AOLV-Series-Serial001

 私は、まだ年端のいかない少女と称されても問題なく、そして特にプライドも気づかない精神状態で、年齢的にはその表現に抗えない、いわゆる少女、である。
 そうでない頃ー昔の記憶もあるけど、すでに少女である時間の記憶がそれらを食いつぶさんばかりに膨れ上がってきていて、その昔についてはとても印象的な出来事しか記憶にない。
 私は、後天的感染者だ。
 この病とも言い切れない奇病にかかってから、その存在を知ることになった永久少女たちの長、アリスはどうやら望む人々の前にはなかなか現れてくれないらしい。私も詳しく知っているわけではないのだけれど、死神を待ちながらもう数百年生きているという噂もあれば、1年おきにアリスは入れ替わっていて、それを悟られないようになかなか本人として人前に姿を現さないのだ、とか色々な説があるのだ。とにかく、気になって正体を暴こうと数少ない記録を調べれば調べるほど、話を聞けば聞くほど、考察すればするほど、彼女はその実態を失っていく気がしてならない。 
 永久少女ー絶対少女症候群罹患者を指して言うーにとっては、圧倒的に絶対的で完璧的な存在であるのに、それなのに何もわからない。悟りなんて開く前に、経典すら読む前に全て察してしまえる新興宗教の教祖なんかより1万倍マシだけど、不思議だし怪しいし、疑わざるを得ないのだけれど、いかんせん、私はこのアリスと呼ばれる少女に命を救ってもらったことがある。
 命の扱いは、粗末だったんだ。それは私が悪い。明らかに私が悪くて、でもそれでも生きている世界が憎くて、もし世界が何か機械仕掛けになっているなら、私の周りだけ全く整備されてなくて、プログラムならバグっていて、ベルトコンベアーなら何か混入していて、歯車なら噛み合っていそうでいないような、そんな感覚を、面倒なことに私はずっと感じている。めんどうだ。これは大いにめんどうだった。何しろ生きにくい。癖に、自分では解決法がわからなかった。けれど、どう相談していいのかもわからなくて、誰にも何も言えずに、そんなことを抱えて夜をなきんがら過ごしていたら、いつの間にか近所の高いビルの屋上に立っていて、目の前には道がなかった。
 そこで一瞬強い風が吹かなければ、私はアリスに会えなかったろうし、目の前に道がないことすら認識できなかったろう。その一瞬でハッとし、ハッとした私の視界のど真ん中に、木偶人形とウサギのぬいぐるみと一緒に浮いている少女がいたのだ。私はその光景に、自分がしようとしていたことを文字通りすっかり忘却してしまい、すぐには思い出そうともせず、視界を支配する勢いで印象的なアリスに驚愕して、腰を落とした。
おそらく、地上15メートルくらい。
そこに明らかに彼女は浮いていて、耳朶は風によってほとんどの音はかき消されて全く聞こえないのに、その一言だけが聞こえた。
「心が先に行くのが、蠱惑い?」
その一言で、私は一命を取り留めていた。                 了

基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw