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仕事の帰り道

 一昨日、仕事終わりに日用品を買いにドラッグストアに立ち寄った。この日は楽しみにしていたプロ野球の開幕で一刻も早く自宅にたどり着きたかったが、あるものを見つけ、立ち止まってしまった。「プロ野球チップス」である。普段は買うことはないが、開幕日であることと懐かしさも感じたことから2袋購入した。

 帰宅後、すぐに観戦の準備をし、テレビをつけるとすでに2回裏の攻撃が始まっていた。先制を許していたが、これからの反撃に期待し、早速、プロ野球チップスの付録のカードを開封してみることにした。

 1袋目から出てきたのはオリックス・山本投手、日本ハム・堀投手だった。どちらも背景に昨シーズン獲得したタイトルが書かれたデザインのものだった。2袋目から出てきたのは楽天・茂木内野手、巨人・長嶋内野手だった。長嶋内野手のカードは復刻版らしく、カード自体がキラキラと光るデザインになっていた。

 レアなカードが当たったことである出来事を思い出した。小学生の頃、甲子園に野球を観に行ったときのことだ。僕は当時、試合よりも試合前の練習を観るのが好きだった。なぜなら、観客はまだまばらである上に、自分の席から離れてフェンス際まで行くとプロ野球選手の迫力を生で感じることが出来たからだ。大きな身体から放たれる放物線やレーザービームは観ているだけでドキドキした。
 
 この日も試合前の練習を観るために早めに甲子園に着いた。うちでは甲子園に入る前に観戦中に飲食するお菓子やジュースを近くのダイエーで買ってもらうのが定番だった。また、このときは普段はなかなか買ってもらえない「プロ野球チップス」を容易に買ってもらえる。兄と二人で悩みに悩んで1つずつ買ってもらった。
 
 買い物が終わり、甲子園に入った。建物の中からバックネット裏に出ると一瞬、時間が止まったように感じた。(この感覚を感じる人はどのくらいいるのだろう。僕は大人になった今でも野球場に入ると感じるときがある。)自分の席に座り、グラウンドを見るとビジターチームの打撃練習中だった。すぐにバックネットのそばまで近づいた。試合が始まるとチケットがないと警備員に阻止されるエリアだ。その特別なエリアに初めて入れたこと、いつもテレビで観る選手がすぐそこにいることにすごく心拍数が上がっていた。夢中になって、ずっと観ていた。

 それから、しばらくして自分の席に戻った。お待ちかねのプロ野球チップスの開封である。兄とタイミングを合わせて、同時に開けた。すると、どうやら兄はレアなサイン入りのカードが当たったらしい。僕のは光ってすらいなかった。光っていない上に、選手すら描かれていなかった。ご存じの方はもうお気づきだろうが、なんとラッキーカードが当たっていた!!(カードバインダーまたはリストの中の好きな選手2名のサイン入りカードがもらえる特別なカード)

 本当にうれしかった。甲子園でラッキーカードが当たる確率はどのくらいだろう。しかも、たった一袋で。当時の僕も相当うれしかったようで、その後の試合結果は覚えていない。

 1か月後、僕が選んだカードが届いた。西武・涌井投手と広島・前田健太投手だ。ラッキーカードで届いたカードには選手のサインが入っているが他のサイン入りのカードと光り方が違う。思い出が詰まったその2枚のカードは10年以上経った今でも実家の勉強机に保管している。

 これからはもうプロ野球チップスを買うのを止めようと思う。

 1人でも多くの野球少年・野球少女にラッキーカードが届きますように。