Nervous Fairy-16"juSt obEdieNT"


←←←←←←←←←←

 それから俺の部屋で作戦会議に付き合わされて今に至る。目の前の丸テーブルに工程表とは行かないまでも行きたい場所リストにいくつか既に上がっていた。
「ちょっと待って明日なんなんだよマジで。買い出しにアクセショップに手芸屋さんに。これ明日提案してどうなるんだ」
「そんなこと言ったって、行くことはもう決まったんだからしょうがないじゃない」
「覆そうと思ったら覆せるぜ」
「そんなことしない。わかった?」
 さっきまでとは打って変わって、出会った時とそっくりに強気なんですが新刻さん。
「なんかやけに楽しそうですね新刻さん」
「あれ?名前呼びにしたんじゃなかった?」
「慣れねーだけだよ、想さん」
「さんいらない。それはそれで距離感感じるもん」
 もん。もんが出ました。
「そんな親密じゃないし」
「ハグしたのに?」
「でも恋愛ってわけじゃないだろ」
「それはないでーす」
 あっさり否定。そこはまあこっちも納得だけど。
「でも、俺は想のこと好きだけどな。人としてっていうか」
「こっちもそうじゃなきゃハグし返したりしないよ」
「……なぁ」
「うん?」
「明日の計画もいいんだけどさ」
「なに?」
「これ」
 そう言って、遊びの計画を練っていた丸テーブルの席から立ち上がると、
「あ、ねぇ」
 向こうから先に声がかかった。
「なに?」
「ココア枯れたから、コーヒーもらってもいい?」
「うんいいよ。お好きにどぞー」
「はあーい」
 と、立ち上がり机横のドリッパーから自分のマグカップに注ぐ想。
「あ、おいしい。いいねこれ。ブレンド?」
「うん。ちなみに俺製な」
「え!?栽培したの!?」
「ちゃうわ!んなわけあるか。色んな豆混ぜて研究してみた結果よ。レシピ作った」
「マジか……すごいね結城」
「いや、好きなだけ。で、だ」
 とっくに手にしていた書類を見返しながら話をしつつ、基本問題ないことを確認して想に渡す。
「うん?」
 とマグカップに注いだコーヒーを飲みながら受け取ってくれた。
「色んな問題が並行してる中で申し訳ないけど、ちょっと考えてることがあってさ。掻い摘んでいうと、一緒にブランド作りませんか?って話し。服飾とアクセなら相性悪くないでしょ?」
「……ほう」
「返事はすぐじゃなくていいから。ちょっと可能性として考えてみてくれると」
「……いいじゃん」
「速読か」
「いや、単純に、結城とそゆことするってのに、抵抗がないかも。もう少し考えるけど、第一印象はOK」
「了解。んじゃ検討よろしく。以上」
「はーい」
「そろそろ寝るだろ?」
「そうーだね。コーヒー持って戻ろうかな」
「明日の計画、増やすなよ」
「……それは約束できない」
「どんだけ楽しみなんだよ!」
「あはははは。まあ、これ以上はいいかなって感じだけど」
「だろ?」
 ボケた感じの想の発言に思い切り突っ込んだ自分がちょっとだけ恥ずかしい。
「じゃ、また明日。なんかあったらいつでもいらっしゃいまし」
「うん……あの」
 そういうと、マグカップ片手に、想は何かしおらしい表情をした。
「ん?」
「……ここで寝ちゃダメ?」

この記事が参加している募集

基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw