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住民×議員、Zoomで直接ディスカッション!「小学校の欠席届オンライン化」をめぐるオンライン意見交換会レポート

個人や民間では解決できないくらしの悩みを相談すると、地域の議員が行政に働きかけてくれる、政策実現プラットフォーム『issues』。2019年3月のサービス開始以降、地域住民の声が政策実現につながる事例が、少しずつ現れはじめています。

しかし、プラットフォーム上でのやり取りだけでは、見えてこない課題や改善策もあります。そのギャップを埋めるため、issuesは地域住民と議員が直接ことばを交わしあうオンライン意見交換会を開催しました。

意見交換会のテーマは、issues上で最も多くの要望が集まっている課題である「小学校の欠席届をオンラインで出せるようにするべきでしょうか?」。すでに都内の各自治体で、議員による実現への動きも起こっていますが、乗り越えるべき課題はまだまだあります。

意見交換会には約35人の地域住民と約15人の議員が集結。各自治体での動きや実現への課題などが話し合われ、普段はなかなか知り得ない政策プロセスについての共有が行われました。本記事では、イベントで地域住民と議員が議論を交わした模様を、ダイジェストでお届けします。(取材・文: 小池真幸

新型コロナ対策も後押し、じわじわと進む「欠席届オンライン化」

issuesで最多の930人以上(2020/12/26時点)の住民の方々による要望が集まっている「小学校の欠席届オンライン化」。多くの議員が実現に向けて動いていますが、取り組み状況は自治体によってまだまだ差があります。「少しでもこの変化を後押しできたら」との想いで、今回の意見交換会の開催が決まりました。

まずはissues代表取締役の廣田達宣より、議論の前提として、この問題をめぐる現状が共有されました。

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株式会社issues 代表取締役・廣田達宣

多くの小学校では、生徒が欠席するとき、近所の生徒に紙の欠席届を託す決まりとなっています。近所の生徒に託せない場合は、保護者が学校に持参する学校も珍しくありません。

現状では、横浜市などいくつかの自治体で欠席届がオンライン化された先行事例があります。また、民間企業が提供しているサービスを利用している自治体もあるそうです。

2020年秋には、文部科学省が全国の教育委員会に、欠席連絡をはじめとする家庭と学校の連絡のデジタル化推進を通知。子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて、2019年12月に打ち出された「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」に則り、生徒に一人一台配られたタブレット端末を活用する方向で検討が進んでいるケースもあります。

さらに2020年12月現在は、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、一時的に電話による連絡を認めている自治体も少なくありません。

しかし、朝の忙しい時間帯に電話が集中することで、ただでさえ働き方改革が重要課題となっている先生たちの負担が、ますます増加しているという声も。小学校の欠席届オンライン化は、「ただ粛々とデジタル化を進めればOK」というシンプルな問題ではないのです。

オンライン化で生まれるメリットとデメリットとは?

そもそも、欠席届をオンライン化することで、どういったメリットが生まれるのでしょうか。

廣田「オンライン化に対する賛成の理由として大きいのは、欠席届をアプリやWebサービスで出せるようになれば、保護者の負担が減るということ。体調の悪い子どもを家に一人で残していく心配もなくなりますし、不登校の生徒のご家庭などで、毎朝の欠席連絡そのものが精神的な負担となっている方々も楽になるでしょう。

さらに、使いやすいシステムさえ導入できれば、先生たちの負担も減ってWin-Winになるという声もありますね」

一方で、オンライン化にあたっての懸念点も挙がっています。

廣田「『必ずしもアプリやWebサービスでなくてもいいのでは?』といった声も聞きます。保護者と先生がメールやLINEで直接つながることにより、トラブルが生じてしまうという話もよく聞きますね。

また、オンラインに移行する際には先生たちの負担が増えます。必ずしもITに慣れているわけではない現場の先生方や教育委員会の方々にとっては、日々の運用での難しさもあるでしょう。実際、Googleフォームを使っている自治体で、運用に苦労しているという話も聞きます。さらに、インターネットが十分に使えないご家庭もあるため、アナログな手段をゼロにするわけにはいかず、デジタルとアナログを併用することになるので、先生たちの負担はますます増えますよね。

いざオンライン化が決まったとしても、システムの運用・導入には少なくない財政コストがかかりますし、運用や情報取り扱いのルール策定にも時間がかかるでしょう。さらに、見逃されがちな観点ですが、連絡帳を手渡しすることで保護者と地域の子どもたちの接点が増え、地域の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)、いわゆる“地域の絆”の構築に役立っているという指摘もあります」

地域住民と議員がZoomで直接ディスカッション!内容も一部公開

廣田による現状共有が終わると、いよいよ意見交換がスタート。住んでいる自治体ごとにブレイクアウトルーム(個別のZoom部屋)に分かれ、簡単な自己紹介の後に、地元議員と欠席届オンライン化について意見を交わしました。

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大田区のグループ

大田区、江東区、品川区、世田谷区、練馬区、合同①(江戸川区&北区&中央区) 、合同②(文京区&港区)の7グループに分かれ、欠席届オンライン化についての意見交換を実施しました。

参加議員(あいうえお順、敬称略)
あべ祐美子(品川区議)、伊佐治剛(大田区議)、榎本あゆみ(港区)、おのせ康裕(目黒区議)、高口ようこ(練馬区議)、小林あすか(江戸川区議)、佐藤力(練馬区)、鈴木綾子(江東区議)、高橋まきこ(中央区議)、たかはまなおき(文京区議)、たぞえ麻友(目黒区議)、そのべせいや(世田谷区議)、松本みつひろ(杉並区議)、三次ゆりか(江東区)、ひうち優子(世田谷区)

約30分間、住民の方々と議員の方々の双方から活発に意見が出てきて、まだまだ時間が足りないほどでした。

各グループで交わされた議論では、たとえば以下のようなトピックが挙がりました。

▼大田区
・予算や導入ツールが決まっていく意思決定プロセスはどうなっているのか?
・導入にあたって、よく障壁となるポイントはどこなのか?
・オンライン化することと、電話を認めるかどうかは別の話ではないか?

▼江東区
・学校の中での個人情報の取り扱い方法は具体的にどうなっているのか?
・「紙+オンライン」になると先生の負担が増大するので、肝心なことは教員の管理工数削減と個人情報管理ではないか?
・PTAとして学校に対してどんな協力が可能か?

▼世田谷区
・学校のWebサイトの利便性をもっと高められるのではないか?
・デジタルツールを導入するとして、どんな機能があるとよいか?
・いま多くの時間を割いている「掃除」の方法を見直す余地があるのではないか?

▼練馬区
・学校よりPTA主体のほうがオンライン化が進みやすいのではないか?
・保護者と先生とのコミュニケーションをもっと豊かにするにはどうすればいいか?
・教育上の意図と、運用上の効率化が切り分けられていないのではないか?

▼合同①(江戸川区&北区&中央区)
・ICT化が進んでも、専用端末に依存している限り、移動中のスマホでの連絡などができず問題なのではないか?
・オンライン化すると、誰が出欠に回答したのかわからなくなってしまうのではないか?
・コロナ禍に際してYouTube配信をした教員の実績が学校に認められ、デジタル化のチームが組成された例もあるので、一足飛びは無理でも地道に進めていくことは可能なのではないか?

▼合同②(文京区&港区)
・すぐに出欠判断ができないときに、何度も連絡しなければいけないのは大変なのではないか?
・欠席した生徒の家庭に、終業後に先生が電話で連絡事項を伝える運用があったが、先生の負担が大きいのではないか?
・大学は70代の教員でもオンライン化に対応しているケースもあり、ICTリテラシーの問題はクリア可能なのではないか?

地域住民と議員が混ざり合い、“横の情報共有”を

意見交換が終わると、再び全員が合流し、グループディスカッションで出た話を共有したり、議論の感想を述べ合ったりしました。参加者の住民の方々から挙がった感想の一部を紹介します。

「自治体ごとの成功事例がシェアされ、横の情報共有がなされているのが良かったです。こうした横のつながりの機会をもっと作っていくべきだと感じました」

「自分はPTAの会長をしていて、PTAの中での電子化を進めているのですが、学校現場のほうでITに明るい方が少なくてデジタル化が進まないという話を聞きました。これからはPTAと学校でもっと連携していけると、子どもたちにより最適な環境を提供できるようになるのではないでしょうか」

「あらためて、ITが苦手な先生に対して負担がかからないように改善を進めていくことがポイントだと感じました。個人情報の扱いも重要度が高い問題だと再認識させられましたね」

終了後に回答いただいたアンケートも、平均満足度4.43と比較的高く、以下のような感想が集まりました。

【住民】
子どもの所属する小学校の動きに残念な気持ちになったり無力感を感じたりすることも多かったのですが、今日の議論で、やれないことはないんじゃないかという気持ちになりました。また、議員の皆さんが地道に前に進めるために活動してくださっていることを改めて知り、自分たちがそのためにできることもわかったので早速実行します。まずは区長への手紙から!
【議員】
実際に顔を合わせる機会があって、文字だけでやりとりしていたユーザーさんと直接話すことで、より「頑張っていこう」という気持ちになりました。ありがとうございました!


個人や民間では解決できないくらしの悩みに直面したときに、諦めるしかなくて絶望感を抱いている人も多いでしょう。しかし実は議員の方々は皆さんの声を受けて本気で課題解決に動いてくれる頼もしい存在です。


とはいえ「地元の議員って誰がいるんだろう?」「どうやって連絡をしたら良いの?」などのハードルを感じてしまうかもしれません。issuesを使えば、スマホでのメッセージのやり取りや、今回のような意見交換会を通して、困り事を地元議員の方々に相談することができます。

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