転職に迷ってコーチングへ。コーチの問いが自分の本心に気づかせてくれた。THE COACH Meet利用者サイバーエージェント猪上さん
社会人として働くなかで「このまま、今の会社にいていいのか」という葛藤は、ほとんどの人が持つものです。また、もし転職を決めたとしても「どんな会社が自分に合うのか」「転職の軸が分からない」という次の葛藤が訪れます。
プロコーチが多数登録するTHE COACH Meetにもキャリアに悩み利用される方が多くいらっしゃいます。今回、お話を聞いた株式会社サイバーエージェントに勤める猪上気広さんもそのひとり。
猪上さんは、新卒で入社したサイバーエージェントで、内定者時代から新規事業の立ち上げを行うなど活躍してきました。「サイバーは人も環境も良い」と話す猪上さんですが、深く転職を迷った時期があるそうです。
転職の判断軸を探すために受けたTHECOACH Meetでのコーチングを通して、猪上さんは「自分の本心に気づいた」と言います。コーチングのなかで何に気づき、その気付きによってどんな決断をしたのか伺いました。
「なんで、ここにいるんだっけ?」転職を迷いはじめた理由
——コーチングを受け始めた理由を教えてください。
私がコーチングを受け始めたのは、転職に迷っていたときでした。私は新卒からずっとサイバーエージェントというIT企業に所属していて転職もまったく考えていなかったのですが、個人で関わっていた会社から「正社員にならないか?」と誘われて。それではじめて転職を考え、「そういえば、私なんでこの会社にいるんだっけ」と感じたんです。
——会社に不満を感じていたんですか?
いいえ、不満はまったくなく、会社の人も環境も好きでした。ただ、毎日楽しく働けていたからこそ、「自分がどうなりたいか」という自分の将来像が曖昧だと気づいたんですよね。別の選択肢がでてきて、自分の希望や目標が分からないことを自覚しました。
両社のいろんな人に相談させてもらっていたのですが、それぞれの立場や個人の経験をもとにしてくれる話を全て受け止めていたら、どんどん自分の意志がわからなくなっていって....。結局は自分で決めないと、と分かってはいたのですが、軸がどうしても見つからなくて。1ヶ月間、毎日悩んでも決断に自信が持てなかったので、あらためて自分の本心に向き合いたいと思いコーチングを受けることにしました。
社会や人間関係を切り離した「自分」に向き合い、答えが見つかった
——コーチングを受けた結果、どのように決断されたのですか?
転職をしないことに決めました。コーチングを受けるなかで自分の軸に気づき、サイバーエージェントが軸に合っているんだ、と心から納得できたんです。
——コーチングのなかで「自分の軸」に気づけたのは、なぜでしょうか?
社会や人間関係を切り離した自分と向き合えたからだと思います。コーチングでは「どちらの会社に転職するか」という目の前の課題から考えるのではなく、「自分の軸=自分が大切にしたい価値観」を見つけることに重きを置きました。
自分の軸に気づくきっかけのひとつになったのが「仕事をしなくても生活できる状態になったら、何がしたい?」という問い。最初は、趣味であるひとり旅をずっとしていたいなと思ったのですが、具体的に1日のスケジュールや1年の計画を立てていったら、結局日中は仕事したいという話になって。
なんで仕事したくなるんだろうと考えるなかで、「自分だからこそできることを活かして、周りの人や世の中に貢献したい」という気持ちと「日常のなかで美しいと思える瞬間を増やしたい」という自分の価値観に気づいたんですよね。非日常の旅も自分にとっては大切な時間ですが、それ以上に本当は「日常を楽しめること」「日常のなかで感じる感情を豊かにすること」「自分が見ている景色を変えていくこと」を求めているんだなと感じました。
それらを軸として転職を考えたときに、いまのサイバーエージェントという環境は自分が本当に求めている幸せにフィットするなと思ったんです。いろんな事業や人がいて、ものすごいスピードで変化して、規模がどんどん大きくなっている実感があって。自分次第で見える景色をどんどん変えていける環境だなって。
自分のなかの本当の欲求に気づけたので、納得して転職をやめることができ、これまで以上に生活や仕事にもポジティブに向き合えるようになりました。自分が大切にしたい価値観に気づいたことで、転職だけじゃなく、いろんなことに迷わなくなったように思います。
「誰かといる自分」と「1人でいる自分」が違うのは悪いことじゃない
——転職しないと決めてからもコーチングを続けている理由を教えてください。
私にとってコーチングは「本来の自分に向き合える時間」なんです。これは1人でいる時間とはまた違うもので、そんな時間はほかにはありません。なので、いまはコーチングを辞めることは考えていないですね。転職をしないことを決めてからのセッションは、その時々の悩みや将来像に対するアクションをテーマに1ヶ月を振り返って、より自分のことを理解する時間にしています。
コーチングを受けるなかで私にとって大きな出来事だったのが、「誰かといる自分」と「ひとりのときの自分」の乖離に悩まなくなったこと。私は、無意識に場の雰囲気を読んだり、人に合わせたりすることが多くて、誰かと一緒にいる自分とひとりでいるときの自分が違うことに悩んでいたんです。「どれが本当の自分なんだろう?」「社会のなかで生きている自分は嘘を言っているんじゃないか?」というモヤモヤ感がすごくありました。
それをコーチに相談したら「それは気広にとっていいこと?悪いこと?」と聞かれて。この問いはかなりビックリしたというか、自分の価値観が変わった問いでした。たしかに、人に合わせることって八方美人と悪いように捉えていたけど、自分にとっては別に悪いことじゃないのかもしれないと思えたんです。社会のなかで、誰かと一緒にいるときの自分は、周りの人を幸せにしたいと思っていて、そこでの行動や言葉は、その人の幸せを自分なりに想像しながら出てくるもので、それも自分の本心だということ。反対に、ひとりでいる自分も紛れもなく自分自身だということ。
どちらも自分がありたい自分だから、誰かといる自分とひとりの自分が乖離していることは、別に悪いことじゃないんだなって気づきました。
——コーチの問いをきっかけに自分を主体にして考えられるようになったんですね。
はい、ひとりで考えるだけでは、この気づきは得られなかったなと思います。私自身、よく内省しますが、いま思えば「こうあるべき」という社会の固定観念や常識と自分の本音がごっちゃになっていたなと思うんです。人に合わせることに罪悪感を感じていたのも「裏表があるのはダメなこと」という社会にあるネガティブな意見をそのまま受け取っていたからだなと。でも、コーチから「それは気広にとって良いこと?」と深掘りしてもらうことで、「社会の中ではネガティブに捉えられる側面もあるけど、自分にとっては大切なこと」だと気づきました。
コーチという一歩踏み込んでくれる存在がいることで、自分の本音と社会にある意見を分けて考えられる。だから、私にとってコーチングは本来の自分に向き合える、安心できる時間なんです。
自分のなかの複雑性と向き合っていきたい
——コーチングを受けるなかで、実生活の変化はありましたか?
明確に変わったことがあって。できるだけ毎日、自分の感じたことを表現に落とし込むようになりました。いまは、写真やデザイン、あと写真とグラフィックを組み合わせた作品を作ってSNSにアップしています。
作品作りを始めたのは、コーチングで気づいた「社会と切り離した自分」に目を向けるため。自分のなかにある感情や感覚を昇華する表現手法を編み出したいと思って作品を作り続けています。「こういうことに挑戦してみよう」「もっとモノづくりしたい」といった、いままで見えていなかった欲求が湧いてきているのが自分にとって大きな変化です。
私はもともと目標が見つからない人間で。転職に迷ったのも、自分の夢や将来像が分からなかったことが理由でした。まわりの人の話を聞くなかで、明確な目標を持つ人に少し劣等感を感じることもあって。自分の欲求は抽象的で曖昧で……だから明確な生きがいと呼べるものがほしかった。
でも、コーチングや作品作りを通して、結局それは自分には無いものだって分かりました。世の中にすでにある明確な答えには自分はしっくりこないんだなって。そう分かったからこそ、自分のなかの複雑性と向き合って、自分が本当に納得する道を歩みたいなと思っています。
——猪上さんが今後やっていきたいことを教えてください。
私にはやっぱり「大きな何かを成し遂げたい」という気持ちは全然なくて、日常のなかの美しいなって感じる瞬間を大切にしたいというのが変わらない価値観です。だから、これからは美しいと感じた瞬間を形にして残していく表現や仕組みを考えていきたいなと思っています。
「人に合わせてしまう」という悩みも「その人の考えていることを汲み取りたい」という私のやりたいことであり、得意なことだとコーチングのなかで気づきました。そんなふうに1人の自分と社会の自分、どちらの自分も大切にして仕事や生活に向き合うことで、見える景色もどんどん変わっていくんだろうなという予感もあります。その見える景色を私は表現にしていきたい。そして、自分にとっての集大成を作っていきたいなというのが、いまの私の目標です。
でも、その表現手法も表現したいことも私はまだ分かりません。だから、これからも行動に起こし続けて、コーチと一緒に考えていきたいなと思っています。
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▼猪上さんのコーチングを担当した安部 真由香コーチ