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マイ国家

読んだ本

星新一のマイ国家

感想

星新一のショートショートが31作品収録されている本です。

とくに面白いと思った作品が「趣味」というショートショート。

あらすじ(趣味)

順子という主人公は少し変わった趣味を持っています。
それは室内装飾

壁紙や照明、じゅうたんなどを組み合わせて室内を調和させていく。
そんな趣味。

室内装飾の腕前はプロ並みになっていましたが、あくまで趣味ということで順子はそれを仕事にすることはありませんでした。

やがて結婚した順子は、結婚記念日に夫から絵をもらいます。

愛する夫からもらった大切な絵。その絵が一番輝くように、趣味である室内装飾のスキルを発揮して家全体を調和させていこうとするのですが・・・・・・

誤った最適化

全体を調和させるときには、何を中心に据えるか、という点が重要になります。

家の中を飾り付ける際は、何を一番に見てほしいのかが重要です。
順子の場合、それは夫からもらった絵でした。
絵を美しく見せるためにシャンデリアやカーペット、家具を次々に取り替えていくのです。

まったく別の分野、たとえば会社や学校といった組織を考えてみます。

コストを最適化しようとすれば人件費をどんどん削るでしょう。
効率を最適化しようとすれば人ではなくロボットやAIを使うようになるかもしれません。

しかし、最適化は本来の目的を達成しやすくするための手段であって、最適になることがゴールではありません。

それを見誤ると、順子のようにおかしい選択を疑いもなく実行してしまうのです。

AIが人類をほろぼす

ターミネーターや2001年宇宙の旅のようなSFには、AIが人に対して反発するシーンが多く描かれています。

この「趣味」というショートショートを読んでいて

  • 順子をAI

  • 順子の夫を人類

  • 夫が順子に渡した絵を「AIに対する命令」

だと考えると、なんだか奇妙なつながりを感じます。

順子は夫がくれた絵を輝かせるために、室内装飾に情熱を注ぎました。

SFに描かれるAIも、最初は人のために行動していたのだと思います。
それがいつしか、人がした命令のために行動するようになってしまったのです。

これは「知っているつもり 無知の科学」という本で、こんなふうに紹介されています。

機械は協力者ではなく、道具だ。ある意味ではAIというツールは、他の人間より電子レンジに近い。

知っているつもり 無知の科学

これはもっと身近なところでも頻繁に発生します。
会社で、学校で。

会社のため、ではなく、社長や直属の上司の指示・命令のために行動する。
お客さんのため、ではなく、お客さんが言っていることのために行動する。

将来のため、ではなく、テストで点数を取るために勉強する。


AIが人類をほろぼす、というのは短絡的すぎる気がします。
結局のところ、人がした命令によってAIが人類を滅ぼした、といったほうが正確なのかもしれません。



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