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いのちの星屑

施設の子どもたちは、中学卒業後、ほとんど高校に進学せず、園長の紹介で鳶職や工員として就職する子が多かった。大抵仕事は長続きせず、そのまま行方不明になるケースがほとんど。時折、施設出身の先輩たちが施設近くに出没しては、施設の後輩連中を呼び出し、どこかで悪さをしでかし補導されることもしょっちゅうだった。
 その一方で、高等学校に進学する子も少なからずいた。その子たちは、みな物静かで、大人びており、近寄りがたい存在だった。しかもみな一様に優しかった。
 小学生、中学生のもめごとは、よっぽどのことがない限り、施設スタッフが口をはさむことはない。おそらく自分たちで解決しろ! ってことなのだろう。年長の子が年下の子を虐めているところを施設のスタッフが目撃しても、無茶するな! 適当なところでやめとけよ! といちいち言葉を発することなく、目で合図を送るだけ。積極的に止めさせることはなかった。
つづく

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