ピンチをアドリブで乗り越える技 9/100(目線)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


あなたの目線は、どこを見ていますか?

「目は口ほどにものを言う」
といいますが、急に視線を感じてビクッとしたり、目と目があって、どきっとした経験は皆さんあると思います。

私は、人間の眼って、X-MENのキャラクターのように、何かしらのビームを出してるのか?と思ったりします。それぐらい、目線というのは表現豊かなツールだと思います。

ピンチに役立つ(かもしれない)、
目線についてのエピソードをいくつかご紹介します。

南アフリカに映画の撮影に行った時、現地の方々の目線のシャープさに驚かされました。他にアジア人をほとんど見かけない、という環境に初めて行ったわけなんですが、あれほど「自分が見られているな」と感じたことはありません。
劇場の観客席から感じる目線とは全く違う、異質なものでした。
そういえば、似た様な視線は、アメリカ内陸の小さな町でも感じました。そこもやはりアジア人の少ない地域だったのですが、南アフリカのそれとは明らかに違う感覚だったと記憶しています。

その南アフリカでは、撮影のため本物のスラム街へ行きました。現地の子供達から『China Man, China Man!!!』と尊敬と歓喜の声を掛けられたのが印象に残っています。
きっと戦後の日本、いや、戦前の開国後もですが、日本に来た海外の方々はこの様な経験をしたのだろうなと、思いました。

また、能のシテ方は、舞を舞うときに、目線は永遠の彼方へ向け、焦点は「ぼやかす」そうです。これは能面という仮面をかけているということも関係するのですが、視線をぼやかすことによって、体全体に意識が行き渡るという効果もあるような気がします。

視線の話をもう少し続けさせて下さい。
私は生まれつき睫毛が長く、目が大きくみえる方なのですが、そのせいか私が発する目線は強く見えがち、、、らしいです。
それも影響してか、意識しないと、私は人と話す時にむやみに相手の眼を見ない癖があります。良くないこととは思いつつ、鋭い視線というものは、状況によって使い分けなくてはと感じています。

そうそう!
ほとんどの人は、左右で眼の様子がだいぶ違いますが、
演劇学校で学んだツールとしては、右脳と左脳、それぞれへの有効的な働きかけとして、話しかけるときは相手の右目を、聞くときは左目を見るとコミュニケーションに良いという話を聞きました。

また、相手の目を見つめるのが気まずい時は、左目と右目、そして鼻の先、この3点から作られる三角形を行ったり来たりする様に相手を見ると良いというアドバイスもありました。

他には、人は、何か自分の記憶の中にあるものを思い起こそうとするときは、左上に目線を向けがちです。
逆に、何か想像上のものを考えようとするときは、右上を向く傾向にあるといわれています。
(どうですか?試してみると、確かにそうではありませんか??!)

あと、私たちはよく、瞬きで自分のリズムを取ってます!これも無意識に行なってしまうことのひとつです。

このように自分の目の特性を理解し、その方向性や焦点の合わせ方、そして瞬きにまで気を配りながら、私たち役者は演技をします。。。いや

ちょっと言い過ぎました。。。

正直、演技をするときに
いつもこれらの事を気にしているわけではありません!

でも、細心の注意を払うことを必要とするシーンを撮影する場合は、こういったところにも注意を向けます。

もう一つ、こういった知識が役に立つ場面がありますよね。
はい、何かが上手くいってない時=ピンチの時ですね。

ある程度、自分の目線の特徴やその使い方というものを理解しておくことによって、それを有効に使ったり、またその使い方で損をしてしまうことのないように、気をつける事はできると思います。

最後にもう一つ、
(この「もう一つ」というのも、一つの演技ツールです…)
ピンチに陥った時のための具体的なツールを提案させて下さい。

目が泳ぐという表現がありますが、結局
正しい目線って、どこを向いていれば良いのでしょうかね??

どうしたら良いか分からなくなり「目が泳いでいるかも?」と自覚した時、伏目がちになってしまうよりは、どこか少し遠くの一点に目線を集中させるのは、どうでしょうか?
そうすることで、気持ちも落ち着いてくると思います。

そして、少し余裕が出てきたら、相手の目線や身体表現にも目を向けて
「傾聴する」ことを心がけてみては如何でしょうか。

呼吸や、姿勢、発声にも影響を及ぼす、
『目線の輪』に関する詳しいお話は次号で!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?