たまには趣味の話を

僕の趣味はとんでもなく没個性的だ。
お笑い芸人という職業をやっていると、「お金になる」趣味を持ったほうがいいと言われるし、実際そのほうがいいというのは実感としてある。
しかもそれはニッチであればなお良い。単純に競争相手がいないからだ。
あの人気トーク番組の趣旨なんかはそれを如実に表しているだろう。

だけど僕の趣味はとんでもなく没個性的だ。
野球と音楽。
競争相手も多いし一端の若手がそれを語ったところでなんの引っ掛かりもない。
まぁここからさらに範囲を狭めて、例えば助っ人外国人に異様に詳しいだとか、そういうことをすれば引っ掛かりはなんとなくできるのだろうが、いつも僕の中ではちょっとここで待ったがかかる。


なんかそれって違くない?


僕は好きなものをただ好きなものとして語りたい。
本当に助っ人外国人のプレースタイルからエピソードから何から何まで好きであればいいのだが、わざわざ好きなものを「金になる」方向へ深掘りしていくことがどうしてもできないのだ。
僕は趣味をただ楽しみたいだけなのだ。なぜなら趣味だから。


そんなわけで僕は芸人として売れるために必要な一つの努力を、美しいかどうかも分からない美学を盾に怠っているわけだ。

でも僕の中ではそれでよかったりして、ライオンズが今日勝っただとか負けただとか、速報を見ながら一喜一憂したり、ライブの行きと帰りに好きな曲をかけて、あぁいいなぁカッコイイなぁと思ったり、そんなごくごく個人的な範囲で楽しめているので、芸人が言う『趣味を持て理論』は屁でもないのだ。


というわけで、今日は真っ向から僕が好きな音楽の話をする。したいから。させてください。



まずは僕の中で2019年最重要アーティストである東郷清丸さんです。

めちゃくちゃかっこよくないですか?
音楽の知識なんて僕には全くないんですけど、なんかもう才能と理論がすごく綺麗に混ざった音楽だなぁって直感的に思うんですよ。
お笑いでも才能型と理論型がいますけど、結局どちらも同居していなきゃ魅力的じゃないし、そこにさらに一癖ないと売れないわけじゃないですか。
東郷清丸さんはそれらを全て持っているのでお笑いだったら賞レースのチャンピオンです。
地方で自由奔放な冠番組をやってそれをきっかけに才能が世間に認められるタイプの芸人。


僕がアーティストを好きになるパターンはいくつかあって、たまたまどこかで一曲聴いて「おや?」と思って気に留めていて、新譜が出たタイミングでいざ聴いてみると「おや?どころじゃねぇ!すげぇ!」ってなって大好きになるというのがあるんですけど、その振り幅が一番すごかったのがギリシャラブというバンドです。

まずイントロからめちゃくちゃ引き込まれません?
んで、このバンドの世界観がドカドカと押し寄せる感じが曲いっぱいに詰め込まれていて僕はひっくり返っちゃいました。
たしかトクマルシューゴさんというアーティストの方がTwitterで「このバンド面白いなぁ」的なことを呟いてそれで聴いてまさに「おや?」といった感じで気になったのが最初でした。
それからしばらくしてこの曲を出して、一発で僕はひっくり返っちゃったわけですね。
Twitterにも一度書いたのですが、「ぼくらは生まれたときから内的にラリってるんだよ」という歌詞、僕が思い付きたかったです。
キズマシーンの台詞にあってもおかしくないなこれ、と僭越ながら思わせていただきました。


音楽っていうジャンルは本当に沼で、例えば好きなアーティストが影響を受けたアーティストなんかにも手を出していくと莫大な資金と膨大なデータ量を持っていかれます。
例えば僕はYogee New Wavesというバンドが好きなのですが、彼らが影響を受けたサニーデイ・サービス、はっぴいえんど、山下達郎、Aztec Camera…といった感じで聴くとそりゃあもちろん全てストライクなわけで、そういった後追いで聴いた名曲に出会うたびに「この時代に生まれていれば…」なんて思ったりするわけです。
でも逆に好きなアーティストに出会うと「この時代に生まれてよかった!」ともなり、僕はシンリズムさんに出会ったとき「俺はこの先何十年もこの人の作る音楽を同時代で味わっていけるのか!」と興奮したのです。

我々は幸せ者でした。ありがとうございます。
『心理の森』という曲を出したとき、彼は高校生ですからね。
マジでビビりましたし、おそらく僕は一生このアーティストの曲を聴いていくんだろうな、俺が死ぬまでよろしくねと心で呟いたものです。もしかしたら相方にはそんな話をしたかもしれません。
で、お笑いファンの方はお気づきかと思いますが、このMV、新宿Fu-使ってます。
人力舎のライブを彷彿とさせませんか?
ついでに彼女たちがやっているコントも載っているのですが、内容云々よりも、ウケ方が爆笑じゃなくややウケという妙にリアルな仕上がりになっているのが面白いです。なんで爆笑にしなかったんだ。
あと本当にこの女性コンビいたら可愛すぎて俺は楽屋で話し掛けられないです。


趣味の話はし始めたらキリがないので次で最後にしておかないとまずいです。
となると、チョイスに悩むわけですが、今年唯一ライブを行く機会があって、そのとき「やっぱ娯楽は生が一番よな~」と改めて思わせてくれたミツメというバンドがめっちゃカッコイイという話をしたいと思います。

本当にもうかっこよくて…。
男って、男くさい男には男として惚れるみたいなことがあるわけですけど、それとは真逆を行くような彼らに僕は惚れてしまいました。
CDとかで聴いているとわりかし静かな落ち着いた音楽だなって印象なんですけど、実際生で聴くとそんなことはなくて、ライブ自体も静か動かで言ったら静なんですけど、音はたしかにガシガシ伝わってくるわけですよ。
それがめちゃくちゃクール。
体育のバスケで全然動かない物静かな奴にパスを出したら涼しい顔してスリーポイントシュートを決めちゃったみたいな、それくらいクール。
あと、聴いたら分かるんですけど、途中からギターの音が「ボーカル」になるんですよ。分かりますか?いやお前が主役だったんかーい!ってなるんですよ。伝わってほしいな。
とにかく本当に生で観るとより凄さが伝わるバンドでございます。
ちなみに僕はドラムの叩き方がすごく好きです。ライブ中もドラムばかり観ていました。




まだまだ全然話し足りないじゃないか。おい。
話し足りないってなるあたりが本当にただただ趣味という感じがする。最高だ。これでいいじゃんね、趣味って。もう金輪際趣味がどうこうとか言わないでくれ。頼むから。

それにしても書いていて一番楽しいnoteだった。
またやってしまうかもしれません。
でもそれは本当に書くことに困ったときだけにしよう。
僕はこういうのに手を出し始めたら怠けてしまう。


しかし皆さん、皆さんはですよ?
カミノさんの音楽の話、もっと聞きたいなぁ
って言ってください。
そしたらまた書けるので。

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