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一乗寺フェス2022 レビュー 前編


photo by 高橋良平

 前編では設営の様子に加え、いちなん屋上、恵文社コテージでのライブのレビューを公開します。後編ではRAVENALAでのライブの様子と、一乗寺フェス全体の様子をお伝えする予定です。ぜひ前編後編合わせてご覧ください!

 こちらが公式サイトです。

https://fest.ichijoji.net/2022/



設営

いちなん
 急な階段を上がった3階の屋上に機材が運び込まれました。ターンテーブルにスピーカー、マイクなどが一面に黒くズラっと並ぶ屋上には、朝の9時から容赦なく日が差し込んでいます。着々と機材が組み立てられていき、カーペットを中心としてステージが出来上がりました。さらに、屋上の塔屋の上にもスピーカーなどを置いたステージが作られているため、上から音が聞こえる設計がされています。比叡山と大文字山に加えて、修学院の街並みが見渡せるというロケーションの、いちなんの屋上。時折「一乗寺フェス」と書かれた緑の旗が揺れて、もうすぐ始まるライブへの期待が膨らみます。

配信ならではの屋上でのパフォーマンス(燻製工房 焼肉屋いちなん)

恵文社コテージ
 恵文社のコテージでは、オレンジのカーペットのステージを中心に設営がされています。ステージ周りにはカラフルな椅子が置かれ、さらに外側にカメラや卓が配置される予定です。キッチンカウンターの上には流木と草が並べられて、いちなんの開放的な空間とは異なり、木の床の恵文社コテージや、出演者にピッタリな、ナチュラルな空間が作り込まれていると感じました。

会場装飾には、一乗寺でショップ兼アトリエを営む 中野智仁(ASTONISH)が参加

ベノワ・ミロゴ / いちなん

 いちなんの屋上に登ると、大きなバーベキュー用の鉄板が設置されており、美味しそうな肉の香りが漂っていた。ステージには、ひょうたんに共鳴する木琴であるバラフォンやヒョウタンが共鳴胴になっているンゴニ(コラとも呼ばれる)など、アフリカの民族楽器が置かれていた。彼の刻むリズムや、それらの音色は、聴き慣れていない新鮮な、現地の音楽そのものだった。彼の後ろに飾られた、「あなたに届けたい アフリカの心と風」と書かれた幕そのままに、いつもの一乗寺の風とは違うものを感じられたように思う。カオティックともいえる屋上では、さらに大人たちがビール片手に、リズムに乗り、踊っている。彼の後ろ、西側に夕日が沈みかける頃、盛り上がりは最高潮に。
 魅力的な会場の様子は、ドローンの上空からの映像と共に楽しむことができる。


西アフリカの伝統的な楽器「ンゴニ」
複数の楽器を確かな技術で演奏するベノワ・ミロゴさん

浮(ぶい) / 恵文社コテージ

 一乗寺の本屋、恵文社の奥にあるコテージでは、さんの演奏が行われた。彼女の、前の音を残ししながら音が移り変わってゆく声がとても綺麗だったことが印象に残っている。シームレスに音が変化し、声の震えが入ることで、民謡っぽさを感じる。そこに、誰もが想像することができる懐かしさを感じるが、時間は気づいた時には進んでいる。今を生きていることに気づく、ハッとする瞬間がある。
 以前、グソクムズとコラボした『暮らし的』と言う楽曲を聞いた。特徴的なはっきりした男声ともマッチする、男声の裏声のような、寄り添っているようで共存している存在感があるという印象を受けたのを覚えている。今回ソロで聞いたが、やはり裏声、余韻、空間のような歌声だった。本人が目の前で歌っていることが信じられず、目を閉じて空間に耳を澄ませながら聴いていたように思う。

 恵文社のコテージは反響が大きく、閉じられた空間で何度も響く音をより聴くことができた。暖色系の照明の下には、味のある木の床、大きなオレンジのカーペットが敷かれていた。彼女の後ろ、バーカウンターのテーブルの上には、流木と原色の花が飾られていた。ワイルドフラワーのような色とりどりの花は、緑とも流木とも相性が良く、コテージの空間を彩っていた。

ASTONISH中野さんの装飾と溶け合う浮さんの演奏

公式ホームページ

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児玉真吏奈 / 恵文社コテージ

 恵文社のコテージで児玉真吏奈さんの演奏が行われた。
 色とりどりの花の前、オレンジのカーペットの上にはナチュラルな空間に似つかわしくない、P Cとキーポード、サンプラーのような機材が運び込まれる。これから何が始まるのかという期待の中で、中低音のリズムが刻まれはじめた。
 打ち込みの音と透明感のある声は、一見調和性がないように見えるが、ぴったりと合っている。横に繋がっている歌の1文字の間に何度もリズムが刻み込まれることで、余韻に波が生まれ、音がグラグラと揺れていた。音を幾重にも重ねるが、ミニマムに整然とまとまっているため、音自体をよく聴き、出てくるひとつひとつの音に聴き入る。そこには、普段音楽に持ち込むことがないような音もある。定かではないが、舌打ち、リップ音、飲み込む喉の音などがリズムを刻む音楽の一部として扱われていた。また、言葉を一度分解し、音そのものとして扱う作業を目の当たりにした。曲間のMCで「一乗寺フェスに出ることを楽しみにしていた。」という内容の話を録音し、その後に続く曲の中で、先ほどの録音の言葉を加工して分解してゆく。その音の中で、「一乗寺」が「イチジョ・ウジ」になったり「i-chijyo-ji」になったりする。その聞こえ方は人それぞれだが、どこかで「一乗寺」と地名で捉えられていたはずのものが崩れる瞬間があったはずだ。音楽の捉え方までも変えてしまうような体験が新鮮だった。音をその場でデザインしている様子は、配信でもリアルを感じることができたのではないかと期待する。


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最後までご覧いただきましてありがとうございました!
後編もお楽しみに。

(文 / 西村紬)



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