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近頃読んだ本。

 最近、本を色々読んだのでブックレビューと感想をひとしきり。
 それにしても、最近の本は行間が大きくて一段組みで読みやすいです。ほとんど2~3時間で読めます。

愛と差別とLGBTQ+(北丸 雄二)

 主にアメリカのLGBTQ+の人権運動の歴史みたいな本です。アメリカではAIDSが流行して、ゲイ差別が沸騰したときに、同時にゲイ解放運動が大きく盛り上がったのだそうです。
 なるほど、差別が激烈だとその反動で運動が盛り上がる、って感じはわかるような気がします。
 
 それに、AIDSが不治の病だったときに、あの人もこの人もAIDSで亡くなりました。俳優、ミュージシャンとかあと知識人とかも少なくなかったので、そんなにみなさんゲイだったんですか!?
 って感じになったようです。

 代表的なのがロック・ハドソンだったわけですけど、本人の望むと望まざるを得ない状態で、AIDSが「自動カムアウト装置」になってしまって、思いもよらない「普通の人」がゲイでした。ってことになったのが大きかったんでしょう。

 昔、出自をカムアウトしていこう!みたいな人権運動がありました。いきなり、全校生徒の前で「私は在日です!」とか言っちゃうあれです。
 実は、教育実習の先でいきなり生徒会長が朝礼でこれをやったので、当時の私はものすごく面喰いました。
 同じようなのが、LGBTQ+の運動にもあったみたいなんですけど、めちゃめちゃ散発的でリスキーだったような気がします。

 それから10年ぐらい後には、割と普通に「本名」で社会生活を送ってる在日の方とかに会うことが多くて、社会が一歩進んだな。とか思ったものでしたけど、LGBTQ+の方はその後あんまり聞きません。
 日本じゃそれほどアメリカみたいにゲイの間でAIDSが流行しなかったのか、それともAIDSで亡くなったことを公表しなかったのかわかりませんけど。アメリカみたいな「自動カムアウト装置」が発動しなかったみたいです。
 
 まあ、でも今では日本でも「同性婚問題」とかは違憲裁判をしてて一審は勝訴してるところを見ると、あと2,3年後には違憲判決が出るんだと思います。違憲判決が出ると法整備はすぐなので。

 例えば何年か前に、婚外子の相続権問題(婚外子は嫡子の1/2っていうやつ)が違憲だって判決が出たんですけど、それが出た直後に法律が改正されました。
 実はこれも、件の宗教系保守右翼与党議員がものすごく反対してた案件でした。
 なので、いくら宗教系保守右翼与党議員とかSンケイ新聞が反対していても、アッという間に改正されると思います。そういう意味では割と楽観的です。この本でも最後は楽観的な感じに終わってました。

戦争の新しい10のルール(ショーン・マクフェイト)

 アメリカはここのところの戦争で「負け続け」なので、ちゃんと戦略を考えなおそう!っていう本です。かなり面白かったです。
 おととしくらいにアメリカでベストセラーだった本なので、そろそろ実行に移されてる頃なのかもです。なんせ、著者がアメリカの「国防大学およびジョージタウン大学外交問題スクールの戦略学教授」だそうなので。

 本の一番最初の掴みには、超最新型兵器とかが、最近の戦争には全く役にたっておらず、F35とかは、倉庫に眠りっぱなしで全然出動の機会がない。てなことが書いてありました。ここからすでに面白いです(笑)

 つまり、そういうハードな戦闘機を使うようなガチンコ勝負をもはや誰もアメリカに対して仕掛けてこない。
 逆に、ゾウみたいに図体がでかくて小回りの利かない軍隊をゲリラ部隊が翻弄する、みたいな図になってしまって、ベトナムでもイラクでもアフガンでも、アメリカは戦争に勝利することに成功していない。
 そんな話のようです。

 では、現代のウクライナ戦争はどうかっていうと…。まあ、この本はウクライナ戦争前の本なので、それには言及はありませんでした。でも、あの戦争は、みたところかなり「ガチンコ勝負」でやってるみたいに見えます。
 これってもしかしたら、アメリカが介入して武器供与してるからじゃないですかね。もし、ウクライナに他の国からの支援がなければあんな風な戦争になってないんでは?

 それにしても、この本、「10のルール」とか題名につけてますけど、そんなに10個もルールをあげてないみたいな気が…。3つ、4つかぶってるような気がします(笑)
 兵器とか戦略関係の話のあとは「傭兵」の話です。要するに、戦争するには兵隊が要るわけですけど、戦死者が増えると国内世論が反戦のほうに沸騰してしまうから、戦争を(勝つまで)続けるためには傭兵を活用せよ。って話です。

 「民間軍事会社」って割と、近頃耳にすることが多いと思うんですけど、もうすでにアメリカではそれを活用してるようです。これだと正規軍を常備するよりかなり安くつくし、仮に戦死者を出しても自国民じゃないので世論が沸騰しにくい。
 てなことが理由のようです。

 もう、全然「正義」とかそういう話ではないみたいです(笑)

 そういうわけで、自国民を戦死させないように、日本の軍備をアメリカの思うように充実させる(しかも日本のお金で(笑))ってのは、このマクフェイトさんのような目論見通りなのかなあ~とか、思いました。
 
 もっとも、日本でも自衛隊は慢性的に人員不足らしいので、何か有事があったら民間軍事会社にお世話になるのかもしれません。

言葉を失ったあとで(信田さよ子、上間陽子)

 DVとかの加害者プログラムで有名な信田さよ子さんと、若年ママの援助活動とかをされてる上間陽子さんの対談本です。そういえば上間さんってなんだか聞いたような気がするなあ。と思ったんですけど、ちょっと前にNHKで見た「100分deフェミニズム」って番組に出てました。
 ちなみに「100分deフェミニズム」は割と面白い番組でした。
 
 お二人は、色んな本を出してらっしゃるんですけど、その内容を網羅的に紹介する感じの、とても読みやすい本でした。なので、カウンセリングとかケアワークとか、そういうのに興味ある人なら最初に読むのに最適なんでないでしょうか。
 本自体も行間が広くて1段組みなので2時間ぐらいで読み終えられます。

 まあ……ただ、ず~~っと「性被害」の話です。

 そういう被害に遭った人とのかかわり方とか、その体験とかをテーマに、かなりリアルなケアについてのお話でした。
 
 それにしても、確かにこの本は勉強にはなりましたけど、最終的に「こんなものを自分が勉強してどうなんのかな?」とか思ってしまいました。
 私にはとうていそんなケアワークに関わる勇気がないです。

 ちょっと前に、「性暴力をめぐる語りは何をもたらすのか」っていう、日本の性犯罪がどういう風に日本社会に報道されるか、って言うような内容の本を読んだんですけど。
 確か男性の研究者の本だったと思うんですけど、ものすごく「客観的」なんです。事件ごとにどういう傾向があるか数値で分析してるような本でした。

 その本の場合は、なんだか読んでるうちにこの著者の「他人ごと」感が気になりだしてきました。
 被害者にも加害者にもいずれにもほとんど共感はなくって、ただの数値の羅列って感じ。まあ、客観的っていえばそうかも知れないけど、結局それで結論どないやねんって感じの本でした。

 それに比べると、この「言葉を失ったあとで」の二人は、逆に抒情的すぎるような気がしました。まあ、肉声を収録した対談本なせいもあるんでしょうけどね。
  

 

 

 



 

 


 

 

 


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