき問題として多くの方に認識していただき、解決へ向けて前進する。この記事がそのきっかけになるとよいなと思います。
ご賛同いただける方はよかったらぜひシェアしてもらえるとうれしいです。

銀行などの金融サービスでは、法律上、サービスに関するAPI(提供されるサービスに外部のサービスが連動できるようする仕組み)の公開が義務付けされたりしています。個人的には、世の中の定額サービス・サブスクサービスでも同様にAPIの公開が義務付けされ、入退会の手続きの煩雑性が非対称でないものになる、自由に入退会ができるようになる社会が実現されるべきだと思っています。そうすることで、この記事でとりあげた問題も解消されるだけでなく、サブスク市場ではサービス品質を競う適正な競争が促されることで市場はもっと活性化していくはずですし、「情報銀行」のようなサービスも現実的なものになっていくのではないかと思っています。


さて、そろそろ義父の手続き代行の続きをしなければ…


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