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【ハリボテ短歌集】 vol.1 ベンチのスイッチ

春魚 こんなときこそ骨残用 赴く箸がいささか軽やか

サウナ室 カノンが流れる大晦日 ロウリュと汗の三重奏

休憩所 なんとも言えぬ居心地感 おしゃれでもなく身内すぎても

暴れ者は健康ランドをまたがない 休憩室 畳に眠るか

入ってくイルカの口に入ってく 食べる行為は意識せずとも

谷底に沈む足音一億人 中々抜けず溜まる一方

かけるもの そんなものには興味なし だから生まれる素敵な馬並

それっぽく取り繕ってやり過ごす 現実超える社会階段

あら不思議 不自然っぽさに目をつむる しわ寄せなんてありすぎて皆無

なりすまし 伝えすぎないウィスパーボイス 今日も生きてく細やか加減

汚れ役 ためらいなんて最早ない 大人の階段踏みしめ今日も

点滅中 程よい距離の青信号 僕は走らず優雅に待つよん

ナメられる見事な振る舞い 悪魔の実食べたらきっと 嬉しい気持ち

無理しないために詰め込む金曜日 やってられない週明け休む

ところでさ、休まなすぎなアリ軍隊 絶対的な宿命休暇 

フラダンス 気がつきゃ足がフラダンス フラフラ頭がパソコン向かう

僕はただ まっすぐ歩いているだけの東京ロード ぶつかる自由

重荷をね背負うたんびにささくれが広がる ためらうことなく今日も

朝2分 これほどまでにウォーキング 会社に着いただけでも褒めて

帰郷かな 小さなイオン佇むの ベンチ腰掛け自由感じる 

それも愛 さりげに割り込む改札口 子供いるから仕方ないでしょと 

緑地まえ 出店が並ぶ食の秋 撤収作業にひらりと紅葉

カランコロン 時々出会う粋な音 導入部分みな使いがち だった

はりつめた オープンバーに吹き抜ける 硫黄の香り温泉談義

短歌って短い歌の逃げ道か 吐き出すオチが七七部分

ジャンルレス この世はまるでジャンルレス あまりにジャンルな人過ぎたら

ズキズキな虫歯は証人間の 発掘マニアは好き好きと砂漠

それなりにスマートな時あったよな 気持ちを抱えラーメンすする

休憩所 心と体の畳風 私の隠れ家誰も知らない

意図しないところを見るよ美術館 縁に滴り作者と会話

どんなものよりも価値かな 自分等の肥えた息子は納得3L

僕たちは星を見るなり感動し 星から見たら僕らはどうだろ

金曜の夜はなせだか風が吹く モンクの打鍵 キッチンダンス

小綺麗にいればいるほどなんともね あの入道雲なんて名だろう

神招く 後退りする藁背中 暗い夜道の並行歩行

活性化 なんでもかんでも活性化 静かにしてる人にも、なんてね

お馬さん 駅で休憩昔はね 都会の駅では尚ステークス

「暖かい?」 その一言が何よりも暖かいのよ 冬を迎えに

上着なし 冷え込む夜までに帰る 決意表明 現代っ子かも

まごころを水に託して届けます くらし支える師走の下北沢

東京を独り占めてる深夜ウォーク イヤホン流る 陽水Tokyo

牛丼を深夜に店内 師走かな BGMはラストクリスマス
 
カメレオン 何かのふりが得意技 自分のおまけ 皆まで言わず

まず始め... 言ったそばからオチを言う 結論先に急ぐよ社会

あゝまたか 過去の栄光 美談かな お酒に失礼なのでお避けに

シゴオワの直帰ができるベンチかな あの世のベンチ まさにこうでは

無心でも歩き続ける井の頭 これでいいのだ ふとした夜風

マッチングアプリのアフィリ流れ込む 微笑みかけるレディは奥底

マルエツへ 夜に行くと緑かな 目にも心にも優しいスーパー

侘暖に静かな雲が冬化粧 謎のオルゴールが私の暖房

揺れるかな 田舎の電車はバイオリン 風なる風が奏でるデュエット

無風夜 静けさの中柔軟剤 眠るコインランドリーと共に

「照れちゃってぇ」 僕の頬にも春の色 桜が咲いているせいにして(※よしもと短歌塾の七七)

貸し切りじゃん ひっそり者にはちょうどいい 桜が咲いているせいにして (※よしもと短歌塾の七七)

大江戸線座る背中は思い出す 喫茶のベロア 少しのお品

「これどうぞー」 差し入れもらう夏休み 氷の奥の一番右の

ノーブランドシャツのデジャブ 週末の安売りセール 迎える月曜

目の焦点ぼやけて歩くTシャツのチリチリ白髪浮き出る乳首

夏の夜 近所の目玉は暴走族 いまだにいるよ剃り込みヤンキー

ほろ酔いマン 下北沢から吉祥寺 「出口は右側♪」 先頭キープで

ダイニング以外は消灯 柔らかな明かりが夢遊病へと夜風が

独り占め とてもじゃないけどそんなそんな たまたま人がいなかったんです

朝焼けに燦々輝くツルッパゲ 引っ叩きたい 6時1分
(GERA NEXT 鈴木ジェロニモ編)

2度寝だよ 思わずツッコむ枕かな 6時1分 3度寝の準備
(GERA NEXT 鈴木ジェロニモ編)

引き込まれないようご注意ください、と気付くまでに引き込まれる

傘だけど傘なんだけど雨に濡れ 回したくなる 主役を気取って

暑いから日陰のベンチ探すけどあるのは日向 太陽は味方さ

お家のね前の道路の突き当り 電柱ミラーあの人に似てる

透き通る氷は飲み屋の隠し味 粋なこだ割り隠しきれない

壁薄い聞こえるアパート 人の息 かと思ったら 工事のドリル

阿佐ヶ谷を荻窪あたり ワイファイが弱くなるのよ心地よい、なぜ

帰省中 夜の雨戸はスピーカー カエルの合唱今ではジャズか

ちょうどいい 回転寿司のだしうどん 握り7皿 お冷とお湯

サテン生地スカートヒラヒラ 手には花 優雅な週末、っなはずだけど

マヨネーズあると信じて買う卵 急に作る素朴なポテサラ

3000円財布にピッタリ もうあそこ 気がつきゃ片手に芋の水割り

文庫本乗せられるほど太ももに詰まっているのは知識と贅肉

大宮を超えたわたしはビジネスマンの鎧を外したただの家族思い

覚えてない なんでこの歌書いたのか あるのは微かな良き思い出よ


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