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ひみつきち

あの夕暮れ時、あの小さな森の一角に。
確かにあった、ひみつきち。
僕らはそこで、不必要な必要を学んだっけ。

持ってきたゲームボーイでポケモンを進めたり。
大ゲンカした後に、そっと仲直りを交わしたり。
道端に落ちていたエッチな本を回し読みしたり。

よく遊び、よく学び、僕らは大人になった。
誰に言われることなく、見られることなく。

あれから二十余年。
鬱蒼とした木々に囲まれたあのひみつきちは、もうない。
あるのは縦横に整然された道と、林立する一軒家だらけ。

誰かが言う。これで子どもの安全が担保されると。
僕も肯いて。けれども胸の底でそっとぼやく。
限りない透明って、なんて窮屈なんだろうって。

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