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【棚卸し】マネージャーは面白い⑤活動の場はコートサイドだ

これは、自己理解がうっすい私が、過去を振り返り、人生を棚卸ししながら、自己理解を深める、私の、私による「棚卸しマガジン」です。

マガジン序文より

大学4年生になった私は、地道なリハビリ、筋トレの末、ようやくプレーヤーに復帰します。
しかし、強豪校で1年半のブランク、さらに下級生の猛烈な突き上げを埋めることは簡単ではなく、活躍することも諦めていました。

プレーヤーとして練習に参加しながらも、チームがどういう状況かを把握する日々でした。(おまけに副キャプテンにもなりました)

今回は、「活動の場はコートサイドだ」と決めた私の行動を記しておきます。

1.「面白い」が褒め言葉の選手

大抵の選手はいいプレーをした時に、「ナイスプレー!」とか「ナイスシュート!」とか、もっと具体的にどこが良かったのかを伝えていました。

しかし、一人不満そうな選手からこんなことを言われます。
「私は、いいプレーじゃなくて、『面白い』がいい」
…なんだって?
かなりの強豪チームの中にいて、褒めて欲しいのがそこ?!

でも本人は大真面目です。

それから私は、大会で彼女(面白い選手と呼ぶことにします)がナイスなんだけど、面白いプレーをした時に(しかも、ちゃんと笑えるほど面白いんですよ、これが)、コートサイドで笑顔が素敵な2年生ふたりに話しかけます。

ふたりには「笑顔で面白い選手にハイタッチに行って」と伝えます。

その理由を説明すると、ふたりとも笑いながら、「それなら」と面白い選手の元に走っていきました。

褒め言葉は、褒め側の自己満足に陥ることがあります。
面白い選手は、そんなこと言われても私はテンションが上がらないと教えてくれました。
ちゃんとその人を見て褒めないと、逆効果なことがあるというのは、その後、社会人になってからも大いに役立っています。

2.「痛い」を言わない選手

今じゃ珍しいかもしれませんが、20年前の選手は、怪我をしても「痛い」とはなかなか言いませんでした。

弱味を見せることが良くないことと思われてた時代です。
「痛みは根性で治せ」に近いところもありました。

ただ、本当に痛くても言わない選手がいました。

練習を見ていて「あ、今の転び方、足痛めたんじゃないかな」と思って声をかけても、「大丈夫」としか言わないのです。
でも、なんとなく大丈夫じゃないような…

仲間と言えど、選手同士。
「私には言わないのかもしれない」と思ったので、それからは、言わない選手がきっと話をするであろうトレーナーにだけは、状況を伝えるようにしました。

当時、トレーナーは男子練習も女子練習も見ていて、常にチーム全部を把握できているわけではありませんでした。

だから、見ていない時に何かあったら「さっき変な転び方してたよ」と伝えて、トレーナーから、言わない選手に話しかけてもらうようにしました。

「チーム内では、割となんでも話してもらえる」と思っていた自分の考えを、改めた出来事でした。

チーム内の人間関係をよく見て、どの組み合わせが円滑にコミニケーションが取れるかを把握しておくことは、いざという時に重要になります。

同じ理由で、試合中にミスをした選手へドリンクを持っていかせる役割を、ミスした選手が可愛がってる後輩に任せることもありました。

「やっちまった」時にそばに寄っていく人って重要です。
私が、後輩に「あの人にドリンク持って行ってくれる?」と言うだけで、後輩はその意を汲んで、まっすぐミスした選手の元へ走っていきました。

誰でもやれること(ドリンクを渡す)だけど、その後輩にしかできない役割がありました。
後輩の前って、先輩は励まされたり、頑張れちゃうものなんです。


3.「自己満」が口グセの選手

どんなスポーツでも、オフェンスに比べて、ディフェンスというのは地味なものです。

特にパスカットよりも、ボールを持たせないディフェンスは分かる人じゃないと分からない場面でもあります。

ひとり、いつも練習後に「今日の自己満のプレーを言ってもいい?」と話しかけてくる選手がいました。

話を聴きながら、なんでそんな前置きを言うのかなと思ってましたが、ある時、気が付きました。

彼女はディフェンスが得意ですが、誰も見てないと思ってるから「自分だけがわかってるナイスプレー」を「自己満のプレー」と位置付けているのだと。

それからは、彼女が話す「自己満プレー」に対して、「あ、あれよかったよ!いいディフェンスだった」と話すようになりました。
「見てくれている人がいる」というのが、とても嬉しかったようでした。

それと、彼女が試合に出た時には、必ず名前を呼ぶことにしました。
いつも彼女は軽く手を挙げて応えてくれました。
対戦相手も含め、コート内には14人います。
その中で、まず「あなたのプレーを見てるよ」と合図を出していたのです。


4.試合中に声をかけた方がいい選手、かけなくてもいい選手

アルティメットには、点が入ると仕切り直して、両チームが相対する形で、一列ずつに並ぶ瞬間があります。(ラインナップと言います)

コートサイドにいるメンバーは、その時にいろんな声かけをコート内のプレーヤーにします。

でも、どれだけ大きな声で「〇〇さん、頑張って!」と叫んでも、余裕がなくて反応できない選手もいます。
これが続くと、声をかけているメンバーは、反応してくれないんなら、声かけは無駄に疲れるだけになってしまいます。

そこで、1年生達に、試合が始まる直前に「声をかけた方がいい人、かけなくてもいい人」を教えました。

「この人は声かけには絶対に反応して、この人はあんまり聞こえてないよ」と。

そして、実際に試合中に、どちらのタイプにも、大きな声で名前を呼んでみせ、教えた通りの結果になったところで、後輩達は「ホントだ!笑」となりました。

人によって反応が違うということを、自分で検証した上で、誰にどうやって声をかけたらいいか考えようと、伝えました。

もちろん、反応がない選手にも声はかけます。コートサイドの声は、ディフェンスにとって有効です。
だから、ちゃんと聞こえているかどうかを確認するために、呼びかけることもありました。

でも、コート内の選手に声をかける一番の理由は、やはり「ちゃんと見てるよ」を伝えるためでした。

試合中に声をかけた方がいいタイミングがあると、私は強く思っているタイプです。これはたぶん、私の経験則や特性が強いもののひとつです。

試合のほぼ全部をコートサイドで過ごすと、コート内の選手にどのタイミングで声をかければいいのかが感覚的に分かるようになりました。

そのタイミングで、残り時間や点数、タイムアウトの数なんかも伝えていました。
せっかく言っても、伝わらずに試合で負けてしまう可能性もあるからです。

スポーツでは、どうしてもプレーのうまさに目がいきがちですが、コートサイドでの声かけにも技術が必要だと後輩達に伝えていました。


5.一人にしてはいけない選手

今でさえ、学生アルティメットチームにコーチがつくことは珍しくなくなりましたが、当時はそんな存在はいませんでした。

基本的には、4年生が中心になって、戦略や練習メニューまで考えていました。屋外競技のため、雨ならどうする、グランド使用時間内に何をする、相当考えることは多くありました。

それをまとめて運営していたのが、キャプテンでした。
キャプテンには非常に大きな責任がのしかかっていただろうなと、当時は思っていました。

何を隠そう、キャプテン不在の時に、私が代理を務めた経験がありましたが、つらすぎてミーティングから逃げたことがあったくらいです。

チーム運営の大正解なんて存在しないし、何かをやってすぐ結果がわかることでもありません。
結果なんて、大会で分かることも多いからです。
キャプテンは常に「これでいいのか」と思っているのではと感じていました。

だから、新しい練習や、雨の日の練習メニューなど、キャプテンが決めたことはしっかりやってみようというのが私のスタンスでした。
意見を言わないのは逃げのように感じるかもしれませんが、私にはむしろ意見がなかったのです。
意見は他のみんながいっぱい持ってるから、みんなに任せればいい。

副キャプテンという役割をもらったこともあり、私はキャプテンの考えを聴くことに徹しました。
自分で決断をして、自分でチームをまとめていく、孤独を感じるこの役割をしている人は、なるべく心理的に「一人」にしないように心がけていました。


5.なんでもないことを、突き詰めていく

私がやっていることは、誰にでもできるし、難しいことではありませんでした。
ただ、他の人よりも、チームメイトの機微に敏感(HSPだからね)で、どうしたらみんながコート内で頑張れるかを常に考えて動いていました。

選手として試合にはほとんど出られなくても、チームの目標を、自分のできること、やるべき役割に落とし込んでいました。

書いていて思ったのですが、どう考えても、素晴らしいマネージャーです。
当時は怪我も治り、正真正銘プレーヤーにも関わらず、そう思います。

私をここまで突き動かしていく原動力には、個性的な仲間の存在があります。
仲間なくしては、これほどまでに研ぎ澄まされた動きはできなかっただろうなと、心底思います。
自分の持っている能力をフルフルに活用できていました。

この経験がその後、社会人チームのマネージャー、そして、日本代表のマネージャーへと繋がっていくのですが、それはまた、別の、お話し。

ご清聴ありがとうございました。

第一部「マネージャーは面白い」完

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