連休の新幹線の話

制作さんは旅公演の手配もする。
※旅公演=地方公演=東京でやった公演を東京以外の都市で上演する公演のこと。
(でもKAATや彩芸を地方とは言わないしどこからを旅と定義するかは時と場合によるかもしれない。関西が本拠地の劇団なら東京公演は旅公演になるはずだしな。まあ上記は東京の舞台人の一般的な認識と思ってください)
(最近は地方初日→後から東京公演という順番の公演も増えてきたけど、東京の主催なら地方初日のほうを旅と言います)

そして、足を洗った私は今日ひさしぶりに新幹線に乗って、なんだか懐かしく思ったのと同時に、忘れられない新幹線の話を思い出していたのだ。

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舞台は目に見える舞台上以外にも、たくさんの関係者が携わって成り立っている。
舞台上の役者が10人だったら、劇場に毎日来るスタッフはまあ20-30人くらいの規模になるかな。(もっと大人しい舞台も、もっと大所帯の舞台もあるので公演による、としか言えませんが)
毎日来るスタッフ、という言い方をするのは、
場当たり&GP&初日という、舞台人の最も長い日(と私は勝手に思っている)あたりはもっと人が増えるし、
実は役者が稼働しない劇場仕込みの日のほうがなんなら、その日しか会えないスタッフさんたちがわんさか来て一番人数が多くなったりする。
まあ何が言いたいかというと、
旅公演は、
少なく見積もっても学校の1クラス分くらいにはなる人数のキャスト・スタッフを、
それこそ
高校出たばかりの新幹線初めて乗ります!みたいな19歳から、
主だった地方都市のホテルや飯屋を知り尽くして若干うるさい還暦超えまで、
全員を間違いなく新幹線や飛行機に乗せて、全員を間違いなく団体予約したホテルにチェックインさせ、
全員が間違いなくそれぞれの入り時間に、地方のまったく馴染みのない劇場の楽屋口から劇場入りして仕事を始められるように手配しないといけない。
仕込みだけに東京から来るスタッフもいるから予約は100人を超えるなんてザラにある。
そしてそのうち数名から時間差で「ホテルにチェックインしようとしたら名前がない」とか「新幹線に乗り遅れた」とか電話がかかってくる。
ちなみに私だって新幹線の中で電話を受けていたりする。
ホテルから深夜に「今日チェックインのはずの●●様がまだお見えでないですが」なんて言われて、本人に確認したら「すみません東京の仕事が長引いちゃったんで明日朝イチの新幹線で向かいます!」なんて悪びれずに言われる始末。
ああ、これがまかり通る(いや通ってたまるか。ですが。管理してる側としては)のは、この日が前乗りだったからですね。
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前乗りとは、
劇場での仕事は●月2日からだけど、当日の朝9時とかに劇場で仕事を始めなくてはいけないから2日の朝東京を出発したら間に合わないYO!っていう時に●月1日のうちに現地入りしておくことです。
1日が移動だけだった場合、「移動日」と呼びます。
が、
1日が東京の千穐楽、2日から地方の劇場入り、なんて過密スケジュールだと、
劇場ばらし(撤収作業)をしてから最終の新幹線に飛び乗る、なんてスリリングな前乗りもあります。

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そして、とある連休の新幹線の話。
飛行機よりも新幹線で行くのが一般的、というくらいの距離の地方都市で、その時は朗読劇でした。
キャストさんは前乗りで、(さきほどの例で言うなら)1日移動日、2日は午前中に舞台稽古したら午後には本番というスケジュール。
キャストの入り時間というのは、仕込みの進捗も見て前日くらいに決まることが多く、
その日も前日の夕方頃に事務所さんにメールでお知らせする予定でした。
が、
キャストで1名だけ、1日に東京で仕事があるから2日当日入りにする、という方がいました。
入り時間は前日にお伝えしますね、という他の方と同じ案内をしていました。
そりゃあ劇場が開く9時とかに間に合うように東京を発ってもらえれば絶対にスケジュールに響くことはありませんが、
東京発がめちゃくちゃ早くなってしまう。
蓋を開けたら11時入りで大丈夫でした、なんてことになったら早起きさせた上に現地で待たせて申し訳ない!となってしまう。
そのため、前日の夕方、入り時間が確定した段階でお知らせするという予定でした。
今思えば、一度1日の昼にマネージャーさんから催促の電話があったときに「9時に間に合うように来てください」って言っておけばよかったです。

運悪く連休の朝イチ、なんと新幹線が満席で、そのキャストは急遽飛行機で現地入りすることに変更。
先に渡していた新幹線の切符(時間変更をしてもらうつもりでした)は紙クズとなり、飛行機代と空港からのタクシー代の請求書が届きます。
予算を管理する制作さんとしては大失態。
運よく、入り時間には間に合ったのでつつがなくスケジュールは進行しましたが、
「新幹線の席は無くなる恐れがある」
ということを肝に銘じた出来事でした。
もちろん、100人単位の新幹線の席やホテルは、相当前もって予約しないと!という危機意識があったのですが
まさか1人の新幹線が取れないなんて…ショッキングでした。
そういえば、
ホテルで言うと、
「学会」か「某J事務所のコンサート」と日程がかぶっているときは
数か月前から予約しても厳しい時がありましたね。
とにかく制作さんは
何事も早め早めに動けるに越したことはないのです。

今日はこのへんで。

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