ピンチをアドリブで乗り越える技 11/100(三つの輪2/3)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


『三つの輪』は
身体表現と発声を、あえて大雑把に3通りのパターンに分けて捉える

3回に分けて、『3つの輪』というツールをご紹介しています。今回はその第二弾です。

『ひとつめの輪』は一人称。自分の世界

『ふたつめの輪』は二人称。相手との世界

『みっつめの輪』は三人称。不特定多数相手の世界

と、前回ご紹介しました。

日々の私たちの表現は、全てこの3つの輪に分類することが可能です。通常私たちはこの3つを行ったり来たりしながら表現をしています。

例えば、
誰かと話している時、
「うーん、そうですねぇ」
と言って俯いているときは1ですね。

相手の眼を見て
「それ、本気で言ってますか?!」
と言うときは2。

「皆さんもそう思ってたんですか?!」
と他の人を見るときは3になります。

これを私たちは自然に行ってるのですが、私たち役者はそこを分析・分解することによって、意識的に行えるようにしています。

「うーん、そうですねぇ」
を2の感じで試しに言ってみてください。
なんか、おかしいですよね。実際には別に考え込んでいなくて、相槌として言っている様に聞こえます。
言い様によっては、真摯さが欠けていると言う印象を与えるでしょう。

今度は3の感じで言ってみてください。
やはり、本当に考えている印象はありませんが、同じ相槌でも、心ここに在らずな感じになります。
でも、言い様によっては包容力のある人にも見えるかもしれません。

「うーん、そうですねぇ」 >1
「それ、本気で言ってますか?! >2
「皆さんもそう思ってたんですか?!」 >3
というのが一般的ですが、人によってはこれを無意識に変えて表現している場合もあるでしょう。
どうですか?あなたの周りにもいませんか?妙に2を多用して暑苦しい人、3をよく使う大柄な印象の人、1がデフォルトの自信無さげな人。

ここまで説明して思ったのですが、『三つの輪』はある意味、型で、それをどう使いこなすか、によって印象が変わってきますね。
2は暑苦しいですが、場合によっては真面目で信頼のおける感じにもみえます(不動産系か)。3は横柄にもとれますし、自信のある様にもみえます(政治家タイプ)。逆に、1は自信なさげですが、思慮深いタイプにもみえます(学者タイプ)。

『三つの輪』というツールがあると理解した上で、それをどう使うかはあなた次第ということでしょうか。

「それ、本気で言ってますか?!」も敢えて輪を変えて検証してみましょう。
1だと、これから何か反撃をする前の序章のように私には感じられます。半沢直樹的な感じですかね。
3は諦めを感じさせますが、窪塚洋介的な狂気も感じます。

「皆さんもそう思ってたんですか?!」を1で言うと、挫折や敗北を感じます。「それなら私にはこれ以上言うことはありません…」が続きそうです。
2だと、『皆さん』をそう思わせるように、操ったのが目の前にいる人なのではないかという背景を示唆しているようにも感じられます。

話がややこしくなってきたので、分かりやすく説明できているか不安なのですが、ピンチの話に戻ります。

ピンチに陥ったとき、3つのうちどの状態にいるでしょうか?
おそらくほとんどの場合は、1ですね。俯いて、隠れたいという衝動に駆られているでしょう。言動もモゴモゴします。
でも、2の場合もあるかもしれません。相手に圧倒されまいと虚勢を張りながらも頭の中はパニック状態なときです。
3の場合は、ピンチに陥っていることを悟られまいと自信のあるフリをしてるかもしれません。でも思考は静止状態で自分がちっぽけに感じます。

そんなとき、敢えて意識的に輪を変えてみると、気分も変わり、突破の糸口が見えてくるかもしれません。と、いうのがこのツールをご紹介している理由です。

次回は更にややこしくなりそうな予感がしてるのですが、この輪を意図的に、操ることによって相手に与える印象を変えてみようと思います。
お付き合い願います。。。

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