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ビールを40杯飲む資格セミナーに行ったら、途方に暮れた話


「一生かけても、つくりたいビールをつくりきれるか分からない」

9月に中四国のブルワリー(醸造所)巡りをしたとき、あるブルワー(醸造家)さんから聞いたこの言葉。
この言葉を聞いたときの感想は、「ビールの世界ってそんなに広くて深いんや...」でした。わくわく以外のなにものでもありませんでした。


あれから3ヶ月、わくわく自体に変わりはありませんが、わくわく以外の感情も抱くようになりました。

ビールの世界の広さと深さを、これまでよりもほんの少しだけリアルに感じることができた体験について、今日は書いていきます。


今回も自己紹介から始めさせてください

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僕の記事を読むのは今回が始めてという方もいらっしゃると思うので、簡単に自己紹介をさせてください。

髙羽 開(たかば かい)といいます。
岡山県倉敷市出身の27歳です。クラフトビールをつくるブルワーになることを目指し、この12月から高知県の日高村という村に引っ越してきました。

地域おこし協力隊という制度を活用して、醸造の修行を積んだり、ビールの原料のひとつでもあるホップの栽培に挑戦し、協力隊の任期が終わる3年後までに自分のビールブランドと醸造所を立ち上げる予定です。


『ビアテイスター』認定セミナーに行ってきました!

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はい、行ってきました!


まず、『ビアテイスター』とはなんぞや、という話から。

「ビアテイスター」とは、「官能評価(テイスティング)によってビールの出来の良し悪しを客観的に鑑定し、その理由を理論的に説明できる人」に対して与えられる資格です。ビアテイスターの資格を取得するとビールの出来の良し悪しや劣化の進行状態を客観的に評価できます。またビールの正しい保管法やより味わい深い飲み方に活かすこともできます。
『The Craft Beer Association』ビアテイスターセミナー公式HPより)

太字になっている部分の「ビールの出来の良し悪しを客観的に鑑定」ってところが特に重要です。

そもそもビールを飲んだときの感想で、「良い」「悪い」ってあんまり普段言わないと思います。居酒屋で生中を頼んで、グイっといったときの一言目って「うまい」か「まずい」ですよね(まずいことは絶対ないですけど)。

この「うまい」「まずい」っていうのは、あくまで主観です。味覚は人それぞれ違っていて、主観で「良い」「悪い」を論じることはできないので、そこに良し悪しを測る「ものさし」が必要になってくるわけです。


そのものさしとなるのが、「ビアスタイル・ガイドライン」という、ビールのスタイル(種類)ごとの特徴を詳細にまとめたこの本。

毎年更新されるこのガイドラインに則って、ビアテイスターはひとつひとつのビールを「客観的に」鑑定するわけです(詳しい鑑定方法については、長くなるのでまたの機会に)。


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ビアテイスターの資格は、香川県の港町・丸亀の「MIROC BREWEZRY(ミロクブルワリー)」のブルワー・岩城さんに「自分が作ったビールを客観的に評価できた方がいい」と取得をおすすめいただきました。

岩城さんは、ビアテイスターの上位資格にあたる『ビアジャッジ』の資格も持たれていて、ビールのコンテストで審査員もなさっています。


僕もビアジャッジになることを目指していますが、ビアジャッジの資格を取るにはビアテイスターの資格が必要となります。ということで、先週12/6(日)、大阪で開催されたビアテイスター認定セミナーに行ってきました。

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しこたま飲み、学ぶ、最of the高カリキュラム

セミナーは、まずは座学からでした。

テイスティングの環境条件、ビアスコアシートの書き方、ビールのアロマ・外観印象・フレーバー・ボディ(口で感じる存在感)とそれぞれの評価方法、オフフレーバー(異味・異臭)などなど。ビールをテイスティングする上で必要な知識を広〜く、浅く、学んでいく感じ。

テキストを手元に置き、ペンを片手に講義形式で何かを学ぶ、という行為がめちゃくちゃ久しぶりだったんですが、びっくりするくらい頭に入ってくるんです。やっぱり興味があることに対しては、脳の海馬もフル稼働で情報を仕分けてくれるんだなと、自分でもびっくりしました。


そして、午後に入ると、各ビアスタイルを国別に学ぶ時間。

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まずは、ドイツ、チェコ、オーストリアのビールから。

ボヘミア・ピルスナーから始まり、ドルトムンター、オクトーバーフェスト、トラディショナルボック、ヴァイツェンなどなど。


ホップの香りが強いものから、モルトのアロマが支配的なもの、モルト・ホップ・エステル(果物)が調和しているものまで。味についても、苦味が強いものから甘みが特徴のものまで。

それぞれのスタイルが生まれた国や歴史、色やアロマ、味や度数、ボティの特徴などをひとつひとつ味わいながら、学んでいきます。


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「これとこれ全然違うやん...」

「へ〜、このスタイルにそんな歴史があるのか」

「なにこれめちゃくちゃうまい!!!」

「この違いはよくわからんなぁ」

「このスタイルは絶対将来つくりたい」

ただでさえ美味しいビールなのに、仕入れたて鮮度バツグンの知識によって、味も風味もさらに際立ちます。


次に、イギリス、アイルランドで生まれたスタイル。

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最後に、ベルギー、アメリカのスタイル。

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最終的に、37つのスタイルのビールを試飲しながら学びました。オフフレーバーのときに試飲したものも含めると40種類以上。


この日飲んだ、多種多様なおいしいビールたちがこちらです。

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セミナーの前半、しゃかりきに働いていた脳は、40種類のビールのおかげ(せい)で、だいぶ上機嫌になり、最後のほう学んだスタイルについては、正直だいぶ怪しいので、帰って復習しました。

とにかく、大好きなビールを広く学び、たくさんのスタイルの違いを知り味わう、という1日は、とんでもなく楽しく、この上なく学びの多い時間でした。


ビールの世界の広さと深さを思い途方に暮れた帰り道

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高知へ帰る夜行バスに乗り、数十分したころには、酔いも冷めてきたので、テキストを開けて復習をすることにしました。


テキストに書いている情報を眺めながら、その日味わったあまりに味わいの違うさまざまなビールと、そのビールを生み出した歴史や地域性、多様な醸造方法、先人ブルワーたちの気概に考えを巡らせ、そして今日学んだことがいかにビールの世界のごくごく(ごくごく×1,000,000)一部でしかないかと思うと、自分が一歩踏み入れた世界の広さと深さに、ある種の「途方も無さ」を感じました。

そして、その「途方も無い」という感覚に、全く否定的なイメージを抱いていない、わくわくしている自分がいることにも気がつきました。


「一生かけても、つくりたいビールをつくりきれるか分からない」

9月に聞いた先輩ブルワーのこの言葉がふっと浮かんできて、一生かけてもたどり着けないかもしれない場所に、わくわくしながら進んでいけるこれからの人生を思い、ニヤニヤしながら眠りについた、大阪からの帰り道でした。


最後に

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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