香盤表(こうばんひょう)の話

いま、映像的な業界の片隅のすみっこにいて
「香盤です」って上がってくる資料が
もちろんそれは舞台業界でも同じように使われているわけだけど
なんだかちょっぴりしっくりこないでいた。

「タイムテーブル」とか「タイムスケジュール」って言われたほうが
その資料にはふさわしい気がしていて
今の業界ではかたくなに「香盤」と呼ばれるなあ、と思っていた。

なんでしっくりこないんだろう?って思った時に
そういえば私たち舞台人にとっての「香盤」は
タイムテーブルとかも含めるけどそれより何より、
「1幕2幕の香盤表」みたいなものが最もしっくりくるからだと気づいた。

香盤、はもともとの語源は
楽屋を入ったところにある(今は)着到板と呼ばれる自分の名前の札が
いい香りのする木の板からできていたことに由来して
その人の出番なんかが一目でわかるような資料を
今日の香盤表(香盤)と呼ぶようになったと聞いたような気がする
(個人のメモ書きみたいなものなので、誤りがあったらすみません)。
ちなみに着到版というのは、片面に黒/片面に赤で自分の名前が書いてある小さな板で、カンパニー全員分がずらっと楽屋口付近に並んでいて
自分が出勤しましたよ、いま館内にいますよ、の目印に、楽屋入りの時にひっくり返して、楽屋を出る時にまたひっくり返す。
大きな劇場だと、劇場入りしてから1日に1回も顔を合わさないような動線で過ごすセクションの人もいるくらいなので、
制作さんは「あの人入り時間だけど遅刻してないかな?」と着到版をたびたび見に行ったりして、一喜一憂する。

で、香盤表というのは、
映像ならその日の撮影の流れが時間軸に沿って書かれて一目でわかる、いわゆるタイムテーブル(だと断固として言い続ける)のようなものを(少なくとも今の私のいる団体では)そう呼んでいる。
舞台業界でも、そういったものを香盤表と呼んでも意味は通る。
でも、舞台人にとって最も馴染みのある「香盤表」は

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