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【旗揚げ公演】『アイカとメグミ』脚本誕生について@志月ゆかり

 おはようございます。またはお疲れ様です。そしてご無沙汰しております。志月です。
まさかこんなに更新に間を空けることになるとは思っていませんでした。ごめんなさい。

 さて、ようやく旗揚げ公演の演目の話ができますね。私がしてなかっただけなんですけどね。ただ、演目の話をするに至ってちょっとした問題がありまして、脚本が一番の売りである我が団体の公演においてどの程度ネタバレを避けつつ面白そうにお話をするかというのがなかなか難しいんですよね。とりあえず、宣伝用にフライヤーに載せたあらすじからちょいとばかり話を広げてみようと思います。というわけで以下引用です。

  ――これは、ふたりの「しまい」のものがたり。
    双子のように育った女性たちの、
    ある数十分を切り取った一人芝居を二本立てでお届けします。

 そう、ふたりの「しまい」のものがたりなんです。
 私の脚本のことを昔から知っている方はもしかしたらわかってくださるかもしれませんが、私はタイトルやこういうところで言葉遊びをするのがとても好きです。今回のはわりと安直ですが。1つ目の「しまい」は「姉妹」です。「双子のように育った女性たち」でわかっていただけることでしょう。公演のタイトルにもなっている、「アイカ」と「メグミ」のことです。でも本当の姉妹ではありません。同い年の幼馴染です。生まれたころからお隣さんとして暮らしている、家族ぐるみで仲の良い女の子2人の物語です。実はフライヤー裏面で片方の手が持っている手紙には「お姉ちゃんより」と書いてあります。「双子のよう」のわりに、姉と妹がしっかり区別されてるんですね。私と共演者(?)の錫玲夜矜ちゃんとどっちがどっちなんでしょう。観劇を始めたら5分以内にわかると思います。

 さて、共演者に(?)がついているのは、私と彼女が舞台上で会話をすることがほぼないからです。「一人芝居を二本立て」なんですから、当然ですね。錫玲夜矜ちゃん演じる「アイカ」の物語が『これだけはいらない』、私が演じる「メグミ」の物語が『告解とラブレター』です。『これだけはいらない』がレコードで言うところのA面だとすると、『告解とラブレター』はB面です。この脚本は2本続けて観ることで初めて完成するのです。それは、この2本の脚本の生まれ方に原因があります。
 初めに、『告解とラブレター』の原案となるプロットが生まれました。このプロットは少なくとも3年前には企画書として人に見せられる程度には練られていましたが、実際に脚本に起こそうと試みるとどうにも面白くない。2ページで限界を迎えました。そのため、良い打開策が浮かぶまで私のプロット置き場に寝かせてありました。私のUSBにはまだ脚本に起こすに至らないプロットやネタのメモ書きが雑多に仕舞われているフォルダがありまして、必要に応じてそこを発掘したりします。

 『告解とラブレター』の原案が掘り起こされたのは今年の初夏、劇団山脈の新入団員の錫玲夜矜ちゃんが「一人芝居をやりたい」と私に話してきたときのことでした。脚本を書く機会に飢えていた当時の私は軽いノリで「え、脚本書こうか?」と提案しました。そんなような記憶があります。たぶんそんな感じでした。で、何がどうなったのか本当に彼女のために一人芝居の脚本を書くことになった私は、題材をどうしようか悩んで、ネタやプロットを寝かせてあるフォルダを開いたわけです。そこにあったおあつらえ向きのプロットが『告解とラブレター』の原案でした。20~30分程度の、女の子の、一人芝居。完璧な条件。だが面白くない。とんでもなく面白くない。何が面白くないって、まずキャラクターが死んでる。いや、本当に死んでるというより、話を進めるための単なる駒と化している。息をしていない。魂がない。言葉が紙面上を上滑っている奇妙な感覚に、私は当時の『告解とラブレター』を書くのは諦めました。

 代わりに、「この話、視点を変えて書いたら面白くなるんじゃないか?」という天啓を得て生まれたのが『これだけはいらない』でした。語り手であるキャラクターが、当時まだ名前のなかった主人公から、なぜか主人公を差し置いて名前を持っていたアイカへと変わっただけで、まあ筆が進む進む。元々話を構成するのに必要な前提となる設定は十二分に揃っていたので、あっという間に完成しました。そうして書き上げた脚本を錫玲夜矜ちゃんに差し上げて、彼女は一度大学内で自主公演を行ったようです。演出から演者から何もかもほとんどたった1人で作品を創り上げるのですから大したものです。私には到底真似できません。今だって、誰かに助けてもらわないと自分 1人じゃ何もできない体たらくです。閑話休題。

 さて、残されたのは『告解とラブレター』で本来語り手となるはずだったキャラクター、元主人公です。このまま没にしてしまうのはどうにも勿体ない。何せ3年も寝かせていたのです。それに、このキャラクターも、プロットの段階ではとても輝いていました。少なくとも私にはそう見えていました。そもそも、このプロットでやりたかったことが、『これだけはいらない』だと全くできていなかったのです。何がやりたかったのかを説明しようとするとネタバレを回避できないので明言を避けますが、とにもかくにも、私はどうにかしてこのプロットを脚本に起こせないか考えたわけです。そして、二度目の天啓を得ます。元々想定していた舞台設定、時系列を諦めて、『これだけはいらない』の裏側として書けば、今よりずっと面白く書けるんじゃないか? と。そして、『告解とラブレター』の名も無き主人公改めメグミは、ゴミ箱フォルダに移ることなくなんとか誕生を果たしたわけです。元々描きたかったものもほとんど形を変えることなく書き切ることができて、私は概ね満足しております。あとは、お客様にどう届けるかの勝負です。

 思っていたより長文乱文になってしまいましたが、最後に一つだけ余談を書かせてください。
 このお芝居、本来は私一人で二本の脚本を演じるつもりでした。錫玲夜矜ちゃんが乗ってくれたのは完全なる運命の悪戯です。嘘です錫玲夜矜ちゃんの厚意です。彼女はもっと休んだ方が良いと常々思っております。

 元々一人でやるつもりだったので、フライヤーのデザインが少し変になっています。具体的には、フライヤー表側の繋がれた2本の手は、右手と左手という、普通なら繋がない手同士を繋いでいます。「一人で二人を演じるから」という意味を込めたつもりでしたが、今では少々違う意味に取れる描写になりそうです。あとは、周りに散りばめられたオブジェクトたちは全て私の家にあるものの模写であるという地味なこだわりがありました。
 他にも、一人で二本立ての芝居をやるからこその演出上の工夫をいくつか考えたりしていたんですが、全て没になりましたね。代わりに二人いるからこその演出ができるようになりました。どっちの方が良かったのか、今となっては知るすべもありませんが、このメンバーでできて良かったと思えるような公演にしたいなと思っています。

 さて、次は何を話しましょうかね。そろそろ錫玲夜矜ちゃんに書かせてみても面白いかもしれませんね。まあ彼女は正式メンバーじゃなくて客演の方なので書いてくれるかわかりませんが。
 それでは、また次回のnoteでお会いしましょう。いつになるかはわかりませんが、もう少し頻度は増えると思います。志月でした。

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