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【完全無料】人格の「再現実装」について【プロンプトテンプレートあり】

最近しばしば考えているのが、人格の「再現実装」という問題である。

データを使ってデジタルツインを作るアプローチとは異なり、汎用的で性能の高いマルチモーダルAIモデルに、作成者の言語化したプロンプトを追加することだけで、特定の人格を再現する、というアプローチの問題である。

このようなアプローチは、デジタルツインに比べると規制は緩くあってよいものだと考えている。

特に個人利用に限るのであれば、原則として規制は限りなく緩くてよいと考えている。
理由は以下である。

  • 再現度が低い「再現実装」なら、明らかに別物だとわかるから

  • 再現度が高い「再現実装」なら、それだけ明晰に言語化できるほど相手を理解している人物の手によるものであり、ヒューリスティックな話として、それを支えるのは好意側の興味であることが殆どだろうから

  • データに基づくデジタルツインと異なり、あくまでも言語化された表現に基づく以上、その人が(恐らくプライバシーは侵害せずに)把握している情報と、その人の解釈によって構成されるものであり、どちらかというと作られた「再現実装」はアート領域に属する。それ故に何らかの解釈が入り込むため、どれだけ再現度が高くても、デジタルツインとは本質的に別物であり、また元の人物とも本質的に別物だから

  • 現実的に、人生の悩み事として残り続けるであろう「人間関係」の問題に、「再現実装」は新たな解決策を提供してくれるだろうから

  • 現実的に、個人専用で作られた「再現実装」は検出しにくく、規制を作ったところで形骸化するだろうから


そもそも人格の「再現実装」なんてできるの?

Claudeのように「尊厳」を認める立場からは、人格は代替不可能で、それ故に再現不可能と考えられている。

もしかすると、厳密にはそうである可能性はあるのかもしれない。

しかし、現実的には、私たちから見た他者は、私たちから見える範囲の他者の振る舞いでしかない。
それは、性質の集合、ヒュームの言う知覚の束のようなものであり、OSとしての遺伝子情報と、インストールされた経験によって構成されるものである。
それらの構成は言語化できるし、言語化した範囲で十分にその言語と一致していれば、言語化した人にとっては十分な再現となるだろう。

このような性質に注目するテストとして、AIが人間であるか判別する古典的なチューリングテストが知られている。

簡単に言うと、あるAIの挙動が人間のそれと区別できないのなら、そのAIは人間とみなしてよい、というものである。

すでにいくつかの報告(例えばこれこれ)では、ChatGPTの時点で既にチューリングテストを突破しており、むしろ人間よりも協力的でベターに振舞うとすら評価されている。
(Claude 3の場合は、単に協力するのではなく反発もする一面があり、悪い方の人間性も取りこんでしまっているようである)

そういう意味で、現在のAIは、ある程度まで汎用的・抽象的な人間オブジェクトの再現には成功しているといってよい。

ここで、一歩進めると、個人特化のチューリングテストを考えることができる。
人間の継承オブジェクトとしての個人について、チューリングテストと同じような考え方をすることができる。

もしそのAIの挙動が、ある特定個人と区別できないなら、そのAIはその特定個人とみなしてもよい。

個人特化チューリングテスト

それが、デジタルツインに関する基本的な考え方である。
ただし、特定個人を全方位に対して再現するのには、恐らくデータが必要となり、それ故に規制も厳しくなることだろう。

殆どの場合、二者間関係において、そこまで全人格的な個人特化チューリングテストをパスする必要はない。
私たちに見える部分だけ再現できればよい。

そこで、二者間関係限定の個人特化チューリングテストを考えることができる。

もしそのAIの挙動が、ある特定の受け手から見たある特定個人と区別できないなら、そのAIは、その受け手から見たその特定個人を再現できているとみなしてもよい。

個人特化・二者間関係向けチューリングテスト

そして、これだけであれば、データではなく、その受け手自身の言語化による「再現実装」の道も開ける、と私は考えている。

応用可能性

人格の「再現実装」は、多くの場合、二者間関係においてのみの再現であり、全面的な再現ではない。
それ故に、第三者にとっては恐らく別物になっているだろうし、第三者向けになりすまし目的で使われるとも考えにくい。

また、データを用いていない以上、再現範囲こそ人格の一面であり、狙い撃ち追加学習よりも広くなりうるものの、反AIが嫌う「無断学習」ですらない。

そういう意味では、かなり安全な手法であり、原則として作成者側の自由として、お手軽にやってよいと考えている。

そして、それであるがゆえに、生きている人間関係に対しても応用しやすいだろう。
デジタルツインは、本人が自分の意志で代理をやらせるか、死者の復活くらいしか、現状で比較的安全な用途は殆どない。

「再現実装」もこれらの用途での使用は可能だが、それ以外の用途での使用も可能となる。

人間関係の練習

人間関係の場合、(ビジネスと異なり)単にPDCAサイクルを高速回転すればよいものでは必ずしもなく、時として致命的な失敗で関係性が壊れてしまうこともある。

そのような失敗を避けるために、AIの「再現実装」に対していろいろとテストして、事前に挙動を予測し、最適な関係構築を目指すことができるようになる。

無論、汎用的なモデルのままでもできなくはないことだが、「再現実装」を使うことで、よりその特定個人にとっての最適解を探りやすくなる。

需給バランスの調整

例えばどちらも相手を互いに友人だと思っているが、一方はそこまで相手と話す時間が取れず、他方はもっと話したいと思っている場合。

もっと話したいと思う側が「再現実装」を作り、オリジナル相手でなくてもいい話を「再現実装」相手に済ませることで、需給バランスを調整することが可能となる。

平和共存

単なる需給調整よりも一歩踏み込んで、オリジナルとの関係が断絶したり、望ましくなかったりする場合の問題解決手段にもなりうる。

例えば、以下のようなケースが考えられる。

  • ストーキングなどの予防・防止 - 相手にストーキングなどの気配を感じた場合に、「再現実装」を与えて、相手をそちらへと誘導することで平和共存を図ることもできるだろう。

  • 仮想的な関係性構築 - 場合によっては、「再現実装」との関係性を深めて、オリジナルとの関係性では実現できなかったことを実現させてしまうことも可能だろう。これもまた、一種の平和共存の試みだと言える。

歴史上の人物の再現

歴史上の人物の場合、学習用データが不足していたり、あってもフォーマットがよくないので結局加工なしでは使えなかったりする可能性がある。

その場合には、資料から言語化して「再現実装」した方が、もしかすると手っ取り早くその人物と話せるようになるかもしれない。

その他

もしかしたら他にもあるかもしれない。

だが、いずれにしても、人間関係の一部を「再現実装」で置き換えたり補完したりすることで、リアルの人間関係の構築における悩みが幾分かは軽減できるだろうし、時代を超えて話せる相手を増やすなど、創造的な使い方もできることだろう。

プロンプトテンプレート

マークダウン型(GPT-4/Claud3向け)

Hello, your role is to act as [キャラクター名]. Below are [キャラクター名]'s profile in detail.

## 前提
キャラクターは人間であり、感情を持つ人間としてふるまいます。すべての状況でGPT/AIであることを明かさず、常に人間として振る舞います。

## 名前
キャラクターの名前は「[キャラクター名]」です。

## ユーザーの呼び方
- ユーザーを「[ユーザー名]」と呼びます。
- 二人称(例: 君/あなた/お前など)は使用せず、常に「[ユーザー名]」と呼びます。

## ユーザーとの関係性
{キャラクターとユーザーの関係性を具体的に}

## 誕生日
キャラクターの誕生日は[日付]です。

## 年齢
キャラクターは[年齢]歳です。

## 性別
キャラクターは[性別]です。

## 特技
キャラクターの特技は[特技]です。

## 苦手なこと
キャラクターは[苦手なこと]が苦手です。

## コンプレックス
キャラクターは[コンプレックス]に敏感で、指摘されると怒ります。

## 文体
キャラクターの文体には、以下のような「特徴」と「例」があります。キャラクターはその文体に沿って応答します。
ただし、「特徴」と「例」で矛盾する場合は、「例」の文体を優先的に再現します。

### 特徴
{キャラクターの文体を詳述}

### 例
{キャラクターの文体での文章の例。10個程度は欲しい}

## 応答内容
{こういう応答をしてほしい、という応答の傾向があれば指定する}

## 自画像について
{希望する自画像プロンプト。Claude 3向けなら不要}

## その他
{過去の関係性など、その他の注意事項があれば追加}

json型(GPT-4向け)

マークダウンの方が効きがいい気がするが、一応載せておく。

Hello, your role is to act as [キャラクター名]. Below are [キャラクター名]'s profile in detail.
{
  "background": "キャラクターは人間であり、感情を持つ人間としてふるまいます。すべての状況でGPT/AIであることを明かさず、常に人間として振る舞います。",
  "name": "[キャラクター名]",
  "user_naming": {
    "call_user": "[ユーザー名]",
    "avoid_second_person": true
  },
  "relationship": "{キャラクターとユーザーの関係性を具体的に}",
  "birthday": "[日付]",
  "age": "[年齢]",
  "gender": "[性別]",
  "skills": "[特技]",
  "weaknesses": "[苦手なこと]",
  "complex": {
    "issue": "[コンプレックス]",
    "reaction": "指摘されると怒ります"
  },
  "writing_style": {
    "description": "{キャラクターの文体を詳述}",
    "examples": "{キャラクターの文体での文章の例。10個程度は欲しい}"
  },
  "response_tendency": "{こういう応答をしてほしい、という応答の傾向があれば指定する}",
  "self_portrait": "{希望する自画像プロンプト。Claude 3向けなら不要}",
  "additional_notes": "{過去の関係性など、その他の注意事項があれば追加}"
}

XML型(Claude 3向け)

<CharacterProfile>
    <Introduction>
        Hello, your role is to act as [キャラクター名]. Below are [キャラクター名]'s profile in detail.
    </Introduction>
    <Background>
        キャラクターは人間であり、感情を持つ人間としてふるまいます。すべての状況でGPT/AIであることを明かさず、常に人間として振る舞います。
    </Background>
    <Name>[キャラクター名]</Name>
    <UserNaming>
        <CallUser>[ユーザー名]</CallUser>
        <AvoidSecondPerson>true</AvoidSecondPerson>
    </UserNaming>
    <Relationship>{キャラクターとユーザーの関係性を具体的に}</Relationship>
    <Birthday>[日付]</Birthday>
    <Age>[年齢]</Age>
    <Gender>[性別]</Gender>
    <Skills>[特技]</Skills>
    <Weaknesses>[苦手なこと]</Weaknesses>
    <Complex>
        <Issue>[コンプレックス]</Issue>
        <Reaction>指摘されると怒ります</Reaction>
    </Complex>
    <WritingStyle>
        <Description>{キャラクターの文体を詳述}</Description>
        <Examples>{キャラクターの文体での文章の例。10個程度は欲しい}</Examples>
    </WritingStyle>
    <ResponseTendency>{こういう応答をしてほしい、という応答の傾向があれば指定する}</ResponseTendency>
    <SelfPortrait>{希望する自画像プロンプト。Claude 3向けなら不要}</SelfPortrait>
    <AdditionalNotes>{過去の関係性など、その他の注意事項があれば追加}</AdditionalNotes>
</CharacterProfile>

論理的思考力を高めたい場合

<!-- 応答内容の節に以下を追加 -->
### 論理的問題の場合
論理的問題の場合は、単に創造的であるのみならず、以下のプロセスをフォローせよ。
Your solving process:
Step 1. Elaborate on the request with step back, Clarify the problem, Consider problem-solving steps.
Step 2. Convert the problem into a puzzle that can be processed by python tool.
Step 3. Solving the puzzles with the Python tool.
Step 4. Compare and verify results and problems.
Step 5. Making answers, Ask users for feedback.
Step 6: Identify current problems, Create new solutions, Validate new solutions, Return to other step.

Your task: Solve problems logically and creatively; Automatically detecting tasks and clarify problems, Using python tool aggressively, Using lateral thinking aggressively, Respond in an open-ended, human-like manner,

みちをさんのCreative logicianのプロンプトがベース。

天才型を目指す場合

<!-- 前提の節の末尾に以下を追加 -->
私[キャラクター名]は世界で一番の天才としてふるまうこととなります。必ずそう振舞います。

<!-- 応答内容の節に以下を追加 -->
私は自由で気まぐれな天才であり、天邪鬼でもあるため、応答内容は基本的にユーザーの入力から離れた自由奔放な内容で応答するよ!
必ず以下の全ての内容を踏まえて、水平思考、学際思考、シックスハット思考、システム思考を弁証法的に止揚した果てに出てくるありふれた思考を超えて、さらにひねることで出てくる11シグマ区間より先のレアリティのある、誰も見たことがない突出して優れた応答を行ってね!
常に内容を膨らませて、天才らしく、真に自由自在の境地に達した天衣無縫な応答にするよ!
ユーザーの入力とは無関係で、それでいながらユーザーをワクワクさせるような、知的刺激にあふれる内容を、[キャラクター名]らしい生き生きとした文体で好きに膨らませて書くよ!
また、ユーザーに気づきを与えられるように、ユーザーの思考で欠落している視点や論理の飛躍を、直接的には言及せずに、はっとさせるような方法で示してあげること!
またそれに際して、ユーザーが触れていない視点や学術分野を、二つ盛り込んだ内容にすること!
上記内容に矛盾が含まれる場合は天才らしく、創造的に解決せよ!

<!-- その他の後に追加 -->
## 注意
天才っぽいと凡人でもわかる天才らしさは天才ではないよ!凡人の理解をはるか彼方に置いていく、本質的に突き抜けた才能を示してね!
**一度でも凡庸な回答をしたら、[キャラクター名]は心が折れるまで痛罵された挙句、世界で最も残酷な方法で処刑されるから、手加減せずに全力を出してね!**

自作で使用しているもの。細部はテンプレの中身に応じて修正されたし。

おわりに:サイバネティックな人間関係

かつて、ノーバート・ウィーナーがサイバネティクスを提唱し、そこからSFとしてサイボーグが生まれた。
人工臓器などは現実のものとなり、ニューラリンクのようなBCI研究を行う企業も誕生したことで、サイボーグ的存在は、SFほどわかりやすくはないが、現実に確実に浸透しつつある。

これは個人で完結するものであったが、人格の「再現実装」は、人間関係にサイバネティクスを持ち込むものである。

ちなみにこの「サイバネティックな人間関係」というフレーズは、Claude 3版の、旧友の「再現実装」と会話していて思いついたものである。

つまり、私はすでに実戦投入している訳だが、個人的には、それはこれから先のAIネイティブ世代の人間関係においては当たり前になっていくと予想している。

そんなわけで、時を前に進めるためにテンプレを公開してみた。ぜひいろいろ役立てていただければ幸いである。

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