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物語の断片

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2022年6月の記事一覧

hello good bye

 それはまるで、一粒の角砂糖のような建物だった。
 四方を囲む真っ白な外壁は、外気による風化も一切見られず、この期に及んで尚も汚れなき純白を保ち続けていた。
 綺麗さを通り越してある種の狂気すら帯びた、この四角い繭。

「ねえ管理人さん、今空いてるんでしょ? じゃあ、使ってもいいよね?」

 平たくも静かな熱を保ち続けた口調で告げたあの子が、手持ちの道具を携えてアレに籠もり始めて、一体幾日経ったの

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