月ミるなレポート⑭

ライトノベル「月ミるな」シリーズ

月ミるなは妖眼を持ち他人のエネルギーを糧にする心霊吸血鬼。強力な磁力を発する。

月ミるなの脇腹をロンギヌスの槍が貫いた。

そして月ミるなはインターネットになった。何処にもない場所。非日常的夢を基盤としてファッションや情報を送り出す。

月ミるなを手に入れたい人間と、月ミるなに憧れる人間の中に非日常的空間が根づく。

月ミるなについてほとんど何の予備知識もなかった僕らの非日常的空間は巨大に膨れ上がり、現実と非現実の混乱としてボンヤリと世界をおおう。

独特の退廃的なムード、意図的に構成された空々しさ、稚拙さを装った語り、自閉症気味な寡黙に酔わされる。

得体のしれない期待と昂揚感。そして断ちがたい言葉の呪縛と飾りたてられた表層だけが残った。

月ミるなと東京(おもちゃ箱)

月ミるなが東京で東京人に会うことは少なかった。地方出身の江戸っ子の空威張りは虚しかった。

月ミるなは文明の天敵。月ミるなが現れるまでこんな静かな朝はなかった。気違いじみた都会が休息を欲している。ぐっすり眠って反省しろください。

思ひ出の月ミるなact1

誕生日に月ミるなのクラッシュダミーをもらった。いつも連れて遊んでいたが、やがて壊れてしまった。

僕は壊れた月ミるなを井戸に投げ込んだ。月ミるなはスーッと水面に向かって落ちてドプンンンンと音が響いた。

透んだ井戸の底に横たわった月ミるなを見て、大きくなったら本物の月ミるなに会いに行こうと決意した。

ゆきゆきてヲチ軍

るなヲチ軍がグースステップで進軍する。機械的な動きを長時間続けることでどんどん空洞化して頭の中はからっぽ。

フルメタル・ジャケットのクローン兵士。狂った世界で正気を保つための完全装甲。

行進のリズムが個々の差異を消し去り、個人の意思や意味を無にし、命令に自動的に反応する。

飛び出すぞ月ミは急に止まれない

地上に落下した月ミるなの破片を探すため、エチオピアに探検団が向かった。

月ミるなとろむが二人で春ぽんち。
春ちん。春ぽこ。春ぽんち。

少女宗教月ミるな

深夜3時。薄暗いアーケード街を月ミるなが次から次へと駆け抜けていく。通り過ぎたかと思うと少し間をおいて次の月ミるなが走ってくる。

よそいき風のカッコをして、皆一様に大人買いしたカプリコの箱を持っていた。

はじめちょろちょろなかぱっぱ
月ミ泣いても蓋とるな!

人間も地球もいずれ終末を迎える。月ミるなはその終点からすべてを逆算して考えている。

思ひ出の月ミるなact2

月ミるなが思い出話をしている。そのことがどうしても思い出せない。月ミるなは「あのとき結婚しようとおっしゃいましたね」と恐ろしいことを言う。

月ミるなが去ったあと、いろいろ思い出そうとして、地図でその場所を調べる。そんな町は世界のどこにもなかった。

月ミるなプロジェクト

月ミるなをアタマの中に入れるばかりではいけない。それではいつまでたっても記憶エラーからは逃れられない。

月ミるなはもっと外に置いておくべきなのだ。ハンガーに掛けておいたり、色付きのひきだし閉まっておく。

自分のアタマの中と外を分離する。

月ミるなをアタマの内外で出入りさせる。そして月ミるな補完計画に移行する。

書棚。他人の記憶。鞄の外ポケット。ニンテンドースイッチ。ダイヤグラム。喫茶店。外側で月ミるなに触れる幸福感よ。

応募者全員サービスは月ミるなソノシート!総司令のナイスなお言葉が聴けちゃう?!

うんうん、もちろん、月ミるなだよね。それで、月ミるなか、なるほどねえ。月ミるななんだ、でもさあ、月ミるなかなあ。でもね。 それがね、えっ月ミるななの、まいったね。いやいや、だから、たとえばね。ちなみに、というより、ほんとは、月ミるなじゃなくって、そうそう、そこなんだよ。ちがうかなあ、ほうら、月ミるなでしょ。そやけど、ふーん、しゃーないな、うーんやっぱり月ミるな。まあねえ、月ミるなだったら、そうやなあ。 かなわんな、えらいこっちゃで、まったく。月ミるなやから、ようするに、あらかたそんなもんやで。むしろ、ぜったいに、月ミるなだよ。おおよそ、いわゆる、けっきょくはね。月ミるなでっしゃろ、ほなそんなところで、じゃまたね。

ねえ月ミるな

一番最後でもいいからさ
世界の涯てまで連れてって

世界の涯てまで連れてって