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“「美味しい」が一番伝わる魚の届け方を考えたい” わく / 東京海洋大学3年 / 東京チーム

THE BLUE CAMPに参加する学生たちを、それぞれがエントリー時に提出した自己紹介およびエッセイとともに紹介します。東京チームは、高校生2名、調理学校生1名、大学生5名(うち1名水産研究)の計8名です。

“「美味しい」が一番伝わる魚の届け方を考えたい”

今回紹介するのは 安永和矩 (わくちゃん) です。

彼は大学では養殖を勉強、アルバイトは魚屋で、課外活動では水産の情報を発信する水産マルチプレイヤー。水産を学ぶ中でも現場の想いをいかに一般の消費者に届けることができるかを課題感に持ち、今回参加してくれました。わくちゃんは話していてふと心安らいでしまうほどのゆるさを持っていますが、心の内には水産の課題をクリティカルに向き合う熱い思いも持ち合わせています。

応募時 自己紹介

 私は、次世代の国民も多種多様な水産物を正しく購入し、楽しむための魚食普及に関心をもっています。両親の実家である愛媛の水産物を食べ、その美味しさに触れた私は、幼い頃から「水産物による美味しい幸せを提供したい」という夢をもっていました。これを実現するべく、中学・高校時には、天然資源の枯渇などの課題や持続的な漁業の在り方、MSC認証や、陸上養殖等の海洋環境に配慮した生産方法などにアンテナを張り、調べ学習を行っていました。

 東京海洋大学に入学後、学生団体である水産人カレッジに所属し、現場での学びとして、三重や静岡の養殖施設に足を運び、生産者の未来の漁業への思いというものに触れてきました。またアルバイトでは、サカナバッカという魚屋で勤務し、一般の方への魚の販売を行っています。しかしそこでは、消費者の購買基準は、味と値段に影響されており、自分が現場で聞いた生産者のこだわりが消費者には正しく伝わっていない現状を知りました。このように、生産者の未来の漁業に対する思いや取り組みは、その先の流通、そして消費者に共感させない限り、持続的な漁業にならないと感じました。

 このような状況から、私は現場の思いを一般の消費者に伝えるため、インスタグラムでの情報発信を開始しました。実際に足を運んだ現場の漁師の生の声や、普段食卓に並ぶ魚がどのように漁獲されるかなど、学生の視点から、隔絶されている生産者と消費者の距離を縮めるべく活動を行っています。これらの活動を通して、魚食普及に貢献していきたいと考えます。

応募時 エッセイ 
「海と食の未来について思うこと、取り組みたいこと」

 私が、海と食の未来のために取り組みたいことは、消費者啓蒙です。多様で、豊富な日本の水産物を未来に残していくためには、生産者の意識だけでなく、消費者の意識を変える必要があると考えます。私がこのような考えにいたったのは、アルバイトしているサカナバッカでの経験からです。私の働く魚屋は、東京にはあまり流通していない少量多品種の魚を取り扱っており、食べて美味しいだけではなく、魚を知り、魚を体験できる店作りを目指しています。このコンセプトのお店ですが、実際のところお客さんになじみのない魚は、あまり売れていません。

 例えば、小田原の漁師の間ではこの春先によく食べられている沖にいるボラを置いていたことがあるのですが、東京では河口付近の臭いボラをイメージする方が多く、最初はまったく売れませんでした。しかし、この状況を打破すべく、沖のボラに関するポップの作成や、お客様への口頭での説明をすることで、買ってくださるお客様が多くいらっしゃいました。購入されるときには、お客様の中には、興味と同時に本当に美味しいのかという不安をもつ人もいましたが、後日話を伺うと驚いたような表情で、「美味しかったよ、今日は入荷がないのかしら」と声をかけてもらいました。このようにこれまでなじみのない魚であっても、直接話す中で、商品のストーリーや生産者の思いを付与することによって、消費者の購買を促すことができることが実体験から分かってきました。水産業の知見をもつ人材が、最終的に消費者に直接製品を販売することで、現在の水産物流通の中でも、生産者と消費者をつなぐことができるのではないか考えます。

 さて私は、海洋生物資源学科に所属し、養殖の生産手法や、漁法、餌の飼料の開発など、生産者視点の学びが多くなっています。将来は、この生産者側の技術や生物的な技術を持った上で、消費者と直接接し、生産者と消費者をつなぎ、消費者意識を変えて、生産者に還元する仕事がしたいと考えています。

 このブルーキャンプを通して、飲食店や消費者側からの視点で水産業や、水産物流通について捉える視点をもつことで、水産物流通を両面から理解したいと考えています。また、これまで水産業を専攻していない仲間と共同で作り上げていく中で、東京海洋大学にいると気付けない世間の感覚と自分の感覚のズレを擦り合わせながら、最終的にお客さんとして来て下さる方々への伝え方を模索していきたいと考えています。学生の今この視点をもつことができれば、今後さらに深く水産業に関わっていく中で、川上から川下まで俯瞰して捉えることができると思います。レストランという直接お客様に働きかけることのできる環境で、海と食の未来について一緒に考える場を作りたいと思います。

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