Nervous Fairy-6 "encounteR rEpeat"

 初めて新刻と話したのは、入学式を終えて、部活説明会を前にして、一度ホームルームが開かれる直前だった。五十音じゃ全然離れているけど、うちの高校はそう言う席順にしなかったから、本当に偶然、隣の席になった。
 そしていまだにそれは続いてる。
 先に話しかけたのは俺だった。
 隣の席の生徒とくらい性別とか置いておいて話せるようになっていた方がと思っていたのだ。
「…初めまして。俺、篠倉結城。とりあえずしばらく隣の席でよろしく」
「……」
 無反応で正直凹んだ。
「……無視はきついなぁ…」
 つい口に出てしまった独り言。今思うと、自分が話したくても向こうがそうだとは限らない。そんなことすぐ分かるはずなのに当て付けみたいになってしまう。もちろんそんなつもりはない。できる限りチャラくしているつもりなのだ。これでも内心ばくばくだ。本来なら、一人部屋に篭って作業してる方が居心地いいのだから。
「……え?私に話しかけてる?」
「…お。うん。そう」
 相当間抜けな顔をしていたはずだ。でもその時はまだ名前も知らない彼女の胸下ぐらいまである長いロングヘアに隠されていたくりくりの目がこちらを捉え、漫画みたいにキョトン、とした。
 もしかしたら、その時はこの時だったかもしれない。
「……無駄だよ。あたしは友達作る気は無いから」
「別にいいよ。でも、とりあえず隣だし、知り合いくらいにはなっとかない?」
 まるでナンパ文句だ、と今では思う。
 実は自分の中学から進学してきたやつはほとんどいない上、全員が別クラスに配属されてしまっていて、男子とはまあもちろん軽く話したけど、俺の引きが歩くて席は遠いし、席の周囲に知り合いがいなかったのだ。
「……まあ、隣の席ならそうかもね。いつまで続くかわかんないけど。あたしは新刻想。一応…よろしく」
 それまで驚きからキョトンとしていたくせに、完全に拒絶しているような冷たい目に切り替わった。
「ありがと。新刻さん、でいいかな」
「…別になんでも」
「想(おもい)って名前、変わってるな。なんて書くの?」
「想像の”想”」
「……へぇ。なんかスゲーいい名前」
「……そう」
 背筋をしゃんと伸ばして、切りそろえられて整えられた前髪。胸のやや下までの少し明るい色のロングヘア。横顔は凛としていて、目が栗みたいにくりっとしている。まつげ長いー。何もない机の上に置いた手に所々細かい傷は見えたけど、すらっとしていて白く伸びている。膝下まで伸ばした制服のスカートから伸びる足も同様。変態的だけど、一瞬でそんなことを認知するくらいには印象的だったのが新刻想だった。
 なんか人形か妖精みたいだな、と思った。
「新刻さんって、部活入るの?」
「入らない。強制加入じゃないし、自分でやりたいことあるから」
「そうなんだ。なら一緒だな」
 これはナンパ文句ではなかった。自分もアクセサリーを趣味で作っている。売ることもたまにあるから帰ってやりたいことが山積みだった。
「ふーん」
 興味なさそうな、どうでも良さげな返答。ちょっと距離が開いた気はしたけど、別に詰めてもいない距離だ。それにこっちに興味もなさげ。まあ、それもこの時は当たり前。
「だからこの後の部活説明会も本当に興味ない」
「それ、同感です」
「……だよね」
 距離感が、少しだけこっちに寄せてきた印象があった。実は他人が嫌いではないのかもしれない。嫌いなフリか?ということで俺はその言葉に便乗する。
「あれって、強制的に参加しなきゃいけないってわけじゃないんだよな?」
「帰宅部がある以上そうでしょう?」
「……なあ、新刻さん」
「なんですか、篠倉さん」
 意外なことに、名前は覚えてもらえたらしい。
「……ホームルーム終わったら、バックれない?」
「……は?」
 これが、俺篠倉結城と、彼女、新刻想の最初だ。

基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw