【実例で解説】ARコンテンツの品質を高める絵コンテ活用法(後編)
デザイニウムでは、プロトタイプ開発に着手する前段階として、アイデアの可視化や体験フローの確認に絵コンテを活用しています。前編ではアイデアの可視化に焦点を当て、デザイニウム独自のアプローチをご紹介しましたが、後半ではAR体験フローの確認における絵コンテの重要性について解説します。
具体的なプロジェクトの実例をもとに、絵コンテをどのように使って体験フローを構築していったかをご紹介します。それぞれのプロジェクトの実際の動画で、絵コンテでの設計がどのように反映されたのかを確認していただけます。
ARコンテンツ体験フローの絵コンテ
1. Spectacleを活用した浅草での「AR TimeMachine」
デザイニウムが開発したAR TimeMachine(ARタイムマシン)は、江戸時代や明治時代など、さまざまな時代の浅草の街並みや賑わいを再現する体験型ARコンテンツです。ARナビゲーションに従って浅草寺周辺を巡りながら、歴史的な背景も学べます。
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2. ビリケン像でのAR体験「Billiken Diversity」
デザイニウムが手がけた「Billiken Diversity」は、大阪のシンボルであるビリケン像にスマートフォンをかざすことで体験できる「BILLIKEN EMOTIONS」と、どこでもビリケンさんのパレードが楽しめる「BILLIKEN PARADE」を開発しました。
「Billiken Diversity」のプロジェクトでは、事前に絵コンテを用いてシーンごとのインタラクションやビジュアル表現を詳細に設計することで、ユーザーがわかりやすく楽しめる体験フローが実現しました。
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3. ARで楽しむ動物たちの計測アプリ「めじゃにまる」
iOSアプリ「めじゃにまる」は、ARで動物や人を計測単位として活用し、長さや面積、体積を視覚的に計測できるエンターテインメント計測ツールです。目の前の人を計測基準に設定することもできます。
動物たちが現実世界の風景と並んで表示されるため、よりリアルにそのスケールを感じられるのが特徴です。体感的に高さが把握できたり、様々な動物を並べて比較を楽しむことができます。
絵コンテを用いてユーザーがどのようにアプリを操作するか、体験フローを具体化しました。たとえば、動物のモデルが現実空間に表示され、目の前の物体や人と並べて比較するプロセスを視覚化。各ステップの画面構成や動物の位置調整など、操作が直感的に理解できるようなUI(ユーザーインターフェース)を検討しました。
iOS版アプリ
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4. ビルへのARコンテンツ投影「なんばスカイオ」
デザイニウムと一般社団法人関西イノベーションセンターが、不動産総合デベロッパーである三菱地所株式会社と共に、複数の大型商業施設において、各施設の運営事業者向けに、VPS(Visual Positioning System。カメラの画像情報を用いて位置を特定する技術)を活用したAR技術の活用に関する実証実験を実施しました。
「なんばスカイオ」はその舞台に選ばれました。ビルの壁面をキャンバスに見立て、広告用の3Dエフェクトを投影。高さを活かした空中ブランコで、ARキャラクターがビルに貼ったポスターから、ビールやレモンのCGが迫力をもって登場します。
絵コンテを用いて、実際のユーザーの位置や角度に応じた見え方を確認しました。スクリーン全体を一つの大きなキャンバスとして活用し、遠くからでも近くからでも楽しめるインパクトのある構図を設定。これによって、体験の流れやユーザーの視線誘導を最適化。巨大なビル全体を使ったダイナミックな演出がユーザーの目を強く引きつけました。
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5. ビルへのARコンテンツ投影「グランフロント大阪」
「なんばスカイオ」同様に、「グランフロント大阪」建物の外壁全体にインパクトのあるARコンテンツを投影しました。UFO風のARキャラクターがビルに現れ、メッセージを発信するコンテンツが登場します。
このプロジェクトでは、絵コンテを活用して、ARキャラクターやメッセージがユーザーの視界に自然に入るように、出現するタイミングや位置をシミュレーション。各エフェクトが発生するポイントや、ユーザーがどのタイミングで自然に見上げるかといった視覚的な動線を検討ました。
ビルという巨大な空間を舞台にしたAR演出ですが、絵コンテを用いることで、訪問者の視線を意図的に誘導し、スムーズかつ没入感のある体験設計が実現しました。
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6. AR玉手箱
このプロトタイプは、「触れるまで何が出てくるか分からない」というサプライズ体験を軸に、商業施設の回遊率を高めるARコンテンツとして設計されました。宝箱に近づき、足で踏んだり画面をタッチしたりすることで、ユーザーはクーポンやポイントを入手できるほか、モンスターが現れたり、上から岩が落ちてきたり、音楽が流れたりと、予測不可能な要素を楽しむことができます。
このようなインタラクティブなAR体験を形にするにあたり、絵コンテは構想段階から重要な役割を果たしました。絵コンテを用いることで、宝箱の配置やインタラクションのタイミング、各演出がユーザーにどのように見えるか、どのように感じられるかを具体的にシミュレーションすることが可能になりました。これにより、ユーザーがどの場面で驚き、どのように回遊したくなるか、体験フロー全体の設計がスムーズに進みました。
さらに、絵コンテを活用することで以下のような追加機能のアイデアも出てきました:
コレクション要素やスタンプラリーの導入:特定キャラクターとのコラボによる限定アイテムの収集、コレクションの達成感を高める演出
ショップ特典や広告情報の提供:施設内を探索する中で自然と広告情報に触れられる仕組み
ポイントシステムとクーポン交換:ポイントが貯まる喜びと、それをクーポンに交換するインセンティブ
リピートを促進するログインボーナス:毎日の来訪に対してのボーナスポイントで再訪を促す
絵コンテで体験フローを視覚化したことで、コンセプトに基づいたARコンテンツ案も膨らみました。
まとめ
本記事では、デザイニウムがARコンテンツ開発において「絵コンテ」を駆使する重要性を、具体的なプロジェクトの事例とともに解説しました。
絵コンテは、AR体験を最大化し、ユーザーに直感的で没入感のある体験を提供するために不可欠なツールです。視線の誘導、演出の一貫性、感情を引き出すデザイン、インタラクションのタイミング、そしてユーザーの理解を助ける視覚的ガイドなど、ユーザーの期待に応えるAR体験の土台を構築しています。
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